元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

健康診断を受けない社員にどう会社は対応すべきか?

2011-08-01 04:39:31 | 社会保険労務士
就業規則~<健康診断編>~について

誰もが一目を置く、ある部門でのエキスパートがいました。酒が好きというよりは、しゃれた店で飲むのが好きといった人でした。肝臓等の内臓が弱っていたわけではなかったと思いますが、健康診断になると、その日は休まれる方でした。私が勤務し始めの頃でしたから、もう40年近くなる昔の話です。今では、健康診断となると、人事課も最重要項目に位置付けていますし、従業員の意識も向上して来ていますので、昔ほどではなくなってきています。

 
 しかし、そういう輩がやはりいないとも限りません。単に面倒くさいからとか、自分は健康に自信があるからとの理由があるかもしれませんが・・・。そういう場合には、事業者はどう対応すれば良いのでしょうか。

 事業者にも労働者にも、健康診断を受けさせる、あるいは受ける義務を労働安全衛生法(以下、「安衛法」と略す。また同規則を「安衛則」と略します。)ではうたっていますが、もし実施しなかった場合に、罰則(50万円以下の罰金)の適用を受けるのは事業者のみです。しかも、労働契約法5条では、使用者に安全配慮義務を課しています。労働させる場合は、「その生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮」をしなければなりません。そのため職員に故意または重大な過失があることが明らかな場合を除き、使用者は損害賠償の責任をのがれることはできません。(民法415条)、健康診断を受診させないことは、これにあたると考えられます。事業者のみに罰則、安全配慮を求める不公平な法律だとの声も聞こえてきそうですが、労働者を使用しながら、事業を行っている事業者には、それなりの社会的責任があると考えねばなりません。

 さて、従業員が何らかの理由により、受診しない場合は、どうするか。就業規則に受診しない場合は、懲戒の対象になることを明記する方法があります、これが即、そのまま懲戒処分になるというわけではなくて、会社としてそれなりの姿勢を見せることが必要です。いわば、健康診断を受けないことが、「軽い」ものではなく、もし受けていれば、あれだけ長期の休みにならなかったのに、とか、あるいは、不幸にして死亡してしまった場合は、会社に多大な迷惑をかけてしまうということを、就業規則で認識させ、健康診断を重要視していることを示すべきです。従業員は、自分の体の問題だけではなく、労働契約を結んで働いている以上は、ちゃんとした労働をしなければならないのです。

 また、会社の健康診断を規定した就業規則を見ますと、前お話ししたかもしれませんが、一年に一回の定期検診(安衛法66条1項、安衛則44条1項)しか規定していないものがあります。一般の昼間に普通に働いている労働者のみの就業規則には、この規定でOKですが、看護婦さんとか放射線技師といるようなところでは、問題です。深夜勤務をしたり、X線関係の機械を常に扱っています。
 4週間に1回勤務するような深夜勤務の場合は、定期の健康診断は6月に1回必要(安衛則45条1項)ですし、放射線技師の場合は、一般の健康診断とは、別途の項目が(安衛法66条)必要になってきます。
 これらの従業員がいる場合は、就業規則も1年に一回の健康診断だけでは、不十分です。

 これらの、1、健康診断を受けない従業員、2、6か月に一回の深夜業務従事者等への「特定業務従事者の健康診断」とX線関係等の「有害な業務従事者」へ「特殊健康診断」 の対応を規定したモデル条文を見つけましたので、ここに紹介します。
 前に引用させていただいた、御社の「就業規則」ここが問題です!(北村省吾、桑原和弘共著、実務教育出版)からの「この規定なら安心」というモデル条文です。

 (北村・桑原先生何回も引用させていただきごめんなさい。北村先生には、CD講座でお世話になり、おかげさまで社労士受験に合格することができました。ありがとうございました。合格してからも実務についても、いろんなところの著書でお目にかかっております。まことにありがとうございます。)

 なお、モデル条文の2項の予防接種については、私は、病院に勤務していた折、B型肝炎の抗体検査をしたのち、同肝炎の予防接種をした経験を持っております。


第○条<健康診断>
1 会社は、社員に対し入社の際及び毎年1回(深夜労働その他労働安全衛生規則第13条第1項第2号で定める業務に従事する者については、6か月に1回)、定期に健康診断を行う。
2 前項の健康診断の他、法令で定められた有害業務に従事する社員に対しては、特別の項目についての健康診断を行う。また、必要のある場合には、社内全員または一部に対して臨時に健康診断を行い、あるいは予防接種を行うことがある。
3 社員は、正当な理由なく前各各項の健康診断及び前項の予防接種を拒むことはできない。
4 会社が行う健康診断を、特段の理由なく受診しない社員に対しては懲戒処分の対象とする。

 

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