Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ベイズ法:敗血症の臨床試験を前進させる可能性

2023年11月19日 | 感染
今もSPECTRALのWebサイトを定期巡回している。ちなみにSPECTRALとは、PMXをFDAに通そうとしている会社。そこでこんなニュースが書かれていた。
Spectral Medical Announces Publication of Tigris Trial Methods Paper and Simulation of Results

その文献とは、これ。
Tomlinson G, Al-Khafaji A, Conrad SA, et al.
Bayesian methods: a potential path forward for sepsis trials.
Crit Care. 2023 Nov 8;27(1):432. PMID: 37940985.


なんか難しくてよく分からないのだけど、とりあえず、EUPHRATESのサブグループ解析の結果を試験前確率として利用してベイズ解析すれば、TIGRISの予定症例数(150例)でも十分に有効性が示せる、という話らしい。このサブグループというのは、MODSが9点以上でエンドトキンの血中濃度が0.6-0.89の間の患者さんのこと。エンドトキシンが低すぎれば軽症すぎ、高すぎれば重症すぎだからPMXは無効と考えられるので、このサブグループで有効性が示されたのは論理的に考えても筋が通る、というのがTIGRISのそもそもの根拠。

きっと統計のプロが研究チームに含まれているのだろうけど、素人には納得できない。だってサブグループで見られる有効性はあくまで偶然の可能性があるのだから、それを試験前確率に使用してNが小さい研究やってもOK、っていうのは正しいの?

ニュースに書いてあるDr. Kellumのコメントが恐ろしい。
"We are pleased to see the publication of this paper, in a major scientific journal. The analysis clearly indicates that our trial strategy is highly likely to succeed and not only will this support our FDA approval for PMX, but will also have a major impact on how trials in the ICU are conducted in the future. The simulations involving over 2,000 potential trial results show that using the planned 75% weight on the prior EUPHRATES data, an observed absolute risk reduction for mortality of 7% in Tigris is at approximately the 95% probability threshold for declaring PMX effective. Current results from Tigris are far in excess of this threshold.”
(DeepLによる和訳)
「この論文が主要な科学雑誌に掲載されたことを嬉しく思います。この分析結果は、我々の試験戦略が成功する可能性が高いことを明確に示しており、PMXのFDA承認を支持するだけでなく、ICUにおける研究の今後の実施方法にも大きな影響を与えるでしょう。2,000件以上の潜在的な試験結果を含むシミュレーションによると、EUPHRATESの先行データに75%の重み付けをすることにより、Tigrisで観察された7%の死亡率の絶対リスク減少はPMXの有効性を宣言する95%の確率の閾値にほぼ達している。Tigrisの現在の結果は、このしきい値をはるかに超えています」。

直近の症例数が発表されたのが11月9日で76例。目標は150例、90例でinterim解析。
月に数例程度のenrollmentが続いているので、150例なら来年いっぱいか。

嫌な予感しかしない。。。
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