慢性腎不全の治療の大綱は益気健脾補腎、通腑泄濁、活血化瘀、清熱解毒祛湿であることに変わりは無いようですが、自覚症状の改善目的には降逆止嘔、濁湿化熱防止、腰痛の軽減などが必要です。どのような順序で治療するのかが課題なのです。本日も飽きないで張琪氏の医案を紹介します。
患者:孫某 53歳 女性
初診年月日:2005年8月23日
主訴:全身乏力2年間
病歴:
2年前、疲労が重なった後に乏力出現、ヘモグロビン6.0g/dl、2004年7月腎機能検査:Cre780.9μmol/L(8.82mg/dL)、二酸化炭素結合力16.6mmol/L、診断“腎不全”。2005年8月:Cre710μmol/L(8.02mg/dL)。中医治療を求めて氏を受診。
初診時所見:
全身乏力、納少、腰酸、顔面少華、唇白色淡、大便1回/日、舌質淡、苔白、脈弦細。ヘモグロビン9.7g/dl、Cre640.8μmol/L(7.12mg/dL)、BUN20.96mmol/L(125.76mg/dL)。超音波検査:双腎萎縮。
中医弁証:脾腎両虚 濁毒内蘊
西医診断:慢性間質性腎炎 慢性腎不全
治法:補腎健脾 活血化濁
方薬:
熟地黄25g 山茱萸20g 巴戟天15g 肉蓯蓉15g 女貞子20g 淫羊藿15g 枸杞子20g 山薬20g 白朮20g 茯苓20g 黄耆30g 党参20g 鶏内金15g 砂仁15g 陳皮15g 紫蘇15g 桃仁20g 丹参20g 川芎15g 紅花15g 大黄10g 黄連15g 黄芩15g 甘草15g 当帰20g 生姜15g
水煎服用 1日1剤。
(付記:熟地黄から党参までと当帰はいわゆる補薬群です。鶏内金は消食、砂仁 陳皮は行気和中化湿、桃仁から紅花までは活血化瘀薬、大黄は通腑泄濁、活血に作用し、黄芩 黄連は清熱解毒燥湿に働きます。以上から標本兼治の意味合いの方薬組成になっています。)
二診
服薬14剤後、まだ倦怠乏力、発熱無し、納尚可、時に咳嗽あり、舌淡、苔白、脈細、血圧115/70mmHg、症状寛解は不明瞭、化濁活血解毒を主とする。
方薬:
桃仁20g 赤芍20g 丹参20g 川芎15g 枳実15g 厚朴20g 大黄15g 生地黄20g 山茱萸20g 枸杞子20g 女貞子20g 巴戟天15g 肉蓯蓉15g 黄連15g 黄芩15g 金銀花30g 桔梗15g