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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ストレス潰瘍予防は必要か

2016年10月14日 | 消化器・血液
つい最近、慈恵でこんな勉強会をしたばかりだった。
結論的には変わらないけど。

Selvanderan SP, Summers MJ, Finnis ME, et al.
Pantoprazole or Placebo for Stress Ulcer Prophylaxis (POP-UP): Randomized Double-Blind Exploratory Study.
Crit Care Med. 2016 Oct;44(10):1842-50. PMID: 27635481.


オーストラリアの一施設RCT。経管栄養可能な人工呼吸患者214例を、パントプラゾールかプラセボ投与かに割り付け。Major outcomes(複数ある)は、臨床的意義のある消化管出血、iVAC(まあVAPみたいなもの)、肺炎、CD腸炎。誰も消化管出血は起こさず、3例が肺炎、1例がCD腸炎を起こした。マイナーな出血もHbの推移も死亡率も、二群に差はなかった。

この研究のEditorial
「一度ルーチンとなったプラクティスは、たとえそれが無効もしくは有害であることが示されても、それを止めるまで時間がかかる。」

個人的にPPIは嫌いなのだが、H2Bを使うのを止めるのはなかなか難しいかも。
と言っても、ストレス潰瘍予防そのものが無効もしくは有害と証明されるのは、仮にされるとしてもまだしばらく先だし、きっと危険因子によって投与するかどうかを今よりも細かく考慮するようになるのかな、と思う。
流行りのprecision medicineというやつですかな。
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結果が予想と真逆のRCT

2016年06月27日 | 消化器・血液
を最近二つ見た。
両方とも出血に対する輸血製剤の投与の話。

Rahe-Meyer N, Levy JH, Mazer CD, et al.
Randomized evaluation of fibrinogen vs placebo in complex cardiovascular surgery (REPLACE): a double-blind phase III study of haemostatic therapy.
Br J Anaesth. 2016 Jul;117(1):41-51. PMID: 27317703.


CPBを要する大動脈の予定手術患者で、CPB離脱後で5分間に60-250gの出血が見られた152例に対し、フィブリノーゲン製剤を投与するかどうかでRCT。Primary outcomeは術後24時間以内の輸血(RCC, FFP, PC)量。その結果、フィブリノーゲン投与群のほうが輸血量が多かった(5単位 vs. 3単位, p=0.026)。

Baharoglu MI, Cordonnier C, Salman RA, et al.; PATCH Investigators.
Platelet transfusion versus standard care after acute stroke due to spontaneous cerebral haemorrhage associated with anti platelet therapy (PATCH): a randomised, open-label, phase 3 trial.
Lancet. 2016 May 9. [Epub ahead of print] PMID: 27178479.


オランダ、イギリス、フランスの60施設。抗血小板薬を投与されている患者が脳出血を発症し、GCSが8以上で、発症6時間以内に研究に参加できた190例が対象。診断90分以内に血小板輸血を行うかどうかでRCT。Primary outcomeは3ヶ月後のmRS。その結果、血小板輸血を受けた群のほうが有意に神経予後も死亡率も悪かった。

どちらの研究も機序は詳しく書いていない。想定外なんだから、そりゃそうだ。

抗血小板薬内服中の出血に対して血小板輸血をしたことはないのだけど、やった方がいいのかなー、と漠然に思っていた。
根拠の強さと潜在的副作用とコストの天秤はやはり大事である、ということか。
もちろん、これらの研究は大きくないので、その結果をそのまま真に受けるものではないのだけど、とりあえず積極的にやる理由はなくなった、ということでいいのでしょう。
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腹部コンパートメントと漢方薬

2016年06月20日 | 消化器・血液
Leng Y, Li H, Bai Y, et al.
Effect of traditional Chinese medicine on intra-abdominal hypertension and abdominal compartment syndrome: A systematic review and Meta-analysis.
J Crit Care. 2016 Aug;34:24-9. PMID: 27288604.


腹部コンパートメントに対する漢方薬の効果を検討したRCTのメタ解析。15研究735症例が対象。漢方薬の投与は腹圧を低下させ、APACHE IIスコアを改善し、入院期間を短縮する。死亡率は有意差を見出せなかった。

いや、単純に知らなかったので、タイトルを見てビックリしたのさ。
執筆者はすべて中国人。半分以上は中国の雑誌。まあそりゃ知らんわ。
と、自問自答して自分を許す僕。
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侵襲的処置のためのワーファリンの中止

2015年07月14日 | 消化器・血液
Clark NP, Witt DM, Davies LE, et al.
Bleeding, Recurrent Venous Thromboembolism, and Mortality Risks During Warfarin Interruption for Invasive Procedures.
JAMA Intern Med. 2015 Jul 1;175(7):1163-8. PMID: 26010033.


アメリカはコロラド州の医療データベースを用いた後ろ向き研究。ワーファリンを飲んでいたけど侵襲的処置もしくは手術のために中止された1178例。ワーファリン投与の理由の半数以上がDVTに対して。ACCPの基準によると約80%が静脈血栓の低リスク群。約1/3がヘパリンでブリッジされ、ブリッジされなかった群と比べて、30日以内の出血の頻度は2.7% vs. 0.2%で、静脈血栓の再発は0件と3件。

最近、ヘパリンブリッジの文献をよく見かける。
簡単にまとめると、
・血栓のリスクが高くなければワーファリンを止めてブリッジをしない
・手技による出血のリスクが高くなければワーファリンを止めない
・血栓のリスクも出血のリスクも高い時のみ、ワーファリンを1週間くらい前に止めてヘパリンでブリッジ
境界線をどこに引くかは今後の研究。

なんか、ワーファリンの文献ばかり紹介しているけど、別に好きだからじゃないのよ。メジャー雑誌によく載っているからなのよ。
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消化管出血の輸血の閾値

2015年07月13日 | 消化器・血液
暑くなりましたな。まだ夜はそんなに暑くないからいいけど。
今年の快眠グッズは何にしようか思案中。

Jairath V, Kahan BC, Gray A, et al.
Restrictive versus liberal blood transfusion for acute upper gastrointestinal bleeding (TRIGGER): a pragmatic, open-label, cluster randomised feasibility trial.
Lancet. 2015 May 5. pii: S0140-6736(14)61999-1. PMID: 25956718.


イギリスの6施設の消化管出血936例。施設を3つずつ2群に分けて、赤血球輸血の閾値を8g/dl以上か10g/dl以上かで比較。Primary outcomeは研究へのリクルートメントの比率とか、プロトコル遵守率とか、Hbの推移とか、輸血の頻度とか、選択バイアスとか。再出血や28日死亡率も一応は見たけど有意差なし。

"pragmatic, open-label, cluster randomised feasibility trial"って、ずいぶん修飾語が多い。これ、つまりはphase IIIをやるための情報収集を目的とした研究。結論は、やれそうだね、こういうRCT。

NEJMの2013年にこの話題についての研究が載ってたけど、そうそう、これってsingle centerだったんだね。今時、それでもNEJMに載るのね。それだけ情報が少なかった、もしくはインパクトがあったということだろうか。

残念ながら、Phase IIIについての情報はあまり記載されていない。ま、楽しみにしていましょう。
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PPIとAMI

2015年06月18日 | 消化器・血液
PPIには副作用がたくさんあるねシリーズ。
PPIとH2BとVB12
PPIと間質性腎炎
PPIが消化管出血を増やす?

Shah NH, LePendu P, Bauer-Mehren A, et al.
Proton Pump Inhibitor Usage and the Risk of Myocardial Infarction in the General Population.
PLoS One. 2015 Jun 10;10(6):e0124653. PMID: 26061035.


スタンフォード大学の290万例のデータベース。そのうちGERDが約7万例、さらにそのうちの46%にPPI、18%にH2Bが投与されていた。PPIの使用はAMIの発生頻度を1.16倍に増加させ、その増加はクロピドグレルの投与の有無とは関係がなかった。H2BはAMIの発生を増加させなかった。
とても読みにくい文献なのでよく分からんが、とりあえずこんな内容らしい。
ついでに、PPIはNOの合成阻害に関連するらしい。

ICUにおけるストレス潰瘍予防において、PPIがH2Bに勝ることが証明されるか、もしくは世の中のICUで予防目的のPPIが処方されなくなるまで、こういう文献紹介は続けます。
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非心臓手術後の輸血

2015年06月17日 | 消化器・血液
Abdelsattar ZM, Hendren S, Wong SL, et al.
Variation in Transfusion Practices and the Effect on Outcomes After Noncardiac Surgery.
Ann Surg. 2015 Jul;262(1):1-6. PMID: 26020111.


アメリカのミシガン州の52病院で行われた非心臓手術症例48720例のデータベース。術後72時間以内に4.6%で輸血が行われた。Propensity matchingにより、術後の輸血は死亡率を3.6%増やし、合併症の発生を4.4%増やした。ただし、術後の心筋梗塞の発生は3.5%減らした。各施設における輸血前のヘモグロビン値の中央値は6.5から9g/dlと幅があり、輸血の多い施設では死亡率が高かった。

Editorialによると、輸血の閾値についての大きなRCTはこれまで8つ行われていて、そのうち高い閾値で輸血した方が予後がいいという結果になった研究はなく、3つで低い閾値の方がいいという結果だった、と。
じゃあなんで今更この観察研究がメジャーな外科雑誌に載ったかというと、非心臓手術についての研究は少ないからだそうだ。

輸血ねー。
なんか、複雑になってしまった。こんなことも言われちゃうし。
TRICCしかなかった頃が懐かしい。。。
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栄養の過少投与の許容

2015年05月25日 | 消化器・血液
Arabi YM, Aldawood AS, Haddad SH, et al.; PermiT Trial Group.
Permissive Underfeeding or Standard Enteral Feeding in Critically Ill Adults.
N Engl J Med. 2015 May 20. [Epub ahead of print] PMID: 25992505.


サウジアラビア(珍し!)とカナダ(普通!)の7施設、ICU入室後48時間以内に経管栄養が開始された894症例。最長14日間、投与目標量の栄養(70-100%)を投与するか、過少投与(40-60%)を許容するかでRCT。ただし蛋白質は追加して目標量を投与。Primary outcomeは90日死亡率。平均投与量は71%と46%、蛋白質投与量は同じ、90日死亡率は28.9%と27.2%で同じ。

栄養の最近の流れは、多く投与しすぎると有害かも、しばらくなら少なめでもいいかも、でも蛋白質はちゃんと投与したほうがいいかも、なので、この結果は想像通りといえば想像通り。
ただ、これを臨床に応用しようとすると、蛋白質の投与がちょっと難しいか。

詳細はジャーナルクラブで。

そうそう、NEJMにもう一つ、腹膜炎の抗菌薬の投与期間は短くてもいいよ、というのが載っている。ただ、ICU症例には限っていなくて、APACHE IIは10くらいなので、随分軽症。ちょっとこのままICU患者には使えない感じ。
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ショック患者の栄養

2015年05月13日 | 消化器・血液
ということでICMシリーズ3つ目

Reignier J, Darmon M, Sonneville R, et al.
Impact of early nutrition and feeding route on outcomes of mechanically ventilated patients with shock: a post hoc marginal structural model study.
Intensive Care Med. 2015 May;41(5):875-86. PMID: 25792207.


フランス、人工呼吸を72時間以上必要として、挿管後48時間以内に収縮期血圧が90mmHg以下になった成人3032例。挿管後48時間以内に何らかの栄養が投与された症例は死亡率が低く(28日でHR 0.86)、VAP発生率が高かった(7日でHR 7.17)。経静脈投与に比べ経管投与は少しだけVAP発生率が高かった(HR 1.11)。早期に達成したカロリーが20kg/kg/day以上か以下かで死亡率及びVAP発生率に影響はなかった。

投与経路や投与量に関係なく、早期に開始したら予後は良くなってVAPが増えたよ、という研究。単純に、面白い結果。この結果を信じると、ICU患者にはチョロっとハイカリを繋げておけばとりあえずOK、ということだもんね。

興味のある人はじっくり読んだらいいと思うけど、個人的にはしない。自分のプラクティスには影響しないから。ただ、栄養って本当に難しいなーと思う。
栄養はこうするべき、という言い方をする人をたまに見るけど、ちょっとそれは言い過ぎだろーなーと思うことが多い。
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ICU患者のストレス潰瘍

2015年05月12日 | 消化器・血液
ICMシリーズの二つ目。

Krag M, Perner A, Wetterslev J, et al.; SUP-ICU co-authors.
Prevalence and outcome of gastrointestinal bleeding and use of acid suppressants in acutely ill adult intensive care patients.
Intensive Care Med. 2015 May;41(5):833-45. PMID: 25860444.


欧米11カ国97ICUで行われた、1週間の横断研究、1034例。そのうち、胃酸分泌抑制薬は73%に投与されていた。臨床的に重要な消化管出血(吐血とかNGが赤かったりとかして、かつショックになったり輸血が必要になったり)は27例(2.6%)に発生。そのほとんどはICU入室後5日以内に発生。関連する因子は、慢性疾患の数が3つ以上(オッズ比8.9)、肝疾患の既往(OR 6.9)、凝固異常の既往(OR 5.2)、新たな凝固異常(OR 4.2)、胃酸分泌抑制薬の使用(OR 3.6)、臓器不全数(OR 1.4)などだった。消化管出血の発生の調整死亡率に対するオッズ比は1.7で、有意ではなかった。

結論は、消化管出血は少ない、その割に胃酸分泌抑制薬が多く使用されている、リスク因子はICUでの患者さんの状況よりも既往歴の関与が大きい、死亡には影響しない、と。

多施設とはいえNは少ないし、こういう研究から何かを言うのは難しい気もするけど、とりあえず感じるのは、1990年代に一応の決着を見たストレス潰瘍予防は、時代が経過していろいろ状況も変化したので、考え直した方が良さそうかも、ということかな。

それにしても、これは完全に個人の感想だけど、20年前に比べてICUで発生する消化管出血は随分減った気がする。仮にそれが正しいとして(それを示唆するデータもあったような)、何が一番変わったかな。すぐに思いつくのは経管栄養の使用頻度が増えたことか?
で、明日は栄養の話。
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