慢性腎不全の甘露飲加減による漢方治療を終え、今回より解毒活血湯加減の医案を紹介します。( )内に私の注釈を加えます。
患者:林某 58歳 男性
初診年月日:2005年6月20日
主訴:腰痛、乏力2ヶ月余
病歴:
2ヶ月前に腰痛、乏力が出現、尿検査にて蛋白(2+)、腎機能:Cre400μmol/L(4.52mg/dl)、ヘモグロビン7.0g/dl、診断「腎不全」対症療法2ヶ月、効果不十分。6月1日、下痢、尿量減少、病情加重、再検査でCre680μmol/L(7.68mg/dl)と上昇、腰痛、乏力加重し、嫌食が出現、尿少など諸症状あり。龍胆瀉肝丸服用歴4ヶ月。
初診時所見:
腰痛、乏力、嫌食、尿少、咳嗽、痰に血が混じる。舌質淡紅、苔薄白、脈弦。腎機能:Cre908.1μmol/L(10.26mg/dl)、BUN31.25mmol/L(187.5mg/dl)、ヘモグロビン9.5g/dl、尿蛋白(+)、尿潜血(2+)。
中医弁証:濁毒内蘊、血絡瘀阻。
西医診断:慢性間質性腎炎、慢性腎不全(尿毒症期)
治法:解毒 活血 化濁瀉熱
方薬:解毒活血湯加味:
桃仁15g 紅花15g 赤芍15g 生地黄20g 連翹20g 黄芩15g 黄連15g 大黄10g 草果仁15g 半夏20g 陳皮15g 金銀花30g 甘草15g
七剤、水煎服用 1日1剤 二回に分けて服用。
二診 2005年6月28日
服薬4剤で、咳嗽、痰に血が混じる症状は消失、尿量も増加した。継続服用3剤で、諸症は引き続き好転、食欲不振のみが残った。舌質淡紫、舌苔白膩。濁毒が上逆し犯胃によるものであり、活血化瘀剤に加え、半夏瀉心湯を以って昇清降濁した。
方薬:
桃仁20g 赤芍15g 丹参20g 紅花15g 半夏20g 川黄連15g 黄芩15g 生姜15g 党参15g 陳皮15g 茯苓15g 甘草15g 大黄10g 草果仁15g
七剤、水煎服用 1日1剤 二回に分けて服用。
(内科適要の半夏瀉心湯の原方では半夏 黄連 黄芩 乾姜 人参 大棗 甘草の配伍ですが、乾姜を生姜に変え、大棗は除き、人参は平の党参を用いています。辛開苦降の作用による和胃降逆の方剤です。)
三診 2005年7月4日
初診、二診の計14剤服用後、病情は顕著に好転、Creは減少した。腰酸、乏力、倦怠、大便3回/日。舌質淡紅、舌苔薄白、脈弦。Cre669.3μmol/L(7.56mg/dl),
BUN22.44mmol/L(134.64mg/dl)。ヘモグロビン8.9g/dl、RBC288万。標の邪が減じ、本虚が主として現れたものであると判断し、補脾益腎、兼化濁活血を以って治療する。
方薬:六味地黄丸加減:
熟地黄25g 山茱萸20g 山薬20g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15g