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元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

消防団活動は労基法の「公の職務」に該当するのか=通達は「単に労務提供を主たる目的」は含めないとされているが・・・

2022-11-26 09:19:22 | 社会保険労務士
 労働時間内に消防団活動(市町村の非常勤地方公務員)を認めるのであれば就業規則に有給か無給かも含めて規定

 私は山間部で育ちましたが、そこでは消防団組織があり消防自動車も地区の中に一台完備されておりました。地区の若者たちはほとんどが消防団員として、所属していたようです。しかし、それは何十年前の昔の事、今では若者自体も少なく、消防団の運営もうまく回せなくなっていると聞きます。

 この消防団の位置づけは、本来の職業を持ちながら、市町村での非常勤の地方公務員として、「自らの地域は自ら守る」という精神に基づいて、火災や災害発生時には自宅や職場等から「出動」(本来なら火災等の現場への「出勤」ということばでしょうが、分かり安いように「出動」といいます。)するというものです。そこで働く団員は、ちゃんとした市町村からの任命手続きを取りながら、ある意味のボランティアで、しかもその位置づけがはっきりしない不安定な組織に属することも否めません。
 それを反映してか自営業の方は別として、会社勤めの方は、その非常時の場合に出勤したときの会社対応がちゃんとできているところがないところもあるようです。

 労働基準法ではどうとらえているのでしょうか。労働基準法第7条に公民権の保障と言うのがあります。この中で「公の職務」の執行に当たれば、使用者にその活動に必要な時間を労働時間の中で請求することができるとされています。

 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他の公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。ただし、権利の行使又は公の職務の執行に妨げのない限り、請求された時刻を変更することができる。

 この公の職務に該当するものは、法令に根拠を有するものに限られ指定されたものとなっています。例えば、衆議院議員に始まって労働委員会の委員とか公職選挙法の選挙立会人とかありますが、我々一般がよく聞く、あり得るものとしては、裁判員制度の裁判員が挙げられます。では、消防団員はこれに入らないのでしょうか。消防組織法で非常勤の消防団員が規定されているにも関わらず、<単に労務の提供を主たる目的とする職務は本条の「公の職務」には含まれない>とされ、消防団活動はこの「労務の提供を主たる目的とする職務」に当たるので「公の職務」には含まれないと行政通達に書かれています。

 このように、今の行政通達では、消防団員の非常時の出動は、労働時間中のこの必要な時間を使用者に請求したところで認めることにはなっていません。しかし、現状では、そのためだけではないでしょうが、市町村での消防団の運営が難しくなっておりますので、見直す時期にきているのではないかと思う。公の職務に消防団活動が該当しないというのは行政通達で解釈されたものであり、その判断基準は「単に労務の提供を主たる目的とする職務」となっており、なんで「主たる労務の提供」で判断するのか理由が、もう一つはっきりしません。特に地方での消防団組織の団員の活動は火事や津波等の際に必要不可欠なものです。それが「労務の主たる提供」ということだけで判断するのだったら腑に落ちません。非常時の主たる労務提供だからこそ、当然含まれていいものと考えるのは間違いでしょうか。

 さて、現在、労働基準法の「公民権の保障」に消防団が入らないとして、会社員においての消防団活動の取り扱いについて、述べます。就業規則では、始業・終業の時刻と休憩時間・休暇をちゃんと書き込むことが決められていますので、この消防災害等の活動時間については、「特別休暇」(名目はたとえば「消防災害活動」などか)として規定しない限りは、会社としては認めていないことになります。したがって、仕方なく、年次有給休暇で処理するところもあるようですね。ただし、特別休暇として認めても、無給扱いするところもあるようです。(会社で特別休暇があろうとも、無給になるのあれば、年次有給休暇処理する労働者も当然あり得ます。)

 要するに、会社としては、就業規則のあるところでは、消防団活動を認めるのであれば、ちゃんと有給か無給取り扱いかを含めて特別休暇として規定しなければならないということです。それがはっきりしていないあいまいな会社では、労働者側からでも良いのですが使用者と話し合って、どんな場合に消防団活動として認めるか、そして無給か有給かを決めるべきです。そこで、経営的に苦しいのであれば、年間〇時間までは有給とするなどの方法もあり得ると考えます。(というのも、この特別休暇は労働基準法上は全く触れられていない休暇と言うことになるので、任意にその範囲を決めることができるということです。)。そして、この話し合いの結果を就業規則に規定することを忘れないでください。  
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NHK朝ドラ「舞いあがれ」/「舞」は好きな事を見つけ幸せ・そうでない人もこの世の実体験が重要!!

2022-11-11 16:42:02 | 社会保険労務士

人生の好きなことを見つけるのは大学時代だが見つからない人生でも「体験」そのものが価値なので「自分の人生を肯定」すること

 舞は浪速大学の人力飛行機のサークル「なにわバードマン」に入部。先輩のパイロットの由良冬子が試験飛行の際に落ち骨折してしまい、その代役として1回生ながら、急遽皆の支援を受けてその本番の記録飛行で琵琶湖を10分間も飛んだ舞子。その感動が忘れられずに自分のやりたいことは、本物の「旅客機のパイロット」になることだと自覚する。五島のおばばが住むバラモン凧から始まった舞の空にかける夢は、人力飛行機のパイロットを経て、ジェット機のパイロットへと最終ステージを迎えることになる。
 
 舞は幼馴染の久留美、貴司にはクリスマスの夜の飲み会でパイロットへの夢を語ったが、会社で行き詰っていた貴司は「ホンマの自分を見つけたんやな」と羨望の眼差しで見つめた。そして、なにわバードマンの休部を申し出たところ、部員たちは今辞められたら困ると皆猛反対したが、その決意を聞くなり、うすうす感じていた冬子が一番に応援するといい、他の部員も「なにわバードマンから旅客機パイロットの誕生」と喜んで送り出した。
 
 さて、問題は両親への相談?(告白!)である。舞は、航空工学を学ぶという希望で大学に行かせてもらっており、その将来の目標が変更したことに後ろめたさを感じ、言い出せずにいたのである。久留美が仕事が続かない父親に言いたいことをいってしまったと自分の所へ泊りに来たことに端を発して、その夜、仕事の話をしている最中の両親に、ついに自分の思いを打ち明ける。と、ここまでで第6週の話は終わった。予告では、母のめぐみが反対する様子で、兄は「遅かったがやっと舞に反抗期か」と笑う場面が放送された。

 大学1年の頃、自分の進む道を決められた舞は本当に幸せだ。私は大学時代は公認会計士になりたいと思っていたが、本当に将来の進路を決めたかは疑問で、そのまま4年間を過ごしてしまった。親の勧める「地方公務員」に運良くなり、表向きは「地方に貢献する」といっていたが、自分が本当になりたがっていたものかは疑問である。退職後の第2の人生を含めて、自分が本当にやりたがっていたものを見つけたかは、これまた疑問である。こういうことは自分でもわからないもので、何か違和感を感じる限り、朝ドラで言うなら「舞のように、空飛んでこのために生まれてきたのと違うのかというくらい楽しかった」というような感動はないので、まだまだ自分を探し切れていないのかもしれない。結局、人生そんなもんではないかとも思い、あきらめの気持ちもある。なかなか社会に出てから、自分が何をやりたいかを考えるのも、実際は日常生活に振り回されて難しいものだ。
 
 できることなら、それができるのは大学時代であろう。しかし、それも実体験や経験が不足している大学時代に見つけるのも難しいように思う。しかし、それが見つかった人は、大学時代といわず、まだ若いあなたなら今からでも遅くない。やれるならやればよいように思う。大学時代にそれが見つかった舞は幸せといったのは、そこにある。
 
 自分の人生は、後半ではなく既に晩期であるが、今までの人生を振り返り、後悔するのではなく、今までの人生を肯定することにしたい。ひとつ一つの仕事に生きがいを感じて、一生懸命に、その瞬間・瞬間に生きてきたように思う。第1の人生も第2の人生もそれなりに充実した人生であった。自分がやりたい事を求めるのは、「チルチルミチルの青い鳥」の部分もあるように思う。自分の人生はこれでよかったと肯定的に考えたい。その一つひとつの事柄が自分の経験という「体験」そのものになっているのだ。あなたの「体験」は、あなたしか築いていけない貴重なものである。それがどんな人生であろうとも・・・。
 
 スピチュアルの世界では、この世に生きる意味は「体験する」ことにあるという。魂の故郷=あの世に帰ると、その「体験」ができないので、何度もこの世に生まれてくるのだという。当然体験することには、楽しいことだけではなく、辛い、悲しいこともある。<しかし、>せっかく生まれてきたのだから、できるだけその自分の人生では、好きなことができればいいと思うのも事実。周りの状況で、そう出来ない人生が大半であろうが、思い切りできることをやれれば最高であろう。

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「労働時間」とは使用者指揮命令だけでなく職務要件が必要?!<その裁判具体例>

2022-11-05 09:50:18 | 社会保険労務士
 労働時間の定義は法上なし<もともとはその定義は通達から>

 労働時間は一日8時間・一週間に40時間までとか、1時間労働当たりの賃金はいくら払うとかいう場合、この労働基準法でいう「労働時間」は、同じ労働基準法のなかでその定義があるのかというと「ない」のである。では、どこにあるのかというと、行政解釈にあって「労働者が使用者の指揮命令のもとにある時間」と定義している。通説もこれにならっている。裁判でも具体的にいろいろな事例が出てきたが、最高裁の三菱重工業長崎造船所事件判決は「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものかどうか」によって決まると言い、結局、どれも「使用者の指揮命令下」にあるかどうかが労働時間の判断となっている。

 しかしながら、極端な例であるが、水町勇一郎氏は「仕事とは関係なく趣味で行っている職場のバレーサークルで監督である上司がメンバーである部下に指示を出している時間」は、労働時間とはいえないだろうとして、必ずしも「使用者の指揮命令下の時間」によってのみ判断することが適当ではないとしている。

 そして、「労基法上の労働時間」とは、「職務遂行と同視しうるような状況の存在」(職務遂行要件)と、「使用者の指揮命令や黙認など使用者の関与の存在」(使用者関与要件)の2つの要件から判断するというのが妥当ではないかとしている。大御所である菅野和夫氏は、この労働時間を「使用者の作業場の指揮監督下にある時間または使用者の明示または黙示の指示によりその業務に従事する時間」と定義しているところである。裁判例では「指揮命令下」としているが、実際のところは、指揮命令下の中に「職務・業務」を含めて判断している例が多いではないか。では、具体例にそって見てみよう。

 ・ビル警備員の夜間の仮眠時間について、仮眠室における待機だけでなく警報や電話等に対し即座に対応することが義務付けられていたことから、仮眠時間であっても職務と同視(「職務遂行要件」)できるものとして、労働時間であるとした例(最高裁大星ビル管理事件)
 一方、実作業の従事の必要性が皆無に等しく(「職務遂行要件」を欠く)実質的に警備員として相応の対応が義務付けられていないので労働時間を否定(日本貨物鉄道事件「超過勤務」他)

 ・マンション住み込みの管理人について、所定労働時間の前後に住民や外来者からの要望に対応せざるを得ない(「職務遂行要件」)として労働時間を肯定したが、所定労働時間であっても、病院への通院や自分の犬の散歩を行った時間は、業務とは無関係な私的な時間(「職務遂行要件」を欠く)として労働時間とは認めなかった例 一方、発生した緊急事態に対応した実作業について労働時間として認めた例もある。 (大林ファシリティーズ事件等)

 ・勤務医が上司から指示されての勉強会・検討会の発表時間及び準備時間は労働時間に当たるが、自主的な研鑽に意味合いが強い学会等への参加・準備時間は労働時間ではない。(「職務遂行要件」に当たるかどうか、長崎市立病院事件)

 ・使用者が労働者の時間外労働を行うのを防止するためには、一定の労働時間について明示的に時間外労働を禁止するなどの明確な措置をとる必要があるが、これに反して労働者が自発的な残業を行った場合に、使用者としても認識もなく認めてもいない場合は、労働者が職務を遂行(「職務遂行要件」)していたとしても、使用者の関与を欠く(「使用者関与要件」を欠く)ものとして、労働時間ではない。

 ・残業承認制下で申請しない労働者の残業で、所定労働時間に終了することが困難な量の業務を労働者に行わせ(「職務遂行要件」)、会社代表者が現に残業を行っていたことを認識していたという事情等を考慮して、「黙示の指示」に当たる(「使用者関与要件」)として、労働時間に当たるとした例(クロスインデックス事件)

 ・安全保護具が義務付けられている更衣室での更衣後、実作業のために作業所へ移動する時間は、職務遂行に不可欠の時間として(「職務遂行要件」)、労働時間が肯定され得る。(三菱重工業長崎造船所事件)

 以上のように、裁判でも実際には、使用者の明示・黙示の指揮命令(使用者関与要件)だけでなく、「職務遂行要件」が加味されて、初めて労働時間と認められ得ると考えられる。

 参考 ・水町勇一郎著 詳解労働法第2版 p663~672
    ・菅野和夫著  労働法第12版  p495
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ITでない「回転すし」(かっぱ寿司の元社長逮捕)にも適用された不正競争防止法の「営業秘密」の条件とは<営業秘密管理指針>

2022-10-08 11:03:18 | 社会保険労務士
 営業秘密は「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の条件が必要<特に「秘密管理性」を創り上げることが重要> 

 かっぱ寿司の長谷川元社長が、以前勤めていた「はま寿司」の食材の原価・取引先のデータ等「営業秘密」を不正に取得したとして、不正競争防止法違反の疑いで9月30日(=22年)逮捕された。不正競争防止法の「営業秘密」の侵害行為(不正取得)とは、不正の利益を得る目的又はその損害を加える目的で、その営業秘密の使用等を行う行為であり、従来IT関係などの企業秘密に適用されていたものです。例えば、2014年東芝の半導体メモリーの研究データを元技術者が無断複製したものとした事件が挙げられるところです。それが、回転すし業界に適用されたというからおどろきです。それほどまでに、回転すし業界は、競争が激しいとも受け取れます。

 そもそも、回転すしの食材の原価・取引先のデータは、「営業秘密」にあたるのでしょうか。 いわゆるITや半導体技術等の高度な技術・情報しか営業秘密に当たらないのでしょうか。不正競争防止法の保護対象となる「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法その他の有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないもの」(同法2条6項)とされています。この営業秘密として、具体的に管理するやり方として、経済産業省が定めた「営業秘密管理指針」がありますので、これに沿って、その内容をちょっと見たいと思います。営業秘密として保護されるためには、「秘密」として管理されるという「秘密管理性」、それが客観的に「有用性」を有していること、一般的には入手できないという「非公知性」の3つの条件を満たす技術又は営業上の情報であることが必要です。

 「秘密管理性」が認められるためには、企業がその情報を秘密であると単に主観的に認識しているだけでは不十分であって、企業が秘密として管理しようとする意思が、具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置によって、従業員に示され、結果として、従業員がその秘密を管理する意思を容易に認識できる必要がある。取引先に対しても同様。この秘密管理措置に関しては、一般的には、情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限)、情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるようにされていること(認識可能性)の2つが管理性を判断する重要なファクターであると説明されてきていたが、これにはむしろ従業員等の「認識可能性」の方が重要ということで、必ずしも十分な「アクセス制限」がないことを根拠に秘密管理性が否定されることもないとしている。

 ただし、企業が相当高度な秘密管理を網羅的に行った場合に、法的保護が与えられると考えることは適切ではなく、営業秘密はそれを企業の内外で組織的に共有することによってその効用を発揮するものであって、リスクや対策費用の大小を踏まえて、その効率的な運用が行われることが必要であります。特に最近では中小企業が営業機密を活かして運用しているところで、これらの企業に鉄壁の秘密管理を求めることは、むしろ現実的ではありません。

 そこで、具体的に必要な秘密管理措置の内容・程度は、企業の規模、業態、従業員の職務、情報の性質その他の事情のよって、異なるものであるとしている。企業における営業秘密の管理単位(営業秘密情報を管理している独立単位)における従業員が、それを一般的に容易に認識する程度のものが必要としている。小規模事業では会社全体で管理しているかもしれないし、その商品を取り扱っている課で行っているものかもしれないが、一般的には、当該管理規定等を設けることが必要で、事業所全体で管理する場合にはすくなくとも、労働基準法にいう「就業規則」にする必要がある。(事業場の労働者のすべてに適用される定めの場合は、就業規則に定めるとある。労働基準法89条)

 「非公知性」が認められるためには、一般的には知られておらず、又は容易に知ることができないことが必要である。具体的には、当該情報が合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物に記載されていないとか、公開情報や一般に入手可能な商品等から容易に推測・分析されないなど、保有者の管理以外では一般的に入手できない状態である。ここで、一般に知られている情報の組み合わせによっても「専門家により多額の費用をかけ、長時間にわたって分析すことが必要である」なものは、非公知性があるとされている。(大阪地判平成15年2月27日)

 「有用性」が認められるためには、その情報が客観的に、事業活動にとって有用であることが必要である。有用性の要件は、公序良俗に反する情報(脱税・有害物質の垂れ流し等)などの正当な利益が乏しい情報を外した上で、広い意味で商業的価値が認められる情報を保護することに主眼がある。したがって、一般的には秘密管理性、非公知性を満たす情報は、有用性が認められることが通常である。また、必ずしも現に事業活動に使用・利用することを要するものではない。

 したがって、営業秘密の対象が「非公知性」(知られていない・容易に知ることができない)であって、会社の「秘密管理措置」が施されていれば、一般的には、客観的に商業的価値も認められところであり、それは「有用性」が認められるところであって「営業秘密」の条件を満たすことになります。回転すしの原価等が「営業秘密」に該当するかについては、同様に、これも「非公知性」「秘密管理措置」そして、それによって「有用性」の3つが揃う可能性は十分あることになります。田辺容疑者は「かっぱ社の水準を把握するため」と言い、警視庁ではかっぱ社の強みや弱みを把握・経営に役立てたとみているとされ、そうであれば「有用性」は認められるところであり、不正競争防止法にいう「秘密」にあたる可能性は十分あることになります。
 
 ここで営業秘密であるかどうかは、「非公知性」「有用性」についてはおのずと決まってくるところであり、問題は会社で秘密管理措置が創り上げられているかが重要となってきます。先に述べたように、結局のところ、従業員にアクセス制限、認識可能性の管理をちゃんと行うことが営業秘密として認められるかの境目になってくるということです。

 このように、不正競争防止法では、元従業員であれ、誰であろうと不正を犯せば違反罰則となるが、要件が厳格なため、あまり認められてこなかった経緯がある。しかし、労働法の世界では、労働契約を締結した労働者には、労働契約上の付随義務として、信義則に基づいて営業秘密義務を負っている。これは、不正競争防止法の営業秘密の範囲内に入らないものについても、広く及ぶのである。ただし、労働契約の終了後も、この義務があるかは解釈上争いがあり、就業規則さらには退職時に個別契約を結んで秘密保持を守らせようとしている事業所が多い。

 参考 詳解労働法 水町勇一郎著 
    厚生労働省 営業秘密管理指針  
 
 
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労基法と憲法の差別禁止事由の差異は?社労士試験の覚え方(労基法3条1項 )!

2022-10-01 14:36:58 | 社会保険労務士
 労基法の差別禁止事由「国籍」・「信条」としたのはそれなりのわけ!「社会的身分」で包括的に!

  労働基準法で代表する労働法の世界は、使用者と労働者の関係において、いわゆる「人」を取り扱う法律なので、「人権」についても、細かに規定している。その中で、平等取り扱いを論じた労基法第3条においては、次のように規定している。
 使用者は、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。(労働基準法第3条)
 一方、憲法第14条においても、同様の規定がある。
 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(憲法14条1項)

 憲法は、「政治的、経済的、社会的関係」において全般的に差別されないとしているが、労働基準法においては、あくまでも「労働条件」の関係においてとしているのは、労働基準法の対象とするのが労働関係なので、限定的なのは当然の事であろう。問題は、その理由である。憲法は、人種、信条、性別、社会的身分又は門地として、多くの理由を挙げているにもかかわらず、労基法は、国籍、信条、社会的身分の3つだけを上げているに過ぎない。これだけで、理由のすべてを上げたことになるのかという疑問である。

 ところで、社会保険労務士の試験を受験しようとしている方は、この憲法と労働基準法の差別禁止事由の違いについて戸惑われる方もいるかもしれない。私の場合で恐縮ですが、曲がりなりにも憲法14条は読んでいたので、労働基準法3条を見たとき、ああ、憲法のあの条項かと思ったほどであるが、よく見ると語句が違っていたのに気が付いたのである。この点については、次のように、労働基準法は覚え直せばいいのではないかと思う。

 労働基準法は、戦後、昭和22年(1947年)の成立である。まず、人種でなく「国籍」を差別禁止事由として掲げた背景には、戦時中に行われた中国・台湾・朝鮮人労働者に対する差別的取り扱いの反省があったという。また、1919年のヴェルサイユ条約やILO第19号条約など、当時は、各国に居住す外国人労働者への均等待遇の確保が国際的にも課題になっていたという。(詳解労働法) 
 また、2番目に掲げた「信条」というのは、思想、信念など人の内心におけるものの考え方をいい、宗教的な信仰のみならず政治的な信念も含まれるというのが一般的な見解である。これまた、戦後間もないころにおいては、政治的には、極左的な思想から極右的なもの様々な思想の対立があった時代でもあり、公平な労働基準法の世界においては、あえて差別的な理由とは認められないとしたのは、当然の事かもしれない。そして、また裁判でさまざまに争われ、中には典型的な裁判例もあるところです。
 3番目に差別禁止とした「社会的身分」においては、「生来的な地位を指す」とされ、一般的にいう「生まれながらの」身分であって、出身地、門地(家系・血統などの家柄のこと)、人種、非嫡出子などさまざまなものを指すとされる。ここで、憲法14条でいっている「人種」「門地」はこの社会的身分の中に含まれており、憲法の方が禁止事由が多いというのは当たらないことになる。生来的な地位である「人種」「門地」は、すべてこの社会的身分の中に含まれるのである。すなわち、1番目に「国籍」を取り上げ、2番目に政治的な対立の点等からの「信条」を謳い、3番目に包括的に、生来的な地位である「社会的身分」で理由の全部を言い切ったということができるのです。

 ただ、一つだけ言い忘れたことがあります。憲法と労働基準法の差別禁止事由で、違っているのが「性別」です。今までの説明したとおり、労働基準法3条では、明確に「性別」の禁止事由が挙げられていません。これには、労働基準法自体に時間外労働、深夜労働等に関する女性保護規定があることを考え、意図的に「性別」を除いたものであるとされています。一方、賃金については、女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをしてはならない(労基法4条)としているほか、男女雇用機会均等法や女性活躍推進法等において、不利益な取り扱いにならないように、また、女性が活躍できるように、個別に、適正な規制を行っているところです。

 最後に、憲法で差別禁止をしたにも関わらず、労働基準法でさらに禁止したのには、わけがあります。労働基準法3条違反には、まず罰則の適用があります(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。民事上も、違反した場合には不法行為(民法709条)があり、それが配置転換、懲戒処分、解雇などの法律行為であった場合には、無効となるものであります。(労基法13条) 労働基準法で禁止したのには、以上のように、具体的な法律効果が期待されているからです。

 参考 詳解労働法第2版 水町勇一郎 東京大学出版会

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