Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

重症市中肺炎におけるヒドロコルチゾンの効果

2023年03月24日 | 感染
結果がポジティブだからか、話題になってますね、この文献。

Dequin PF, Meziani F, Quenot JP, et al.; CRICS-TriGGERSep Network.
Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia.
N Engl J Med. 2023 Mar 21. Epub ahead of print. PMID: 36942789.


ショックは除外。
28日死亡率が6.2% vs. 11.9%, p=0.006。

今月号のChestにメタ解析が載ってた(ePubは半年くらい前だけど)。
Saleem N, Kulkarni A, Snow TAC, et al.
Effect of Corticosteroids on Mortality and Clinical Cure in Community-Acquired Pneumonia: A Systematic Review, Meta-analysis, and Meta-regression of Randomized Control Trials.
Chest. 2023 Mar;163(3):484-497. Epub 2022 Sep 7. PMID: 36087797.

死亡のRRは0.85 (p=0.17)。
多くは一般病棟の研究だけど、Nは今回の研究と同じくらいのが複数ある。

さて、どう考えますかね。

過去の情報を含めてまとめると、
・一般病棟レベルだとステロイドの効果はないか、あってもちょっと。
・ICUレベルだけどショックじゃないと死亡が半減。
・敗血症性ショックでは死亡を減らさない。
となるけど、さすがにこれで納得するのは難しいし、これに基づいて臨床をするのも変な感じ。

このNEJMの研究で一番変というか珍しいところは、サンプルサイズの計算のために使用したプラセボ群の死亡率(27%)よりも実際の死亡率が明らかに低かったのに、介入群の効果が有意に示された点。しかもearly terminationされている。普通は、死亡率は低めだったけど有意差なしとなるだろうに。

・ステロイドは、COVIDに有効だったり、敗血症性ショックの期間を短くしたりするし、重症感染症に対して一定の効果はある。
・でも大きな効果ではない。なので研究によって評価が異なる。
・今回の研究で効果が大きく見えるのは信頼区間の問題(early terminationの影響)。
と考えると、少しスッキリする気がする。
でも、この研究で結論が出たという話にはならない。ANZICSあたりが本気になるかも。

僕は敗血症性ショックにステロイドは使わなかった。死にそうだったら、じゃあ入れとくか、くらい。
自治さいたまでは敗血症性ショック=ステロイドくらいの頻度で使用されている。
どっちも間違っていない。
市中肺炎に対するステロイドも、そんな感じになるのかな。
コメント
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