
李小龍がアメリカから香港に帰国し、主演クンフー映画を次々と大ヒットさせ東南アジア一帯で大スターとなりながらも、絶えず熱望していたのがハリウッド映画界への帰還であった。
そしてそのリーさんが待ち望んでいたハリウッドからの使者が「死亡遊戯」五重塔は“虎殿”セットでダン・イノサントとのヌンチャク戦を撮影中のリーさんを訪れる。
そう、後の「燃えよドラゴン」(73)のプロデューサー、フレッド・ワイントローブである。ご覧の“虎殿”セットでリーさんがワイントローブ、リンダ夫人、チョウ社長と並んで記念写真に収まっている有名な1枚。この写真でワイントローブの隣で笑顔で写真に収まり、リーさんとも和やかに談笑する金髪の美しい美女。この女性は果たして誰なのか?
長年に渡りその素性が不明だったこの金髪美人だが、以前に国内のリーさん翻訳本に名前だけが1箇所記載されたものの、その詳しい素性は不明で終わっていた。
だがこの女性こそ龍熱たち昭和世代の人間なら誰もが愛するあの伝説のサーフィン映画を世に送り出した女性だったのである!!
この女性はアレクサンドラ・ローズ。通称アレックス・ローズ。この「死亡遊戯」のセットを訪問した前後にワイントローブと結婚しワイントローブ夫人となった女性である。
アレックスは1946年1月20日アメリカはウィンスコン州生まれ。父親が銀行家の家に生まれたアレックスは大学卒業後にフランスに渡り、そこで映画業界に入ると秘書兼翻訳担当としてキャリアをスタートさせる。
アメリカに帰国したアレックスはロジャー・コーマンの許で映画配給などのノウハウを学ぶと同時にマーティン・スコセッシ、ポール・シュレイダー、ブライアン・デ・パルマ、ジョン・ミリアスら著名な映画人たちと知り合う。
アレックスはデ・パルマの元彼女だったタマラ・アセイエフと友人となり、その2人が共同製作した作品こそがジョン・ミリアス監督作品「ビッグ・ウェンズデー」(78)である!!
そう、私たちリーさん信者たちはリーさんと「死亡遊戯」のセットで邂逅を果たしていた女性が製作した作品とは全く知らずに伝説の巨大波に挑む3人の男たちの大傑作サーフィン映画に感動の涙を流していたのだ。
当時ハリウッドでも女性の映画プロデューサーは大変珍しく、自分のオフィスを訪れて来たアレックスとタマラを見た映画監督のマーティン・リットは秘書に思わず「あの女優たちは誰だい?」と問い質したと言う。
そしてそのアレックスたちがリットに監督を依頼したのが“女性版「ロッキー」”と言われるサリー・フィールド主演「ノーマ・レイ」(79)であった。
この「ノーマ・レイ」は第52回アカデミー賞で見事主演女優賞を受賞し、それによりプロデューサー、アレックス・ローズの名は世界中に広く知られる事となる。
だがその当時も誰1人としてアレックスに1972年の9月に香港でアレックスが会っていた偉大なドラゴンの思い出について尋ねる人間はいなかったのである・・・。
その後もアレックスは「恋のじゃま者」(86)や「恋のためらい」(91)などの優れた作品を世に送り出している。
アレックスとフレッド・ワイントローブの結婚は1974年から1984年まで続いたが、その間もその後もアレックスが李小龍について公の場で語る事は殆ど無かった。
李小龍と同時代に映画界を生き、今も誰もが愛する究極のサーフィン映画を世に送り出した女性映画プロデューサー、アレックス・ローズ。
果たして「死亡遊戯」は“虎殿”セットで李小龍とアレックスの2人は顔を寄せ合い何を語り合ったのか?
その会話を何としても知りたい!と熱望するのは決して龍熱だけではないはずである。
以無法為有法!以無限為有限!死亡的遊戯無敵也!
Bruce Lee with beautiful Alex Rose at Game of Death set.
Alex was wife of Fred Weintraub around that time and great and first Hollywood female movie producer of Big Wednesday and Norma Rae.