張琪氏医案 気陰両虚 湿毒内停化熱案
(中医雑誌2001年 第2期より)
患者:9歳女児 1989年6月18日初診。
病歴:
慢性腎炎を1年余患い、中西薬物治療を受けたが完全寛解に到らなかった。時々、眼瞼に浮腫が生じ、尿色淡黄、尿量1日1500~1800ml、排尿後に下腹部の痛みや、腰痛、倦怠感、食欲不振、口が渇く。
張氏診察時所見:
尿蛋白(2+)、WBC3~4、RBC10~20、顆粒円柱0~1。舌質淡紅、苔薄白、脈滑無力。
中医弁証と治療原則:気陰両虚、湿毒内停(化熱の気配)。
益気養陰兼清利湿熱法
処方 以下
黄耆20g 党参15g 蓮子10g 麦冬10g 地骨皮10g 柴胡10g 茯苓10g 益母草20g 白花蛇舌草20g 甘草10g 水煎服用
6月25日 二診
6剤服用後、腰痛倦怠は軽減した。尿蛋白(+)WBC0~1、RBC2~5、まだ食欲は小さい。舌質淡紅、脈滑、薬剤は既に効果があった。以上の方薬から、益母草を去り、黄芩10g 車前子15gを加え、白花蛇舌草は30gに増量して継続服用させた。
7月9日再診
6月25日の方薬を12剤服用にて、腰痛、下腹部痛が消失、眼瞼の浮腫も消失し、体力増強、尿末梢血生化学検査で、たまに蛋白(+)になる以外は全て正常で、舌質淡紅、脈滑。上方から車前子を去り、赤芍10g 益母草20g(再開)を加え、10余剤を服用するようにして治療効果を強化した。半年後再発なし。
評析
蛋白尿は慢性腎糸球体疾患の主要な臨床症状の一つで、水腫が消退しても、往々にして消失しにくく、治療は困難である。中医の弁証は通常、温腎健脾、益気活血、清利湿熱、解毒など多種の治療法を選択するが、益気養陰利湿熱法が最も常用される。脾気虚弱、清陽不升、精微が下注し外溢するのが蛋白尿に至る主要な病機である。蛋白漏出が慢性化すると、陰液を耗損し、気陰両虚の症状が形成され、水穀精微が気血に化生されないと湿濁が醸成され、湿濁が蘊蓄し化熱すると、次第に湿熱搏結となり、気陰両虚、湿熱内停の虚実挟雑の症候となる。その本(もと)は気虚を主とし、脾気虚損が最も甚だしい。故に、張氏は黄耆 党参 麦冬 地骨皮 茯苓 車前子 白花蛇舌草 柴胡 甘草を基礎方として、諸薬を配合して、補気にして不壅滞、益陰にして不滋?、利湿熱にして正気を傷つけないのである。
ドクター康仁の印象
張氏の処方内容を見て、最初に感じたことは、「柴胡は張氏のお気に入りの生薬」ではないかということです。私の認識(感覚)では、柴胡は、帰経が肝胆心包三焦であることから直接入腎しない。つまり腎病ではあまり使用されないという印象があるからです。
私は慢性腎炎の治療薬として、柴胡剤(黄芩を含む)は使用していません。尿酸は西洋薬で可及的に下げ、降圧剤はACE