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慢性腎炎の漢方治療 第81報 紫斑病性腎炎の漢方治療 医案2

2013-03-25 00:15:00 | ブログ

??氏医案 陰傷動血案

(現代名中医小児科絶技より)

患者李某某 12歳 男児

初診年月日19898

病歴19893月 下肢に紫斑が出現。初めは両腿部に最も甚だしく、次に、胸腹部に広がったが、1週以内に紫斑は消失、その後すぐに肉眼的血尿が生じ、地元の病院で、尿検査;PRO(2+)、RBC(4+)/HP、紫斑病性腎炎と診断され、中西薬治療を受けたが効果が緩慢で、氏を受診した。

初診時所見

両下肢に少量の紫斑あり、色は淡で、時に鼻血、大便はタール様。尿検査:PRO(2+)RBC多数/HP、舌質淡、苔薄黄、脈沈細。

青紫湯 加黄耆15g 阿膠(烊)9gを与えた。

具体的方薬:青黛3g 紫草9g 白及9g 乳香6g 沢蘭15g 澤瀉30g 益母草15g 生山楂15g 生山薬15g ?尾草fèngwěicǎo10g 倒扣草dǎokòucǎo9g 生地12g 黄耆15g 阿膠(烊)9g

水煎服用 日に1剤 早晩温服

経過:連続して加減しながら30剤を服用して、患者の症状は消失、尿検査、PRO(蛋白)(-)RBC消失。(つまり尿所見が正常化した)

補講:聞きなれない生薬2つを紹介します。日本では流通していません。

入手困難ですので起源は省略します。薬性 帰経 効能のみにします。

?尾草(ファンウェイツァオ)

味淡 微苦寒 大腸心肝 清熱利湿 涼血止血 消腫解毒

倒扣草(ダオコウツァオ)平とする説と、涼とする説があります。

清熱 解表 利水 活血に作用し、腎炎の治療薬としては主に広州地域に多く報告があるようです。

評析

紫斑病は秋季に多く、概ね、秋季は「燥」に属し、燥邪が肺を傷し(生熱し)、陰が傷つき(熱邪により)動血が起きやすく、皮膚に外溢すると紫斑が生じる。邪熱が足少陰腎経経脈に入り、腎臓に勢いよく溢れると尿血が生じる。故に治療は「熱 血 肺 腎」に重きを置き、清熱涼血を主として、早期には清肺祛邪、後期には腎陰を守ることである。

本方、青紫湯

青黛は五臓の熱を清し、平肝涼血に作用し

紫草は涼血し、皮膚に到達し、邪気を外に透し

二薬は相伍され、清透内外に作用し、共に主薬である。

加減運用

症状が軽く表証を伴う者:

銀花9g 板藍根12g 白芷6g 焦梔子9gを加味する

(病状が一歩進んで)気営熱証が重い者:

(温薬である)乳香を去り、寒水石15g(石膏の別称) 丹皮9g 犀角粉(頓服)0.5g 玄参9g 生地12gを加味する

タール便を呈し、紫斑の色が淡の者:?(灶心土の別称)15g 乾姜5g 阿膠珠9g 黄耆15g 黄精9gを加味する。

ドクター康仁の印象

出ましたね、久しぶりの止血剤の黄土湯(おうどとう)。

灶心土zào xīn tǔ(ザオシントゥ)黄土高原の黄土のカマドの焼けた土を指すのですが、今の中国には無いでしょうね。昔ならともかく。

黄砂と聞いた瞬間に身震いするくらい嫌なものですが、黄土湯の組成は、灶心土 白朮 附子 生地 阿膠 黄芩 甘草で、便血 吐血 衄(じく) 不正性器出血に用いられ、脾不統血の治方になります。

灶心土が君薬で温中収斂止血に作用します。方剤論では、灶心土 白朮 附子温薬剛燥と、生地 阿膠清熱滋陰で「剛柔相済」となると教えられました。

評析の加減運用中、「タール便を呈し、紫斑の色が淡の者:?(灶心土の別称)15g 乾姜5g 阿膠珠9g 黄耆15g 黄精9gを加味する。」の「乾姜」にはちょいと違和感がありましたが、さすがに大温熱薬の附子は使えないので、乾姜を代わりに配伍させたと思えばうなずけますね。

??氏は広東地域の中医でしょうか?地域性のある薬剤がありますね。

青紫湯 加味方

具体的方薬:青黛3g 紫草9g 白及9g 乳香6g 沢蘭15g 澤瀉30g 益母草15g 生山楂15g 生山薬15g ?尾草10g 倒扣草9g 生地12g 黄耆15g 阿膠(烊)9g

乳香はちょっと使いにくいですね。活血止痛作用が有りますが、外傷性の場合に使用され、本案のような陰傷(生熱)動血案には温薬ですので使うのが躊躇されます。

生山楂は意味不明ですね。

生山薬とは山芋のトロロですから、粘りますね。

全体ではどんな感じの煎じ薬になるのでしょうか?青黛(せいたい)を使うとブルーグリーンの色になりますね。そこに紫が加わり、トロロも入り、阿膠まで入り、乳香の匂いまでする。

30日の間、服用し続けた男の子を褒めてあげましょう。

さて、

来る30日には「神戸医療福祉大学」で「アンチエイジングと漢方」のテーマで講演する予定になっていますが、まだ何の準備もしていないのです。

そろそろ準備しないと。

http://www.kinwu.ac.jp/topics/index.html?id=23726

2013325日 記


慢性腎炎の漢方治療 第80報 紫斑病性腎炎の漢方治療 医案1

2013-03-24 00:15:00 | ブログ

冉雪峰氏医案 熱毒内蘊 迫血妄行案

(当代名医臨床秘訣より)

患者高某某 17歳 男性

初診年月日19875月初診

病歴

1年前、両下肢に紫斑が出現。プレドニゾン治療後紫斑は消失。半年前、プレドニゾンの減量を開始し、2ヶ月前、両下肢が次第に浮腫み、尿は新鮮肉を洗った水のようになり(肉眼的血尿)、??胺(シクロフォスファミド)200mgを隔日に併用するも、治療効果が緩慢で、氏を受診した。

初診時所見

体温36.6CBP120/90mmHg、両下肢水腫、少量の出血点があり、歯肉から血が滲み、舌質暗紅、苔薄黄、脈弦滑、尿検査:PRO(3+),BLD(+),RBC(3+)/HP

治療

脱敏消斑湯を投与。処方以下

艾葉9g 烏梅9g 阿膠(烊)9g 槐花米9g 当帰9g 銀花9g 甘草9g 生大黄6g 黄耆15g 滑石15g 猪苓9g 澤瀉9g 車前子9g 水煎服用 日1剤 早晩分服。

経過

10剤を服用後、患者の水腫は漸退し、出血点は消失した。尿検PRO(3+)RBC(+)/HP。継続服用60剤、患者の症状は基本的に消失、尿検PRO(プラスマイナス)、RBC0~2個/HP、プレドニゾンは漸減し中止となった。

評析

冉氏は烏梅が脱敏の要薬であると認識している。大棗(医案中には無いが)は補気養血、阿膠は止血、当帰は養血活血に作用する。銀花、槐花米を併用し清熱解毒に作用する。離経の血は瘀血であり、大黄を加え化瘀解毒に作用させ、諸薬が相伍し、紫斑病性腎炎の標と本に密接に関係し、清熱解毒、脱敏消斑、補血止血の効能を具有する。

加減運用

発熱者:生地15g 連翹9g 牡丹皮9g 紫草9gを加える

胃腸反応が出現し、臍周囲、下腹部の痛む者:厚朴 枳殻 川楝子 黄柏9gを加える

関節腫張、漿液性の滲出があり、行動困難の者:漢防己 秦艽 牛膝 鶏血藤 元胡9gを加える

痙攣を伴って一時的な意識障害を起こす者:水牛角50g 白僵蚕 鈎藤 天竺黄9gを加味する。

ドクター康仁の印象

ステロイドの減量中にHSPNが出現し、免疫抑制剤を投与した経過ですので、ステロイドの投与量の数値の変化が欲しいですね。

最終的には免疫抑制剤シクロフォスファミドの投与量はどうなったのでしょうか?

元胡は延胡索の別称です。

槐花米は槐花の別称です。軽いですが見た目が米粒に似ています。

天竺黄は清化熱痰薬に属し、甘寒、日本でも手に入りますが高価です。

現在流通している天竺黄は人工的に竹桿を化熱して、節の間に竹瀝(ちくれき)を出させ、自然に凝固したものを取り出して天竺黄としているようです。

ところでグーグル検索をしてみると、

「冉雪峰氏(18781963) 四川省生まれ、医家に育ち12歳で父から医薬を学ぶ。

38歳は湖北武昌で開業 1919年、湖北省の中西医会の会長に選出される。袁世凱政権中投獄の身となったこともある。中医学者同士との連帯、抗日戦争での医療奉仕、人体解剖図譜の製作など、活躍は多彩であった。」とあります。

さて、

本医案の初診年月日は19875月とあるので、冉雪峰氏死後24年後ですから、同姓同名の中医師がいることになります。いてもおかしくはないでしょうが。

烏梅(うばい)とは青梅を燻製にしたもので、煙臭く、名称の由来は烏のように黒いということです。烏梅が脱敏の要薬であれば、丁度今時、酷い杉花粉と黄砂、PM2.5の飛来により、鼻炎、結膜炎、咽頭痛、咳嗽でお困りの方が多いのですが、防御マスクは勿論のことですが、烏梅が効く可能性も無いとは言えないですね。

小学校時代に、校舎を取り巻く梅ノ木の梅の実を児童全員で採った想い出があります。1日授業が無かったので、開放感に溢れていました。

イナゴも授業無しで採っていたなんて信じられますか? 食い物として。

引越しで感じたこと、

物はない方がいい。無ければ無いなりに過ごせるものだ。

60歳をすぎてからの引越しはしない方がいい。疲労と関節痛が残るから。

難民キャンプからはゴミが出ないというが、ゴミの分別には腹が立つ。

家電は安くなった。そのうち廃棄料金の方が高くなるのではないのか?

便所掃除、やってみれば楽なもの。

Made in chinaの多さにあらためて驚く。廃棄料金が高くつく。

安物買いの銭失い。

「桜!」と呼べば「なぁに お兄ちゃん」と答えてくれる妹が欲しかった。

「桜!」と呼べば「一郎さん」と答える女性も。

2013324日 記


慢性腎炎の漢方治療 第79報 紫斑病性腎炎の漢方治療 総論5

2013-03-23 00:15:00 | ブログ

3.治法運用(6)~(7)

(6)健脾補腎、活血化瘀法:脾腎両虚挟瘀証に活用する

臨床症状

全身倦怠、腰膝酸軟、或いは浮腫があり、皮膚の紫斑は消退し、食欲減退、軟便、舌体は胖、辺に歯痕あり、脈は沈細。

症候分析

(素体)脾腎両虚、脾は健運せず、腎は封蔵を失い、全身倦怠、腰膝酸軟、或いは浮腫を見る。

病状は一見安定しているように見えても、やがて次第に虚証が出現する。

結果、脾胃虚弱、納運失常にて食欲減退、軟便が出現する。

舌脈は脾腎両虚の象である。

治方十全大補湯加減

黄蓍 党参 白朮 茯苓 薏苡仁 生地 桑寄生 阿膠珠 猪苓 当帰 赤芍 川芎 沢蘭 益母草 牛膝

方中

黄蓍 党参 白朮 茯苓 薏苡仁は健脾益気に

生地 桑寄生 阿膠珠 猪苓は滋陰利水に

当帰 赤芍 川芎 沢蘭 益母草 牛膝は活血化瘀に働く。

加減

血尿が顕著な者には白茅根 仙鶴草を加味する

浮腫には車前子を加味する。

十全大補湯については過去の記事

十全大補湯の正しい使い方

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20061118

十全大補湯と人参養栄湯

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080206

慢性腎炎の漢方治療 第57報 十全大補湯加丹参

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130226

以上の記事をご覧下されば、理解が深まります。

何故、肉桂(温裏薬)を除いてあるのか?腎炎の弁病論につながる判断です。

白芍赤芍に変更されています。

沢蘭(たくらん)は微温の活血化瘀薬です。

婦人科領域で使用されることが多い生薬です。

中国では顔面のシミの病型を基本的に肝郁 腎虚 脾虚の3主要証型に分類し気血瘀滞を共通の基本病理とする見方が多いといえます。気滞瘀血が関与していると診断された場合に次のような生薬と共に丸薬あるいは煎じ薬として服用されています。

  当帰 鶏血藤 益母草 丹参 蘇木 沢蘭 沢漆 党参

  桑寄生 制香附 制乳香 没薬 牛膝 桃仁 莪朮

以上にて蜜丸、あるいは煎じ薬を作成します。

子宮内膜症の治療生薬でもあります。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080311

(7)滋陰養肝、化濁利湿法:肝腎陰虚、湿濁挟瘀証に活用する

臨床症状

紫斑は消退、眩暈頭痛、腰膝酸困、口咽乾燥、夜間に甚だしく、手足心熱、倦怠食欲不振、悪心し嘔吐しそうになる、舌淡胖、苔白、脈弦細。

症候分析

足蕨陰肝経は頭部をめぐり、足少陰腎経は咽と舌の本に連なる、肝腎陰虚すれば、眩暈頭痛、腰膝酸困、口咽乾燥、夜間に甚だしく、手足心熱を生じる

湿濁挟瘀が中焦に阻滞すると、気機昇降が失常し、倦怠食欲不振、悪心し嘔吐しそうになる

舌脈は肝腎陰虚、湿濁阻滞の象である。

治方杞菊地黄丸加減

生地 枸杞子 女貞子 菊花 山茱萸 桃仁 川芎 半夏 陳皮 厚朴 大黄

方中

生地 枸杞 女貞子 菊花 山茱萸は滋陰養肝に

桃仁 川芎は活血化瘀に

半夏 陳皮は和胃抗逆に

厚朴 大黄は寛中下気降濁に働く。

加減

気虚者には党参 黄蓍を加味する

血尿者には白茅根 槐花を加味する。

杞菊地黄丸については、今更説明は要らないと思います。

大黄の使い方がポイントでしょうね。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130109

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130219

記事は沢山ありますが、興味のある方はご覧下さい。

次回からは、HSPN(紫斑病性腎炎)の医案の解析に入りたいと思います。

今までのHSPNの総論はざっと眼を通しておくと、実際の診療にも役に立つとおもいますし、医案解析にも興味を持って接することが出来るでしょう。

2013323日 記


慢性腎炎の漢方治療 第78報 紫斑病性腎炎の漢方治療 総論4

2013-03-22 00:15:00 | ブログ

3.治法運用(4)(5)

(4)滋陰降火、涼血和絡法:陰虚火旺証に活用する

臨床症状

紫斑が漸退し、時に眩暈腰酸、咽燥喉痛、五心煩熱、尿赤或いは顕微鏡学的血尿、舌質紅、苔薄黄或いは少苔、脈細数。

症候分析

病程が長くなると、火毒の勢いが日々衰え、紫斑が漸退する。

腎陰不足で水不灌木となると虚陽が上亢し眩暈を起こす。

陰虚で津液が上に上らず、虚熱が上擾して咽燥喉痛が生じる

水火失済し、心身は被擾し五心煩熱が生じる

虚熱が腎絡を灼傷し尿血が生じる

舌紅少苔、脈細数は陰虚火旺の象である。

治方知柏地黄丸と二至丸合方加減

知母 黄柏 生地 山茱萸 山薬 澤瀉 茯苓 牡丹皮 女貞子 旱蓮草 茜草 紫草 槐花 赤芍

方中

六味地黄丸(熟地黄は生地黄に変更)は滋補腎陰に

知母 黄柏は清虚熱と腎陰を堅陰し

あわせて滋陰降火の剤となり

二至丸は滋補腎陰、涼血止血に

紫草 槐花は清熱涼血に

茜草 赤芍は活血止血に働く。

加減

尿血の重症の者には、三七側柏葉を加味する。

水腫者には、車前子 益母草を加味する。

(5)益気養陰 活血化瘀法気陰両虚挟瘀証に活用する

臨床症状:疲労倦怠感、感冒にかかりやすい、口干咽干、手足心熱、紫斑は消退するか或いは反復する、舌紅、苔薄黄、脈細数或いは沈細。病程は遷延する。

症候分析

病程が長引いて気虚衛外不固により全身倦怠、感冒にかかりやすい。

陰虚にて口干咽干、手足心熱が生じる。

気陰虚、瘀血阻脈絡、故に紫斑は消退するか或いは反復する。

舌脈は気血両虚の象である。

治方参蓍地黄湯加減

太子参 黄蓍 生地 山茱萸 女貞子 旱蓮草 茜草 仙鶴草 牡丹皮 赤芍 地竜 黄芩 紫草

方中

太子参 黄蓍は益気に

生地 山茱萸 女貞子 旱蓮草 茜草 仙鶴草は滋陰止血に

牡丹皮 赤芍 地竜は活血化瘀に

黄芩 紫草は清熱に働く。

加減

血尿が重い者には、槐花 三七 白茅根を加味する。

気虚が重い者には、太子参を党参にかえる。

参蓍地黄湯加減については、腎炎治療に関して

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130129

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130110

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121224

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121224

以上の他にも紹介していますのでご覧下さい。

今回の講座は特に説明は要らないようです。

教育とは恐ろしいもので、症候分析の四文字熟語はすらすらと私の頭脳に入ってきます。言わば右脳的に感受できるのですが、左脳的に説明するとなると難しいのです。

2013322日 記


慢性腎炎の漢方治療 第77報 紫斑病性腎炎の漢方治療 総論3

2013-03-21 00:15:00 | ブログ

3.治法運用

(3)清利湿熱 解毒活血法:湿毒挟瘀証に活用する。

臨床症状:

身熱は高くないが、汗が出ても解熱しない、胸悶腹張、口渇あるいは渇いても水を多く飲まない。心煩口苦、悪心あり食欲不振、胸、腹、四肢に皮膚紫斑を見る。小便不暢、尿色紅赤、大便不爽或いは大便下血、舌紅苔黄?、脈濡数。

症候分析

湿が肌腠に鬱すると、身熱は高くならないが、汗が出ても解熱しない。

湿熱が内阻し、気機の昇降が失常し胸悶腹張、悪心食欲不振が出現する。

湿熱が壅結し、津液が上らないために心煩熱口苦、口渇あるいは渇いても水を多く飲まない。

湿熱化毒、表に外発し皮膚紫斑となる。

熱毒が下焦に蘊結し、小便不暢、尿色紅赤、大便不爽或いは大便下血となる。

舌紅苔黄?、脈濡数は湿熱内蘊の象である。

注:以上のような中医学用語は、HSPHSPNは漢方を専門に勉強する場合には一通り覚えておかなければならないのですが、一般の方々は「そんなものか」の程度でよろしいと思います。

治方三仁湯加減

薏苡仁 白蔲仁 杏仁 通草 法半夏 陳皮 滑石 竹葉 小薊 赤芍 丹参 白茅根

方中

薏苡仁 白蔲仁 杏仁は宣暢気機、滲利湿熱に

半夏は苦温燥湿に

陳皮は行気和中に

滑石 通草 白茅根 竹葉 小薊は清利湿熱に

赤芍 丹参は活血祛瘀に働く。

加減

寒熱往来する者には青蒿 黄芩を加え

湿毒が比較的重い者には藿香 佩蘭 石菖蒲を加える。

三仁湯(さんにんとう 温病条弁 清代)

杏仁 ? 薏苡仁 竹葉 通草 滑石 半夏 厚朴 

証:悪寒 頭重痛 身体が重い 身熱不(強い熱感があるが体表部を触れても熱が無い)午後熱感が悪化

胸腹痞 張 納呆(食欲不振と同意)悪心 嘔吐 下痢 尿量少 白?苔 濡脈などになりますが、

藿朴夏苓湯と同様に湿温初期の湿重熱軽の状態に用いられます。違いは、辛涼解表薬の配合がないこと、

現代では利水滲出通淋薬として分類されている滑石(甘寒) 通草(甘淡寒) 竹葉(甘淡微寒)の配合です。

尿量を増やし祛湿し、小便から泄熱するという効果が藿朴夏苓湯より若干強い印象があります。

したがって、三焦に瀰漫した湿熱を祛邪する気分証の湿熱留恋(るれん)三焦の治療方剤といわれ、衛気営血弁証の中の

「衛分証(えぶんしょう)」より若干「気分証(きぶんしょう)」寄りになった状態の湿温には藿朴夏苓湯よりも

三仁湯がよいという医家もあります。杏仁は開上焦、薏苡仁は利下焦に、滑石は甘寒で清熱袪湿に作用します。

慢性腎炎の漢方治療 第54報において時振声氏医案で、加減三仁湯を紹介しました。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130223

杏仁10g 薏苡仁10g 白寇仁10g 法半夏10g 厚朴10g 通草3g 淡竹葉10g 滑石30g 茯苓15g の組成でした。

藿朴夏苓湯(かつぼくかりょうとう 医源 湿気論 清代)も紹介しておきます。

杏仁 白寇仁 薏苡仁 藿香 厚朴 半夏 茯苓 淡豆豉 猪苓 澤瀉

証は頭重痛 身体が重い 発熱 腹満痞張 納呆(食欲不振と同意) 悪心 嘔吐 下痢 尿量減少 白?苔 濡脈(浮細軟)などであり、湿盛熱微の湿温初期に用いられます。表証を発散させ湿を除くという意味から宣表化湿が効能とされます。 

方剤中の各中薬の量からは、名前の通り、藿香 厚朴 半夏 茯苓が主薬なのですが、私は「覚えやすいように」杏仁 白寇仁 薏苡仁が先に口に出るようにしています。それは、三仁湯(さんにんとう)でも杏仁 白寇仁 薏苡仁の組み合わせが出てくるからです。開開滲と覚えるのだそうです。

杏仁による         開上焦 

白蔲仁 茯苓による     開中焦 

薏苡仁 猪苓 澤瀉による  滲下焦  となります。

「開く」という文字の感覚が大切で、杏仁は肺、白蔲仁 茯苓は脾を通して、内湿を除去し、薏苡仁 猪苓 澤瀉は利水滲出作用により、さらに湿を除くという意味なのです。芳香化湿の藿香、行気化湿の半夏 厚朴の組み合わせになっていますから、湿を重視した方剤であることが理解できます。淡豆豉は辛涼解表薬です。組成から判断すると、清熱の作用は三仁湯より弱いものです。

藿香 佩蘭については過去の記事に詳説して有りますのでご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121110

フォントサイズを150%に拡大してご覧下さい。

青蒿(せいこう)は退虚熱薬に分類されます。凉血、解暑、截瘧と功能は多様ですが、暑湿を伴い悪心、胸が苦しい、発熱の証に用いるときは、黄芩、半夏の類を配伍し、方剤例として蒿芩清胆湯があります。

http://kojindou.no-blog.jp/happykanpo/cat10351406/

青蒿鼈甲湯については

http://kojindou.no-blog.jp/happykanpo/cat7307895/

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石菖蒲(せきしょうぶ)辛温 開竅 化湿 化痰に作用します。

気が向いたら、下記の記事をご覧下さい。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121127

消化不良を起こしそうですね。本日はこの辺で講座を終わります。

2013321日 記