元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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「仕事と家庭の両立支援ガイドブック」(宮崎県労働政策課作成)の紹介<妊娠中の解雇は原則無効>

2014-04-11 18:37:52 | 社会保険労務士
 解雇が有効とするためには、解雇と妊娠・出産等との間に因果関係がないことを証明することが必要!!

 はたらくみなさんへ「仕事と家庭の両立支援ガイドブック」(両立を支援するための法律のあらまし)と書いた、宮崎県労働政策課発行の冊子が手元にあります。これは、法律のあらましとして、妊娠中の勤務、産前・産後の休暇、出産、育児休業、復職後の勤務、介護休業、要介護状態の労働者の勤務時間等に分けて、労働者が取り得る制度の条文等が最初のページに書いてあり、次のページからは、Q & A形式で述べてあり、全体で16ページですので、さっと概要を把握するには、ちょうどよい分量です。というのは、この仕事と家庭の両立支援に関する法律は、主には、男女雇用機会均等法ですが、その他、労働基準法、健康保険法、育児介護休業法などの法律の規定があるから、そのちょっとした全体の概要をつかむのには、適当な冊子だと思われます。興味のある方は、県の機関等のパンフレットのコーナー等においてありますので、見て見られるといいと思います。

 その中で、気になる条文がありますので、紹介しておきます。

 男女雇用機会均等法
 第9条
 3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法の産前・産後の休暇を請求し休業したこと、その他の妊娠・出産に関する事由(厚生労働省令を定めているもの)を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない。
 4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
 
 ここで、注目したいのは、4項の「妊娠中と出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする」と言い切っているところです。ただし、別の規定ですが「産前・産後休暇期間とこれに続く30日間は、いかなる理由の解雇についても絶対的に禁止」されているところですが、これとは違い、続く文章では、但し書きが次に続いていまして「事業主が・・・を証明したときは、この限りではない」として、ちょっとはゆるくはなっていますが、「無効にする」と断定している点は、法律としては、非常に厳しい表現であると考えます。

 では、無効にならないのは、事業主が、妊娠、出産、産前産後の休業、その他労働基準法の母性保護措置や男女機会均等法の母性健康管理措置を受けたこと・受けようとしたこと、妊娠・出産に起因する能率低下や労働不能があったこと等(これは3項に書いてある不利益な取り扱いの事由です。)を理由とする解雇ではないことを証明したときのみについて、解雇が認められるとしています。

 繰り返しますが、まずは、妊娠中と出産後1年を経たない解雇は無効とした上で、事業主が前項の3項に該当しないことを証明したときだけに、初めて無効ではなく、解雇が有効になるとしている点です。

 事業主については、非常に厳しい規定になっています。逆にいえば、今まで、妊娠・出産に関して、安易に解雇という措置が取られていたので、それはなりませんよという、裏返しの規定なのかもしれません。

 これで、上の期間の解雇をした場合は、ボールは事業主にあるわけで、3項の妊娠・出産に関する理由でないことを証明しなければなりません。
 特に、能率低下や労働不能を理由とする場合でも、それが妊娠・出産に起因するものであったときはアウトになるわけです。解雇は「客観的・合理的理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は、権利濫用として無効」(労働契約法16条)の条文があることから言って、くだけた言い方をすれば、その理由が、妊娠・出産等に関与しているか否かについて、3項に該当するのが、一般常識的に認められるよというのであれば、事業主としては、3項に規定する解雇ではないと証明できないすることが難しいわけで、その場合は解雇は無効となりますので、注意すべき規定です。

 有期雇用契約についても、この規定は適用されるますが、はっきり、3項に規定する解雇でない、雇止めであることを事業主が証明できるのであれば、解雇は認められます。しかし、有期雇用契約が何度か反復してなされ、雇止めが解雇と同一視出来ると認められる状態になっていた場合などは、契約更新が認められますので、これとの絡みがあって、事業主は、さらなる慎重な対応が求められます。

(平成24年8月から、判例にあった「雇止法理」として、明確に労働契約法9条に規定された。さらに、通算5年を超えて契約更新した労働者は、無期契約の転換規定が同18条に25年4月から施行されている。これについては、別の機会に説明したいと思います。)、
 
 

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