Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

早期リハビリと血糖コントロール

2014年09月12日 | その他
Patel BK, Pohlman AS, Hall JB, et al.
Impact of Early Mobilization on Glycemic Control and ICU-Acquired Weakness in Critically Ill Patients Who Are Mechanically Ventilated.
Chest. 2014 Sep 1;146(3):583-9. PMID: 25180722.


人工呼吸患者に対する早期リハビリの有用性を示したRCTのデータを使った解析(N=104)。すべての患者さんにIntensive insulin therapy(血糖を80-120mg/dlにコントロール)が行われた。多変量解析にて、早期のリハビリおよびインスリンの投与量の増加がICU-AWの発生の低下に関連していた。早期のリハビリ群の方がインスリンの投与量が少なかった(0.07 vs. 0.2u/kg/day、p<0.001)。

インスリンが筋肉に与える影響とか、早期リハビリのICU-AWに対する効果のパラドックス(理学的にはいいけどインスリンの投与量が減る分だけ有害)についてとか議論されているけれども。
それよりも、単純に運動するとインスリンの量が半分以下になるんだ、へー、と思った。
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延命治療の差し控えのバリエーション

2014年09月11日 | 感染
という和訳でいいのだろうか。

Quill CM, Ratcliffe SJ, Harhay MO, et al.
Variation in Decisions to Forgo Life-Sustaining Therapies in US ICUs.
Chest. 2014 Sep 1;146(3):573-82. PMID: 24522751.


アメリカのIMPATのデータ(153のICU、269000症例)を用い、Decisions to forgo life-sustaining therapy (延命治療の差し控えの決定、DFLSTs)についての頻度について解析。高齢、女性、白人、もともとADLが低い、Open ICU、などがDFLSTsを増やす因子だった。それらを考慮しても、ICU effectは約6倍あった(つまり、施設によるDFLSTsの頻度が低いところと高いところで6倍違った)。DFLSTsの頻度は重症度スコアによるStandard Mortality Ratio(SMR)との関連が強かった。

とりあえず、最後のSMRとの関連(つまり、予測死亡率に比べて実際の死亡率が高い施設ではDFLSTsの頻度も高い)については、以前の研究では逆の結果だったりするので、あまり重要な結果ではなさそう。

それよりも、施設によってこんなに極端な差があるのはさすがに問題ではないのか。96時間以上の人工呼吸をしている患者さんについて見ると、中央値は32.3%で、幅は12.3%から61.7%まである。患者さんや家族の希望がこんなに違うわけないので、つまりは各医者/各ICU/各病院の考え方や習慣が異なるということ。それはいくらなんでも違う過ぎる。

Editorialには、
...dramatic variability in decision-making that is based on the perspectives of individual physicians is profoundly problematic...shared decision-making within the clinical team and with the patient and family are critical to address this important problem.
と書いてあるが、そうは言っても医者の意見は相当影響が強いでしょう。

もう少し、科学的にならないだろうか。
どれだけ根拠に基づいた判断ができるのか、今後できるようになるのか分からないけど。
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ECMOのレビュー

2014年09月10日 | 呼吸
Blue journal(AJRCCMのこと)に、ECMOについての文献が2つ載っていた。

Ventetuolo CE, Muratore CS.
Extracorporeal life support in critically ill adults.
Am J Respir Crit Care Med. 2014 Sep 1;190(5):497-508. PMID: 25046529.


こっちは普通のレビュー。VAおよびVV-ECMOについて。ただし、参照文献数は約140。

Combes A, Brodie D, Bartlett R, et al.; International ECMO Network (ECMONet).
Position paper for the organization of extracorporeal membrane oxygenation programs for acute respiratory failure in adult patients.
Am J Respir Crit Care Med. 2014 Sep1;190(5):488-96. PMID: 25062496.


ECMOの組織についてのESLOからのposition paper。センター化とか、搬送チームとか、教育とか。

そう言えば、以前のJSEPTICの簡単アンケートでVV-ECMOについてやったんだけど、呼吸不全に対するECMOの施設集約化についてどう思いますかという質問で反対と答えた人は4%だった。
でも、もし呼吸不全に対するECMOを行う施設を集約化すると仮定した場合、あなたの施設がECMOセンターになることを望みますかという質問で望まないと答えた人は10%だけだった。

うーん。やっぱり現実には難しいのだろうか。
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NGALについてのレビュー

2014年09月09日 | 腎臓
Blood Purificationに、AKIにおけるNGALについてのレビューが二つ載っていた。
念のため、知らない方のために。NGALというのはAKIのバイオマーカーってやつで、クレアチニンとかよりも早期にAKIが診断できるということで研究がたくさん行われていて、少なくとも海外ではベッドサイドで測れるキットも売られている。

Ronco C, Legrand M, Goldstein SL, et al.
Neutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin: Ready for Routine Clinical Use? An International Perspective.
Blood Purif. 2014 Jul 3;37(4):271-285. PMID: 25012891.


NGAL凄いからどんどん使おーぜー、研究もどんどんしよーぜー、というレビュー。

Martensson J, Bellomo R.
The Rise and Fall of NGAL in Acute Kidney Injury.
Blood Purif. 2014 Aug 21;37(4):304-310. PMID: 25170751.


NGALはAKI以外でも上昇するから、腎臓に得意的なNGALが測定できるようになるまではリサーチの中だけの話にしていた方がいいよ、というレビュー。

著者のDr RoncoとDr Bellomoはお友達で、かつDr Roncoはこの雑誌のChief-in-Editor。
あんたたち、何やってるの?

とりあえず、両方ともしっかりしたレビューになっているので、NGALについてお勉強したい人にはお勧め。
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周術期のβブロッカー投与についてのガイドラインの記載

2014年09月08日 | 循環
Cole GD, Francis DP.
Perioperative β blockade: guidelines do not reflect the problems with the evidence from the DECREASE trials.
BMJ. 2014 Aug 29;349:g5210. PMID: 25172044.


研究結果の発表ではなく、意見というか、文句。簡単に要約すると、

・2009年のEuropean Society of Cardiology(ESC)のガイドラインでは、リスク症例に対する周術期のβブロッカー投与をClass Iで推奨している。
・その推奨は主にDECREASE trial familyの結果に基づいている。
・でもDECREASEは2011年にmisconductがあったとして信用を失っている。
・2013年にDECREASE以外のRCTを対象としたメタ解析を我々は発表したけど、その結果はβブロッカーは死亡率を27%増やすというものだった。
・ESCがガイドラインを改訂しないので、2014年1月に我々は意見書を発表した。
・2014年8月になり、やっとESCはガイドラインを改訂したが、そこではclass IIbに下げてはいるものの、まだβブロッカーの使用を推奨している。
・何でやねん!

という内容。

ちょっと集中治療というよりも麻酔科寄りではあるけれども、面白いので、麻酔科からのローテーターにまとめてもらおうかな。
数ヶ月後のジャーナルクラブをお待ちあれ。
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ICUでのSMARTアプローチ

2014年09月07日 | 昔思ったこと
メールのコピペ第2弾。
誰との会話かは、分かる人はすぐ分かる。
ちなみにSMARTアプローチというのは、これね
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2008年8月8日 14:44:41
内野@慈恵ICUです。

>a-lineは滅菌したグローブ?(トホホと・・・汗をかく)私、a-lineは酒精綿でフキフキして、手袋はディスポのもの使ってます。みなさんの施設ではどうしてますか?
カテ感染の発生頻度はCVとA-lineでは変わらないようです。
Koh DB, Gowardman JR, Rickard CM, et al.
Prospective study of peripheral arterial catheter infection and comparison with concurrently sited central venous catheters.
Crit Care Med. 2008 Feb;36(2):397-402

”普通のやり方”(滅菌手袋・クロルヘキシジン)に比べてMaximal precautionをやったらどうなるかを比較してる人までいます。
Rijnders BJ, Van Wijngaerden E, Wilmer A, et al.
Use of full sterile barrier precautions during insertion of arterial catheters: a randomized trial.
Clin Infect Dis. 2003 Mar 15;36(6):743-8


>なかなか、Semirecumbent > 30°になってません(涙)。
semi-recumbent positionについて有名な文献と言えば、
Drakulovic MB, Torres A, Bauer TT, et al.
Supine body position as a risk factor for nosocomial pneumonia in mechanically ventilated patients: a randomised trial.
Lancet. 1999 Nov 27;354(9193):1851-8

ですが、これって0°と45°を比べてるんですよね。
どこから30°っていう数字が出てきたのか、どなたかご存じですか?

で、0°なんて実際にはしないだろうとケチがついて、10°と45°を比較しようとした人がいます。
van Nieuwenhoven CA, Vandenbroucke-Grauls C, van Tiel FH, et al.
Feasibility and effects of the semirecumbent position to prevent ventilator-associated pneumonia: a randomized study.
Crit Care Med. 2006 Feb;34(2):396-402

でも実際にはナースが45°にはしてくれなくて、結果的に30°と10°の比較になり、VAPの発生頻度に差はなかった、という結果でした。

以上、文献紹介でした。
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6年前も文献紹介とかしてたんだ。
やっぱ変わってないわ。
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痰から分離されたカンジダと抗真菌療法

2014年09月04日 | 感染
Albert M, Williamson D, Muscedere J, et al.
Candida in the respiratory tract secretions of critically ill patients and the impact of antifungal treatment: a randomized placebo controlled pilot trial (CANTREAT study).
Intensive Care Med. 2014 Sep;40(9):1313-22. PMID: 24981955.


臨床的にVAPが疑われ、痰培からカンジダが生えた症例を対象に、無作為に抗真菌剤(anidulafungin)もしくはプラセボを投与。他の部位からカンジダが分離された場合は除外。Primary outcomeは、こういうRCTがちゃんと行えるか(症例が集まるか)で、それ以外にもCRPやプロカルシトニンやIL-6の変化も比較。その結果、120例を予定していたけど、症例の集まりが遅くて60例で中止。予後や炎症マーカーには差を認めず。

肺から分離されたカンジダに病原性は無い、というのが教科書的記載だけれども、最近は、
・ベータグルカンが炎症を惹起する
・緑膿菌の感染を増やす
・カンジダが分離された症例の予後は悪い
など、もしかしたら悪者かも、という可能性が出てきた。
カンジダを治療することにより予後がよくなるかもしれないけど、そんなRCTができるかどうか分からないので、とりあえずパイロット研究をやってみたら、症例は集まらないし差は無さそうだしで、やーめた、という話。

・”古い言い伝え”に捕われず、可能性があれば追求する
・関連性は因果関係を保証しない
勉強になります。あざっす。
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脳損傷のモニタリング

2014年09月03日 | 神経
Le Roux P, Menon DK, Citerio G, et al.
Consensus summary statement of the International Multidisciplinary Consensus Conference on Multimodality Monitoring in Neurocritical Care : A statement for healthcare professionals from the Neurocritical Care Society and the European Society of Intensive Care Medicine.
Intensive Care Med. 2014 Sep;40(9):1189-209. PMID: 25138226.


いろいろな学会が合同で作った、neurocritical careでのモニタリングについてのステートメント。
強い根拠がほとんどない話題で、どんな内容かと思ってrecommendationだけ読んでみたけど、やっぱりそのまま臨床に使えそうな感じではない。
でも参照文献が160もあるので、この話題についての文献集としてはとても良いのでは。
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メタ解析はその後の無駄な研究を予防するか

2014年09月02日 | EBM関連
Habre C, Tramer MR, Popping DM, et al.
Ability of a meta-analysis to prevent redundant research: systematic review of studies on pain from propofol injection.
BMJ. 2014 Aug 26;348:g5219. PMID: 25161280.


末梢Vからのプロポフォール投与時の痛みを予防する方法について検討した56のRCTを対象に、2000年にメタ解析が行われた。その結論は、ベストの予防法は少量のリドカイン、それ以外の治療法はリドカインほどの効果はない、小児を対象とした研究が必要、二重盲検の必要性、などだった。
このメタ解析の発表後、2013年までにプロポフォールの痛み予防についてのRCTが136行われた。そのうち、リドカインを対象としたものが27.9%、小児の研究が12.5%、二重盲検は38.2%だった。有益(リドカインと比較している、小児を対象としている)と思われる研究は36%だけだった。

研究一つ一つを見ていかないと正確には判断できないので、本当に64%の研究が無駄だったかは分からないけれども。でもさすがに同じ話題で200もRCTはいらないだろ、とは思うけど。

とりあえず一般論として言えることは、研究をやるときは、まずスタディーデザインをする段階で、”その道のプロ”になること。何が分かっていて、何が分かっていないか、を把握しないと、意味の無い研究になってしまうのでね。
学会発表とか、多いでしょ、そういうの。いい加減、やめよーよ。
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心停止蘇生後ショックと低体温

2014年09月01日 | 循環
Annborn M, Bro-Jeppesen J, Nielsen N, et al.; TTM-trial investigators.
The association of targeted temperature management at 33 and 36 °C with outcome in patients with moderate shock on admission after out-of-hospital cardiac arrest: a post hoc analysis of the Target Temperature Management trial.
Intensive Care Med. 2014 Sep;40(9):1210-9. PMID: 25001475.


心停止蘇生後の低体温が有効かどうかを検討したTTM trialのpredefined post-hoc解析。全939例中、ショック症例(SBP<90か、それを維持するのに昇圧剤が必要)は139例。Primary outcomeである180日死亡率は二群間に差無し(70% vs. 63%, p=0.47)。多変量解析でも同様(オッズ比1.46, p=0.40)。血圧や乳酸値は36度群の方が良い感じ。

専門家がどう判断するのかは知らないけど、非専門家としてはどんどん低体温に興味が無くなっていく。
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