辞職は申入れから民法の期間経過により労働契約の終了となるが、合意退職は双方の意思の合意により自由に契約終了
就業規則においては、”労働契約の解除”の場合は、労働者の一方的な意思表示に基づいて労働契約を解約する「辞職」と労働者と使用者双方の合意に基づいて労働契約を解約する「合意退職」は、明確に区別して規定するべきであると、石嵜信憲弁護士<就業規則の法律実務>は言う。
というのも、合意退職にあっては、労働契約の解約は全く自由であり、何日前に申し出でなければならないとかの法上の制限はない。つまり、退職希望日の何日前に出すかは就業規則により決めることもできるのである。
ところが、辞職にあっては、民法627条の規定があり、時間給や日給の場合は、労働契約終了日の2週間前の申し出が必要であるし、月給制の場合は、給与計算期間の前半に退職の申し入れをした場合は、その給与計算期間の終了日に労働契約が終了し、後半に申し入れをした場合は、次の計算期間の終了日に労働契約が終了することになっている。具体的には、給与計算期間が5月の始め(1日)から終わり(31日)までとした場合、月の前半(1日~15日)に申し入れを行った場合は、労働契約は5月31日をもって終了し、月の後半(16日~31日)に申し入れを行った場合は、翌月の末日(6月30日)を持っての契約終了となるわけです。
そのため、この辞職と合意契約は、性質が違うし、合意契約は法上の解約までの契約終了期間という制約もあるので、就業規則上は、はっきりと分けて記載すべきであるとしている。
そこで、「退職の場合は退職日の30日前に退職の意思表示をしなければならない」<例1>のように、合意退職と辞職ともとれる、両者の区別がない規定が就業規則にあった場合は、どうなるのでしょうか。合意退職の場合は、合理的な内容でない限り、就業規則に定め周知すれば、それが労働契約の内容になります(労働契約法7条)ので、労働契約の終了についても、就業規則の内容<例1では、30日前の退職の意思表示>がそのまま適用になります。ところが、辞職の場合は、民法の申入れ期間の制限がありますので、何ぼ就業規則に規定があっても、こちらの民法の規定が適用になります。(労働契約法13条)
合意退職と辞職の区別がないため、、<例1>のように記載した場合は、就業規則と民法のどちらの適用になるかは、労働法の立場からは、労働者に有利な方が適用になりますが、労働者に有利なほうとは、辞めようとしている労働者ですから、早く労働契約を終了してもらったほうがいいわけです。月の日数が30日や31日の場合を考えると、退職の申し入れが給与計算期間の前半になされた場合は、就業規則の30日前より、早目に労働契約を終了させることができる民法627条2項の方が適用になる。
⇒前記の5月の例で、考えると、前半に申し入れ(1日~15日)がなされた場合は、民法の方は、5月31日の労働契約の終了となりますので、申入れから契約終了までの期間は、16日~30日となる。
一方、後半になされた場合は、民法627条2項より契約終了期間が短い就業規則(30日前)が適用になります。
⇒同様に5月の例では、民法の方は、5月の後半(16日~31日)に申し入れをした場合は、翌月の6月30日の労働契約の終了となりますので、申入れから契約終了までの期間は30日以上となります。
また、就業規則の記載が「退職の意思表示は退職希望日の14日前にしなければならない。」<例2>とされている場合は、前半であろうと後半であろうと民法627条2項を適用(前述5月の例からは少なくとも16日は契約終了期間が必要)するよりは、就業規則の適用(14日前)の方がより早く労働契約を終了することになり、この場合は、就業規則の方が常に適用になることになります。
再度整理すると、例1の場合については、就業規則の内容が常に適用になるとは限らず、民法627条2項の規定が適用になることもある。
従って、誤解されないためには、石嵜弁護士が言うように、はっきり合意退職と辞職を分けるのがベストであろう。
参考;石嵜信憲著 就業規則の法律実務(第4版) 中央経済社発行
就業規則においては、”労働契約の解除”の場合は、労働者の一方的な意思表示に基づいて労働契約を解約する「辞職」と労働者と使用者双方の合意に基づいて労働契約を解約する「合意退職」は、明確に区別して規定するべきであると、石嵜信憲弁護士<就業規則の法律実務>は言う。
というのも、合意退職にあっては、労働契約の解約は全く自由であり、何日前に申し出でなければならないとかの法上の制限はない。つまり、退職希望日の何日前に出すかは就業規則により決めることもできるのである。
ところが、辞職にあっては、民法627条の規定があり、時間給や日給の場合は、労働契約終了日の2週間前の申し出が必要であるし、月給制の場合は、給与計算期間の前半に退職の申し入れをした場合は、その給与計算期間の終了日に労働契約が終了し、後半に申し入れをした場合は、次の計算期間の終了日に労働契約が終了することになっている。具体的には、給与計算期間が5月の始め(1日)から終わり(31日)までとした場合、月の前半(1日~15日)に申し入れを行った場合は、労働契約は5月31日をもって終了し、月の後半(16日~31日)に申し入れを行った場合は、翌月の末日(6月30日)を持っての契約終了となるわけです。
そのため、この辞職と合意契約は、性質が違うし、合意契約は法上の解約までの契約終了期間という制約もあるので、就業規則上は、はっきりと分けて記載すべきであるとしている。
そこで、「退職の場合は退職日の30日前に退職の意思表示をしなければならない」<例1>のように、合意退職と辞職ともとれる、両者の区別がない規定が就業規則にあった場合は、どうなるのでしょうか。合意退職の場合は、合理的な内容でない限り、就業規則に定め周知すれば、それが労働契約の内容になります(労働契約法7条)ので、労働契約の終了についても、就業規則の内容<例1では、30日前の退職の意思表示>がそのまま適用になります。ところが、辞職の場合は、民法の申入れ期間の制限がありますので、何ぼ就業規則に規定があっても、こちらの民法の規定が適用になります。(労働契約法13条)
合意退職と辞職の区別がないため、、<例1>のように記載した場合は、就業規則と民法のどちらの適用になるかは、労働法の立場からは、労働者に有利な方が適用になりますが、労働者に有利なほうとは、辞めようとしている労働者ですから、早く労働契約を終了してもらったほうがいいわけです。月の日数が30日や31日の場合を考えると、退職の申し入れが給与計算期間の前半になされた場合は、就業規則の30日前より、早目に労働契約を終了させることができる民法627条2項の方が適用になる。
⇒前記の5月の例で、考えると、前半に申し入れ(1日~15日)がなされた場合は、民法の方は、5月31日の労働契約の終了となりますので、申入れから契約終了までの期間は、16日~30日となる。
一方、後半になされた場合は、民法627条2項より契約終了期間が短い就業規則(30日前)が適用になります。
⇒同様に5月の例では、民法の方は、5月の後半(16日~31日)に申し入れをした場合は、翌月の6月30日の労働契約の終了となりますので、申入れから契約終了までの期間は30日以上となります。
また、就業規則の記載が「退職の意思表示は退職希望日の14日前にしなければならない。」<例2>とされている場合は、前半であろうと後半であろうと民法627条2項を適用(前述5月の例からは少なくとも16日は契約終了期間が必要)するよりは、就業規則の適用(14日前)の方がより早く労働契約を終了することになり、この場合は、就業規則の方が常に適用になることになります。
再度整理すると、例1の場合については、就業規則の内容が常に適用になるとは限らず、民法627条2項の規定が適用になることもある。
従って、誤解されないためには、石嵜弁護士が言うように、はっきり合意退職と辞職を分けるのがベストであろう。
参考;石嵜信憲著 就業規則の法律実務(第4版) 中央経済社発行
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