プロメテウスの政治経済コラム

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『癒しと笑い』 ―「癒しの環境研究会」  笑う門には福来る

2007-11-30 19:16:26 | 社会問題
「しんぶん赤旗」日曜版2007年12月2日号は、さまざまな分野で活躍する女性を紹介するとして「癒しの環境研究会」代表世話人の高柳和江(日本医科大学准教授)さんにインタビューしている。高柳さんは、笑いによって患者の自己治癒力を高める『笑い療法士』の育成にも力を入れている。

高柳さんは77年から10年間、クウェートの国立病院に勤務した。
「クウェートでは、植林した森の中に病院があるんです。医療費は無料。患者と医者は診察のたびに握手をして、人間的で温かなつきあいでした。患者も医者に堂々と意見が言える対等な関係です。日本の病院に戻ったときはショックでした。病院には活気も笑いもなく、殺風景で、患者は大部屋に押し込められている。こんな環境で病気が治るかって思いましたね」
「笑うのは人間にとっていいことだらけ。笑いには病気を予防したり治したりする、免疫力を高める効果があるんですよ」
高柳さんは、小児外科医としてメスを握り、数え切れないほどの手術をしてきた。でも医師の仕事は最後に縫合するまで。手術後の体を治すのは本人の力だと思い知らされてきた。では自己治癒力はどのようにして高められるのか。そこに「癒し」と「笑い」というキーワードが浮かび上がってきた(「しんぶん赤旗」日曜版 同上)。

高柳さんは、94年「癒しの環境研究会」を立ち上げ、医師や看護師、建築家、インテリアデザイナー、患者たちと一緒に、患者に安心感を与え、自己治癒力を高める病院環境の研究を進めてきた。「癒しの環境」には、ハードとソフトの2つの面がある。ハードとは、施設、設備などの環境、緑の環境である。入院中に散歩できる庭があると、少なくとも、窓を開けて見える緑があればどんなに落ち着くことだろう。細やかに配慮された間接照明、センスのよい壁紙が貼られた壁は、そこに休む人の心をどんなになごませることだろう。絵もいい。こうしたハードは、そこに働く医療提供者に向いているものではなく、患者のほうを向いているものでなくてはならない。
「癒しの環境」のソフトの中心は、直接患者と接する医療従事者である。初対面なのに旧知の友に会うような暖かい雰囲気、笑顔、やさしい言葉、頼もしい態度、患者心理をよく知っていて、気持ちをくみ取りながら、その患者の個人としての人間性を守る。この人に任せたら安心だ、と患者が感じられる環境が「癒しの環境」である。看護婦だけではない、医師、薬剤師、療法士や検査技師などの専門職、給食を作ったり配膳したりする人々も、病院内に働いている医療提供者である限り、「癒しの環境」を築くスタッフなのである(「癒しの環境研究会」HPより)。

施設の充実とともに、病院に笑いがあることも「癒しの環境」には不可欠な要素である「1日5回笑って、1日5回感動する」「他人を笑わせる冗談を毎日三つは用意しよう」「寝る前に今日はなんて幸せと心から笑う」―高柳さんの「笑いの処方箋」である。
会の活動に「笑い療法士」の養成と認定が加わったのは、2005年から。『笑い療法士』の認定を2005年10月23日に行い、第1回の認定者として49人を3級に認定した。
「『笑い療法士』は『お笑い療法士』ではない。パフォーマンスやグッズはいらない。人を傷つけるような笑いもご法度。病気の苦しみと不安で、とても笑えないという人も。人が笑うためにまず必要なのは、安全で安心できる環境。相手の心に寄り添って、何気ない話をしながら、ほほ笑み合えるような信頼関係をつくることが大切なんです。人間としての鍛錬が必要なの」
現在約300人の「笑い療法士」が全国にいて、病院や福祉施設、それぞれの場で笑いを引き出し、広げている(「しんぶん赤旗」日曜版 同上)。

現代の世相は、病人でなくてもいやなことが多い。未来に対する楽観論に立って、胸を張り背筋を伸ばして明るく楽しくポジティブに生きたいものだ。笑う門には福来る。

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