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慢性腎炎の漢方治療 第73報 脾腎倶虚案

2013-03-15 00:15:00 | ブログ

?柏氏医案 脾腎倶虚案

(老中医医案選より)

?柏氏は遼寧省生まれ、(1935年に中医師免許を得た)物故名老中医の一人です。

患者:姜某 五十余歳 慢性腎炎を患う。

初診時所見:尿検査:蛋白(2+)顆粒円柱(1~2)RBC(510)、血圧は高くない。全身倦怠、精神的に疲れきっており、朝起きると顔面四肢に浮腫、尿頻多、舌にアフターがあり、口が苦い。脈緩にして弱、心煩がありたびたび吐きそうになる。

方薬: 六君子湯と四苓散の合法を立案:

党参10g 甘草5g 猪苓15g 澤瀉15g 半夏7g 陳皮5g 煎じ服用 日に三回。

補足: 四苓散:(丹渓心法)通陽利水剤の五苓散から桂枝を除いたもの。

猪苓9g 沢瀉15g白朮9g 茯苓9g桂枝6g)本案では白朮も配伍されていない。

六君子湯(太平恵民和剤局方)党参 茯苓 白朮 炙甘草 半夏 陳皮

両方に共通である白朮を除いた理由は不明。

二診

上薬を15剤服用し、自覚症状は好転するものがあった。尿検:蛋白(+)その他は変化なし。継続服用15剤を指示。

三診

症状は継続好転、尿検:蛋白(プラスマイナス)RBC(3~5)円柱(1~2)

脈は以前より浮いてきて有力になった。

清心蓮子飲(せいしんれんしいん)加減を連続十数剤服用し、その後は再び一、二診で処方した前方を交替して服用するように指示。

党参10g 茯苓10g 黄耆10g 石蓮子15g 甘草15g 寸冬麦冬の別称)10g 車前子10g(包煎) 茅根20g 藕節15g 水煎服用、日に3

 補足:清心蓮子飲(せいしんれんしいん)(和剤局方)清臓腑熱剤に分類される。

清心火と補益気陰を兼ね備える。効能は益気滋陰、清心火 主治は心火上炎、気陰不足。
黄芩 麦門冬 地骨皮 車前子 甘草15g蓮子 茯苓 黄耆 人参(或いは党参)各25g粉末混合し19gを水煎、(冷やして)空腹時に服用する。
本案の口苦は基本的に肝火の証であり母病及子で心火が増すと、口舌生疱といい、アフターが形成されると考えられる。

清心蓮子飲証:
遺精、結崩帯下、淋濁、疲れると発作する、或いは腎陰不足で、口舌乾燥、煩躁発熱が見られる。気陰が消耗されると、心営不足のために心火が上炎して心腎不交となり、心火が小腸にも移って、其の熱が膀胱に達し、排尿異常を起こす。

本案では、清心蓮子飲原方から黄芩、地骨皮を去り、白茅根(涼血止血、清熱利尿)、藕節(収斂止血)を加味してある。

四診

服薬3ヶ月、症状は大きく減じた。但し、依然として尿検査陽性を呈した、辛抱強く継続服用するように伝え、効を求めて急いではならぬと伝えた。その後、どうしたわけか、患者は治りたい一心で、他の医院を受診、六味丸、八味丸の類を処方され、次第に精神不振が最初と同じようになり、戻って再診した。見れば地黄の用量は50gまでに達しており、桂枝附子もまた15g程度であった。薬剤は誠に良薬であるが、ただ腎虚弱の場合にこのような薬剤に耐えられない。原方を堅持服薬するように言い、さらに3ヶ月、病状は基本的に全快した。

評析

本案は六君、四苓の甘淡軽剤にて、健脾祛湿する。清心蓮子飲は清補兼施の剤であり、原方の主治は淋濁崩帯、水穀精微下注を中医学から病機とする蛋白尿であり、腎病の蛋白尿を本方法で治療する根拠であり、補気と清利湿熱兼施が有効な治療効果となり、気陰を回復させ、心火を清し、心腎を交通させ、二方の交替使用は明らかな効果を得た。

ドクター康仁の印象

古い医案ですから、年齢も性別も詳記されていませんね。

しかし内容は見事です。

白朮を配合しなかった理由を尋ねたかったですね。

必ず氏にはその理由があったと思います。

黄芩と地骨皮を使用しなくても、白茅根を加味するとは、見事なものです。

このような名医が日中戦争時代に、青年医師として働いていたのですね。

20133月15日 記