元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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ベテラン社員さんがグッとくる”終わった人”にさせない会社=50・60代を働かせる熟練社員指南書<著書紹介>

2016-12-02 10:30:48 | 社会保険労務士
 人の気持ち・法律・経営の3つの視点からの川越式定年・雇用継続手順書~私のような悲壮感をベテラン職員に味わせないためにお薦めします~<「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者坂本光司氏推薦の本の紹介>

 すばらしい本が出版されています。川越雄一社労士が第2作の著書『ベテラン社員さんがグッとくる”終わった人”にさせない会社=50~60代を働かせる熟練社員指南書』」である。第1作(*注1)が出た際、社労士として大先輩である著者に対し、この私のブログとはいえ頼まれていないのに勝手に書評をすることは、恐れ多く控えさせてもらうことを決め込んでいたのであるが、この第2作を見て、いても立ってもいられない気持ちになった。と言うのも、自分が通ってきた60歳定年前後のことが書かれていたからである。私の場合は、定年間近になって自分はもうこの職場には必要とされていないんだという悲哀を感じて、この本の書き出しが内館牧子の小説「終わった人」から始まっているが、将に私はこれに似た感慨を覚えたものである。

 この本は副題にあるように、ベテラン社員(50~60代)を「終わった人」(*注2)にさせないための会社の指南書である。中小企業は、新規社員を簡単に採用・育成できないし、60代従業員が主たる働き手であることも多く、ベテラン社員に会社を好きになってもらい、会社に長くいてもらいイキイキと働いてもらう方がベストの選択である。この本の指南書にあるようなベテラン職員(*3)の扱いを受けていたならば、別の言い方をすれば、著者みたいに、ずっと働きつづけてきた50代60代の気持ちが分かる上司・社長であったならば、私は退職せずに再雇用の道を選んで、定年まで働いたこの職場で再度イキイキともっとがんばって働いていたように思える。

 この本は、50代から長期的に60歳の定年を見据えて、いかに社員をイキイキ働かせ、そして再雇用にあってはイキイキと雇用を継続させ、退職にあっても、いかに会社が退職社員を気持ちよく送るかの「手順」(社内外へ円滑に事が進むべき手順書と呼ぶべきか)が書かれている。その段階の場面でいたるところに氏の培った「手法」が紹介してあるが、単なる小手先のテクニックではなく、その段階・段階での「人の気持ち」を察し、その気持ちに寄り添う形の川越式定年・雇用継続手順書である。そういう意味では、普段からの心からの心掛けがないと通用しないものであろう。

 氏いわく「川越式の手順を確実に実行し、ベテラン社員を大切に扱っていただければ、若い従業員も会社の安定感、信頼感を高め、職場の雰囲気はグンとよくなる。若い従業員にとっても明日は我が身なのである。ベテラン社員を大切に扱うことが良い会社づくり組織づくりにつながるのである。」会社は、ベテランと若手がうまくチームを組み、その循環によって会社がうまく運用されるものであろう。ついでながら、時代の流れには逆らえないものではあるが、今は熟練のわざや経験が若手の社員に継承されにくい年功序列制度の廃止のデミリットの方が大きいと氏は言う。

 本書の特徴は、この「人の気持ち」はもちろんのこと、「法律」「経営」の三位一体となった視点から、それぞれの段階での節目に行うべき手順だけではなく、注意すべき点をもアドバイス・解説している。もちろん、氏は社労士であり、それぞれの段階で必要な法律・制度など、例えば、育児介護休業法、老齢年金制度、高齢者雇用安定法・高齢雇用継続給付制度、労働契約法の解説、賃金決定を含む再雇用契約書の記載要領、就業規則の制定・見直し、また退職時に伴う有給休暇・代休・未払い賃金の扱いや健康保険・国民年金・雇用保険・住民税等の手続きにも触れている。実例に沿ってポイントを押さえて解説してあるので、中小企業者にとって必要な法律・制度等の把握や、また著者の長年の実務実績に基づくノウハウが公開されているので、実際の現場ですぐに役立つものとなっている。また、たとえ話や慣用句がいたるところで引用されて読みやすくなっている。普段から著者が社労士として分かりやすい説明を心がけていることがうかがえるところでもある。

 具体的な手順や注意点は、この本をぜひご覧いただきたいところであるが、例えば従業員の妻・家族への配慮や「褒めるより認める(年長者への褒め言葉は逆効果)」、社長自身が襟を正すなどが書かれており、私としてはそうなんだと納得し気づかされる部分が多い。端的に云うと、これは中小企業の社長、とりわけ2代目社長へのメッセージでもあるが、経営後継者の良き理解者としての妻(中小企業は同族会社が多いため)へ「先代からの配慮」も忘れていないところであり、こんなところまで気を使うのかという著者の心配りには驚かせられる。

 そういうことから、50代から60歳定年・継続雇用と長期的にかつ計画的に、ひとつ一つ川越式定年・継続雇用手順を確実に実施することは、めんどうと思えるような手続きを踏んでいくことであり、なんどこんなことなでと思われる方がいらしゃるかもしれないと著者自身も言っている。しかし、今はここまでしないと会社に欲しい人材から辞めていき、そうでない人が残ると著者は言う。

 それにしても、山本五十六の言葉として「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」の後に「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」という続きがあるとは、恥ずかしながらこの本で初めて知りました。

 最後に、この本の出版社等と合わせて、この本の流れがわかるので、目次を以下に掲げるのでご覧いただきたい。
  1.なぜベテラン職員が”終わった人”呼ばわりされやすいのか
  2.ベテラン職員を”終わった人”にさせない地ならし・雰囲気づくり
  3.50代を元気づけ輝かせて60代に備える
  4.定年後のことは定年前にきめておこう
  5.定年後の雇用関係をイキイキさせよう
  6.退職時は気持ちよく送り出そう
  事例.生涯現役!男女7人イキイキ物語

 著著名 ベテラン社員さんがグッとくる”終わった人”にさせない会社=50~60代を働かせる熟練社員指南書=
 著者  川越雄一
 発行所 労働調査会

アマゾンの本へベテラン社員さんがグッとくる”終わった人”にさせない会社=50~60代を働かせる熟練社員指南書=

労働調査会の本へベテラン社員さんがグッとくる”終わった人”にさせない会社=50~60代を働かせる熟練社員指南書=  


*注1 第1作;小さくてもパートさんがグッとくる会社~パートさんの心をつかむ採用指南書~
*注2 終わった人;終わった人にさせないことが重要。少子・高齢化が進む今日の社会的要請であり、企業経営の大きなカギを握るのは間違いないとする。(著者)
*注3 自分自身感じたが、ベテラン職員は、介護や親との別れもあり人生にとっての苦労、また感謝されることが少ない世代であって、今までずっと働いてきたのにというひがみに似た感情にもなる。この点、このベテラン職員に対する感謝を表す手法が示されているのがこの本ともいえる。著者の年代ならであろうか、こういったベテラン職員の気持ちをよく押さえている。

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