Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

脳梗塞にアルブミン?

2011年06月06日 | 神経
前回は誘惑に負けてNEJMなんか紹介していましたが、そんなメージャーな雑誌から紹介しても、他でいくらでも取り上げられるだろうから、やっぱりできるだけしないようにしよう、と反省。
ということで、今回はStrokeから(まあ、これも相当メジャーな雑誌ですけどね)。

The Albumin in Acute Stroke Part 1 Trial: An Exploratory Efficacy Analysis.
Hill MD, Martin RH, Palesch YY, Tamariz D, Waldman BD, Ryckborst KJ, Moy CS, Barsan WG, Ginsberg MD; on behalf of the ALIAS Investigators and the Neurological Emergencies Treatment Trials (NETT) Network.
Stroke. 2011 Jun;42(6):1621-1625. PMID: 21546491
http://stroke.ahajournals.org/cgi/content/abstract/42/6/1621

アルブミンには抗酸化作用や微小循環の改善効果などが推測されるため、脳梗塞の初期にアルブミンを使ったらどうか、というRCTの結果。
でも、結果がどうこうよりも、臨床研究の進め方として興味深いので紹介。

まず、ドーズを決定するためのパイロット研究が行われた。
The ALIAS Pilot Trial: a dose-escalation and safety study of albumin therapy for acute ischemic stroke--II: neurologic outcome and efficacy analysis.
Palesch YY, Hill MD, Ryckborst KJ, Tamariz D, Ginsberg MD.
Stroke. 2006 Aug;37(8):2107-14. PMID: 16809570.
合計82例、アルブミンの投与量が多い方が少ない方よりも予後が良かった。

この結果を受けて、phase IIIが行われた。
The albumin in acute stroke (ALIAS) multicenter clinical trial: safety analysis of part 1 and rationale and design of part 2.
Ginsberg MD, Palesch YY, Martin RH, Hill MD, Moy CS, Waldman BD, Yeatts SD, Tamariz D, Ryckborst K; ALIAS Investigators.
Stroke. 2011 Jan;42(1):119-27. PMID: 21164127
しかし、結果は期待に反してアルブミン群の方が予後が悪く、研究は途中で中止。
普通ならこれであきらめるところを、この研究者達は、何がいけなかったのかについて、データを詳細に検討した。その結果、高齢/トロポニン陽性/院内発生/大量補液が予後不良因子と判明したため、これらを除外した、ALIAS 2を現在実施中。
今回の紹介の文献は、ALIAS 1のデータから、予後不良でALIAS 2には含まれなかったであろう症例を除いて解析、つまりはALIAS 2の正当性を示すための文献。
その結果、有意ではないが、アルブミン群の予後が良い傾向が認められた。

パイロット(Phase II)で良くて、その後の大きな研究(Phase III)で悪かったら、それでオシマイが普通。
これで有効という結果が出たら、相当びっくりしますけどね。。。
でもそのエネルギーに拍手。
コメント
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