
遂に大観衆、そして健太(声:野沢雅子)たち「チビっ子ハウス」の皆にその素顔を明かしたタイガーマスクこと伊達直人!
健太「俺の・・俺の大好きなタイガーがキザ兄ちゃんだったなんて・・!」
タイガー、いや直人(声:富山敬)はリング下で串刺しになった虎のマスクを掴み、ユックリとリングに戻ると、流れる涙を拭う事なくリングに立ち尽くし、悲しみに満ちた笑い声をあげるのだった・・。
直人「ハッハッ・・ハッハハハ!アッハハハハ!」
それを見ていたタイガー・ザ・グレート(声:鈴木泰明)もタイガーを追ってリングに戻ると、素顔となった直人を憎々しげに嘲笑。
グレート「フン!とうとう“兜”を脱いだか?」
直人「・・黙れ!」
直人は手にした虎のマスクをグレートの胸板に投げつける!グシャッと音を立ててマットに落ちる虎のマスク!
直人「グレート!これからが本当の勝負だ!いくぞおぉ!!」
直人は自らロープに飛ぶと、四角いジャングルを疾走し、そのままグレートに突進!
しかし直人は突進すると見せかけ、身構えるグレートのマスク越しの両目に2本の指を突き立てる!
グレート「グワアァァァ!?」
両目を抑え激痛に悶えるグレートの両足を掴んだ直人は、そのままグレートの急所をコーナーの鉄柱に力の限りにメリ込ませる!!
グレート「ウグワァァ!と、とうとう正体を現したな!?“黄色い悪魔”め!」
直人「黙れ!“虎の穴”から貰った物を全て貴様に叩き返してやる!そして俺は伊達直人に戻るのだ!」
タイガーマスクこと伊達直人が封印していた“黄色い悪魔”を自ら解き放った時、そのタイガーの怒りと悲しみが込められた猛反撃の前にグレートが誇る“3つのミラクル”は無残にも崩壊していく・・!
直人とグレートは、そのまま場外戦になだれ込み、直人はゴングをグレートの頭に叩き着け、電話線でグレートの首を締め上げ、真っ二つに折れた板をグレートの背中に突き刺す!
そう、全てを失った“虎の穴”の裏切り者による“虎の穴”の支配者への制裁が始まったのだ!
直人「食らえ!トアァァ!」
グレート「グギャアァァァァァ!!」
健太「す、すごい反則だ・・」
若月先生(声:中川謙二)「そうか、もう直人君はこの「チビっ子ハウス」に帰って来ないつもりなんだ・・」
もはや帰る安らぎの場所を失った悲しみの虎は、場外でパイプ椅子を持ちグレートと椅子と椅子を激しく打ち付け合う!!それをただ呆然と見つめる超満員の観客たち。
ガバァ!グシャ!ガバァ!グチャ!ガバァ!グシャ!場内には直人とグレートがお互いの椅子で身体を叩き合い打ち合う音が延々と鳴り響く!!バキィ!一瞬、グレートの一撃が直人の頭部にヒットし、その衝撃で片膝をつく直人!
それを見たグレートは渾身の力で直人の頭部に再度パイプ椅子を振り下ろす!しかし!
一瞬早く直人の椅子がグレートの片足に叩き込まれ、その一撃がグレートの足を完全に破壊!凄まじい激痛に絶叫するグレート!
グレート「グオアァァァァ!」
ここでグレートが片足を破壊され戦闘不能状態となった事で、事実上タイガーマスク対タイガー・ザ・グレートの一戦は勝負が決したと言える。だが、孤児として“虎の穴”に誘拐され、一切の人権も与えられず過酷なトレーニングの果てに“虎の穴”の飼い犬レスラーという残酷な人生を強いられた伊達直人にとって、“虎の穴”の完全壊滅=タイガー・ザ・グレートの死あるのみなのである!
バサッ!直人はタイガーマスクの象徴である虎のマントをグレートの頭から被せ、ジャイアントスイングで振り回し、そのままグレートをリングを照らす照明目掛けて力一杯投げつける!!ドガァ!ガチャガチャ!グシャァ!
既に絶命寸前のグレートはリング頭上の照明に虎のマントごと突っ込み、哀れそのまま逆さに宙吊り状態となる!直人はリングに舞い戻ると、逆さ宙吊り状態のグレートの首に飛びつき自分の全体重をグレートの首にかけたネックシザーズで絞め上げる!
直人「どうだ!グレート?苦しいか!これが貴様たち“虎の穴”に叩き込まれた反則だぁぁ!」
グレート「ググ・・グエェ・・!」
リング上で繰り広げられるこの戦慄の地獄絵図に観客たちは一斉に声を失い、ただひたすらリング上を凝視するのだった!!
その頃、夜の「チビっ子ハウス」の庭で、ルリ子(声:山口奈々)は1人ブランコに乗り、寂しげに歌を口ずさんでいた。
ルリ子「もう直人さんはここには帰って来ない。死ぬ覚悟なんだわ。でも直人さん、死なないで!」
再び決戦の試合会場。辛うじて照明にぶら下がった状態でグレートの首を執拗に絞め上げる直人を観客たちは凍り付いたように見つめていた。
猪木「馬場さん!?」
馬場「うむ、これはいかん!」
ジャイアント馬場(声:兼本新吾)とアントニオ猪木(声:中曽根雅夫)はリングに飛び込むと、逆さ吊り状態の直人をグレートから引き離そうとするが・・!
馬場「タイガー!落ち着け!離れるんだ!」
直人「馬場先輩!離してくれ!離せ!」
猪木「ああっ!照明が落ちるぞ!」
馬場「タイガー!危ない!逃げろー!」
次の瞬間!巨大な照明は“虎の穴”の支配者ごと轟音と共にマットに大落下!
間一髪、落下寸前にネックシザースを解きグレートから離れマットに着地した直人は、駆け寄って来た馬場と猪木と共に巨大な照明の下敷きとなり、今まさに息絶えようとしているタイガー・ザ・グレートを見つめるのだった・・!
グレート「お、おのれ!・・貴様如きにこの私が!この私がぁ!ゲボボォ!・・グハッ!」
直人「・・・」
国際格闘技犯罪組織“虎の穴”の壊滅を見届けた直人はマットに落ちている虎のマスクを拾い上げると、馬場と猪木を残しリングを飛び下り、そのまま花道を走り去るのだった。
健太「ねえねえ!ルリ子ねえちゃん!キザ兄・・じゃなくて直人兄ちゃんは今度いつ来るの?」
ルリ子「直人さんはもうここには来ません」
健太「どうしてさ?ねえ!どうして?」
ルリ子は自分にすがりつく健太ら孤児たちを強く抱き締めると、夜空から「チビっ子ハウス」を優しく見下ろす美しい星々を見上げ、きっと今頃は傷つきボロボロになった身体と共に飛行機のタラップを上がっているであろう直人にこう固く誓うのだった。
ルリ子「直人さん、貴方の命懸けの闘いを決して無駄にはしません。この子たちをきっと幸せにして見せます!だから直人さん、早く帰って来て!」
大門大吾の墓に“虎の穴”壊滅を報告し、ケン高岡に自分の虎のマスクを託した伊達直人は、飛行機のタラップを一段一段上りながら・・
直人「俺は長い間子供たちを欺いて来た。そしてグレートを倒すために反則で立ち向かった。だがルリ子さんや子供たちはきっと分かってくれるだろう。俺の命懸けのファイトを、悪に立ち向かう勇気を、きっと分かってくれると思う。俺が再び帰って来る頃、子供たちはきっと正しい心を持った人間に成長してくれるに違いない!」
命懸けのファイトで邪悪なる虎を倒した心優しき虎がいま1人静かに去っていく。さらば伊達直人!さらばタイガーマスク!虎だ!虎だ!お前は虎になるのだ!!
今回「龍熱的空想特撮浪漫」でこの「タイガーマスク」を特集、それも連続ドラマ形式で取り上げた事に、もしかしたら戸惑いを感じた方もいらっしゃったかも知れません。
それに対する答えになるかどうかは分かりませんが、香港功夫映画評論家である私こと龍熱のこれまで20年以上に渡る執筆活動のその殆どがクンフー映画の原稿でした。
ただその執筆活動の道程において、僅か2回だけクンフー映画以外の原稿を書いた事があります。それがまだムック時代の「映画秘宝」に町山智浩さんからの依頼で書いた「タイガーマスク」最終回であるこの第105話「去りゆく虎」と、アートポート配給のタイ映画「マーキュリーマン」の劇場パンフレットでした。
それほど私にとってこのアニメ版「タイガーマスク」、特に終盤の3人タイガーから最終回タイガー・ザ・グレートのパートは、子供の頃に初めて観て以来、今日この日に至っても、文字通り強烈な思い入れがある作品なのです。
その感動と興奮を、いま1度この「龍熱的空想特撮浪漫」で皆さんと共有したい!
それが今回の連続ドラマ形式での特集となりました。
私が子供の頃にこの「タイガーマスク」終盤の圧倒的な完成度にして壮絶なドラマを観た時に感じた感動と興奮を、同じく皆さんにももう1度思い出して頂けたら幸いです。
虎だ!虎だ!お前は虎になるのだ!タアァァ!
Now real face of Tiger Mask is finally revealed.
A scene from legendary final episode of Tiger Mask.
最後まで読んで頂きありがとうございました。
私も「タイガーマスク」の3人タイガーからグレートまでの終盤は何度見ても感涙の連続です。ありがとうございました(^_^)。