Dr内野のおすすめ文献紹介

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しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

MAPは低血圧予測アルゴリズムと同等か?

2023年06月09日 | AI・機械学習
AIの臨床応用という視点からはとても重要な話。
順番に行くと、

Hatib F, Jian Z, Buddi S, Lee C, et al.
Machine-learning Algorithm to Predict Hypotension Based on High-fidelity Arterial Pressure Waveform Analysis.
Anesthesiology. 2018 Oct;129(4):663-674. PMID: 29894315.

術中のA-lineの波形から多くの特徴量を作成し、それに基づいて術中の低血圧の発生を5-15分前にAUROCが0.95の精度で予測できると報告。

Wijnberge M, Geerts BF, Hol L, et al.
Effect of a Machine Learning-Derived Early Warning System for Intraoperative Hypotension vs Standard Care on Depth and Duration of Intraoperative Hypotension During Elective Noncardiac Surgery: The HYPE Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2020 Mar 17;323(11):1052-1060. PMID: 32065827.

ここでも紹介。RCTで有効性が示された。

これらの結果に基づいて、Edwardsがモニタに表示するようにした。

でも、研究結果がちょっとおかしいんじゃね?とケチがついた。
Enevoldsen J, Vistisen ST.
Performance of the Hypotension Prediction Index May Be Overestimated Due to Selection Bias.
Anesthesiology. 2022 Sep 1;137(3):283-289. PMID: 35984931.


今回の文献は、実際に使ったらこうだったよ、という内容。
Mulder MP, Harmannij-Markusse M, Donker DW, et al.
Is Continuous Intraoperative Monitoring of Mean Arterial Pressure as Good as the Hypotension Prediction Index Algorithm?: Research Letter.
Anesthesiology. 2023 Jun 1;138(6):657-658. PMID: 37011012.

なんと、MAPだけで予測しても同じ結果がでそうだよ、という結論。

いろいろ考えさせられるね。
商品が表示する数字って信用できるのかとか、
研究の解釈って注意が必要だねとか、
有効性がどう示されたら臨床応用していいのかとか、
先日も書いた通り、未来のXを予測するのにもっとも重要な特徴量は今のXで、そんな予測って臨床意義はあるのかとか。

たくさんの問題を抱えつつ、AIは臨床に入ってくる。
医療従事者はそれをどう判断するか、が大事。
正しく判断するには知識がないといけない。

そっか。
薬とかデバイスとか、根拠は乏しいのに臨床でバンバン使われているやつ、いくつもあるもんね。
別にAIが特別なわけじゃない。
ーーーーーーーーーー
追記あります。
世間ではすでにいろいろ話題になっていた。
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