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超級龍熱

香港功夫映画と共に

されど歴史的真実は揺るがず。勝者は李小龍!伍允龍&夏雨主演「Birth of the Dragon」を観る!!

2017-12-10 18:58:40 | 作品レビュー

今週は某映画雑誌から2017年のベスト10原稿の依頼が来まして、今年観た映画を色々と思い出しながらの原稿執筆が続いています。
でも今年の龍熱のベスト1映画は・・・そう、あの映画でもう決まりでしょう!?(^。^)。

さてさて、そんな中ですが、ちょっと前にDVDを入手しながらどうしても観る気が起きなかった伍允龍&夏雨主演「Birth of the Dragon」(17)を観てみました。(と言いながら、何時も私をサポートしてくれている友人の好意に心から感謝です(^_^))
1960年中盤のサンフランシスコを舞台に李振藩(伍允龍)とウォン・ジャックマン(夏雨)、2人の武道家の出会いと束の間の友情を描いている本作ですが、リーさん信者なら当地で西洋人に武術を教えるリーさんを快く思わない中国人社会が白鶴拳の名手ジャックマンを刺客としてリーさんの道場に送り込み、2人の決闘はリーさんがジャックマンに数分で勝利し終わったエピソードはご存知かと思います。
例えそこに幾つかの細かい相違があったとしても、リーさんが決闘の勝者である事は現在まで私も含めた世界中の人たちの共通認識である事に間違いはないわけです。
ところがこの「Birth of the Dragon」は、その歴史上の事実に思い切り大胆な解釈を加えていて、リーさんこと李振藩の白人の弟子スティーヴ・マッキ―(ビリー・マグナッセン)の視点を通じてリーさんを好戦的で尊大な武道家として描き、逆にジャックマンを思慮深く謙虚な人間として描く事で、決闘の敗北者であるウォン・ジャックマンという武道家の名誉回復を試みようとしている映画だと感じました。
それは実際の2人の決闘開始直前にジャックマンからリーさんに闘いの際の“禁じ手”要請があった事実を劇中では妙にアッサリと描いていたり、実際は決闘が開始されすぐにリーさんの猛攻に劣勢となったジャックマンが道場内を逃げ回り、それをリーさんが追っ駆けまわした事実を劇中では冷静さを失ったリーさんが華麗に舞い踊る(オイオイ?)ジャックマンを階段を駆け上がりながら追い回す、という奇天烈な展開に変えていたり、実際はリーさんに押さえつけられ「降参か?」とリーさんに問い詰められたジャックマンが「降参だ!」と敗北を認めた決着を劇中ではジャックマンが“別の事柄”が理由で颯爽と敗北を認める(ってもしもし?)、などなど何とも強引かつ巧妙な事実操作的演出が見られる事からも明らかです。
と、ここまで厳しい評価が続いた本作ですが、ことリーさんこと李振藩に扮した伍允龍が劇中で披露するクンフーアクションはそのリアルで切れ味鋭い詠春拳をベースとした振藩功夫として十分に合格点を進呈出来ると思います。
これは本作のアクション・デザイナーを担当した元奎の功績であると共に、私はこの「Birth of the Dragon」を李小龍の伝記映画としてはNGながら、詠春拳をモチーフとしたクンフー映画の佳作としてならそれなりに評価出来ると言いたいですね。
また香港クンフー映画ファンには映画の序盤の少林寺のシーンで「少林寺」(82)シリーズでお馴染みの干海師父や太極拳高手役で吳樾が顔を見せている点もチェックです。

私はこの「Birth of the Dragon」を観ながら、脳裏にある1冊の本を思い浮かべていました。それは増田俊也著「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」でした。
この本も“昭和の巌流島決戦”と言われた試合で柔道家の木村政彦がプロレスラーの力道山に惨敗した事実を柔道関係者である著者が敗者である木村政彦の名誉回復を図ろうと形振り構わず奮闘した、ある意味涙ぐましい本でした。
でも相撲出身のプロレスラー力道山が柔道家の木村政彦に勝った事実は変わらないし、私たち日本人は既にそれを歴史的事実として完全に受け入れているのです。
もう一つ私がこの「Birth of the Dragon」について最も言いたい事を書いておきます。
この「Birth of the Dragon」には李振藩、いえ李小龍という人間の人生にとって最も大事な人間が抹消されています。それが故に私はこの映画をリーさんの伝記映画として認める事が出来ません。
それは誰なのか?その人こそ李小龍夫人であるリンダ・リーです。リーさんの人生を描く伝記映画にリンダ・リーが登場しない。
例えそこにどんな事情や理由があったとしても、それではリーさんの人生を正確に語る事は出来ませんし、ましてリーさんvsウォン・ジャックマン戦の真実を語る資格もないのです。
何故ならリンダさんこそリーさんvsジャックマン戦の現場に居合わせた歴史の目撃者の1人だからです。それはリンダさんが書いた著作「ブルース・リー・ストーリー」の第4章を読めば明らかでしょう。
同じリーさんの伝記映画であるロブ・コーエン監督作品「ドラゴン:ブルース・リー物語」(93)は、そのリンダさんと同じように美しく聡明なローレン・ホリーが最愛の夫であるリーさんの生涯を深い愛情と限りない敬意を込めて語ったからこそ不滅の名作と成り得たのです。
最後に、私こと龍熱がリーさんこと李小龍vsウォン・ジャックマン戦について、リンダ夫人と本作「Birth of the Dragon」の監督ジョージ・ノルフィのどちらを信じ、また支持するか?と訊かれたら、私は迷う事なく「リンダさんを信じる」と答えるでしょう。
何故なら、リンダさんことリンダ・エメリーこそ、私たち世界中のリーさん信者が敬愛する“闘神”李小龍がその32年の生涯で心から愛し、そして信じた、たった1人の女性だからです。

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