元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

学生バイトでも業務上ケガは労災保険⇒自己責任関係なし、初日労働から適用、強制保険<アルバイトの注意点>

2017-04-08 18:28:34 | 社会保険労務士
 公務災害保険加入の公務員と任意である5人未満の農林水産事業だけが強制加入にはならないだけ、後は強制加入です!!

 今年大学生の仲間入りをして、さっそく学費のためにと飲食店でアルバイトと始めたAさんですが、アルバイト初日から仕事中に厨房で相当大きなやけどをしてしまいました。市内で数店舗で営業している地元でも大きな飲食店でしたが、店長から次のようにいわれました。
 
(1) あなたのミスでやけどをしたんでしょう。自分のミスなら「自己責任」。自分の保険証で医者にかかるしかないわね。
(2) 医療費は正職員なら「労災」があるけど(そこから支払ってもらえるけど)、アルバイトでしかも今日から勤め始めたのに、労災は認められないわね。
(3) 「労災」なんてうちは入ってない。だから、労災から支払うなんて無理。
 いずれも、店長の言い分は間違い、あるいは知らないのか、またはウソをついています。

 (1)について 「仕事上」のけがにより病院にかかった場合は、その費用は労災保険という制度から支払われます。これは、「業務上」(=仕事上)のケガであることが必要ですが、業務以外のケガの場合で健康保険制度等により保険証を出して診てもらうのと裏腹の関係にあります。つまり、業務上の場合は、労災保険から医療費の全額が支払われ本人の負担は全くありませんし、業務に関係ない場合は、保険証を出してケガをした本人が一部の負担を病院で支払いますが後の部分は健康保険制度等から支払われることになります。逆に云えば、業務上のケガの場合は、通常の健康保険証等を出してはならないのです。
 さて、この労災保険ですが、本人の過失は全く問われません。もちろん、飲食店側の過失も問われません。確かに一般の損害賠償については、過失が問われるのが民法では常識にはなっていますが、この労災保険に限っては、過失を証明することは必要ないというか、業務上のケガであるかだけが問われるのです。業務に基ずくケガであれば、過失があったかどうかは関係ないので、だまされてはいけません。一般常識的に「自己責任だから」ということばに騙されてはいけません。

 (2)について 労災保険の対象となる労働者とは、使用者に雇われて賃金をもらう人を指します。労働し始めたのが、昨日・今日だからとか、アルバイトだからとかは関係なく、その対象となります。確かに、失業した際に給付される雇用保険とか、厚生年金とか健康保険とかは、一定の条件で働かないと保険に入らせてもらえないところはありますが、この労災保険にあっては、だれでもケガをする可能性があるものであり、アルバイトでも働き始めたときから労災保険の対象となる労働者になります。

 (3)について 労災保険制度には一部の例外を除いてほとんどの事業者が加入しなければなりません。例外は、国家公務員とか地方公務員の労災保険と同じような「公務災害」に入ってる方か、5人未満の規模の農林水産業の事業所(暫定任意適用事業といいますが、これだけが任意の加入です。)だけです。したがって、飲食店は当然労災保険に入っていなければなりません。多分店長さんがこの労災保険について知らない場合には、それは組織として事務部の取り扱いとなっており、加入していることを知らないのだと思います。もし本当に加入していない(本当は強制加入ですのでこの表現はただしくはないのですが・・)のであれば、後からでも、その飲食店は労災保険の保険料を支払わなければなりませんが、場合によればその病院代全額を請求されることもありえます。なお、この労災保険保険料は、全額事業所の負担です。労働者は負担なしです。

 総じて、業務を原因としたケガは、業務災害と呼ばれ、労災保険制度からその治療費は支払われます。アルバイトもこの労災保険の対象になります。ただし、本人が一銭も支払わなくても良いというのは、「労災指定病院」で診てもらった場合で、やむをえずそれ以外の病院で見てもらった場合は、労災であることを伝えたうえで、治療費はいったん本人が立て替えることになりますが、後日その費用は本人に支給されます。店長さんがこの手続きを知らないのであれば、事務を行っている部局に相談してください。もしも、どうしてもその事業所で対応してもらえないのであれば、自分で労働基準監督署で手続きを行うしかありませんが・・・。

 ⇒学生アルバイト上の注意<その1>
学生アルバイト上の注意<その3>


 参考 大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A 石田眞・浅倉むつ子・上西充子著 旬報社


 

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