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慢性腎炎の漢方治療 第66報 耆茱仲柏湯加味

2013-03-07 00:15:00 | ブログ

蒋文照氏医案 気虚陰虚 湿停熱郁案

(名医名方録より)

蒋文照

1925年嘉善天凝蒋家村に出生 国家級名中医 200885日没 享年83歳。

患者:男性51歳 1991107日初診

病歴:腎炎反復6年。198910月再発加重、慢性腎炎腎病型と診断され、入院治療16ヶ月。退院時検査:浮腫は基本的に消退、血圧は正常に近づいた。

血清蛋白4.8g/d1、甘油三?(トリグリセリド)17mmol/L144.5mg/dl

注)トリグリセリドの一般式はRCOOCH(CH2OCOR)2で分子量を、約850とすると

144.5mg/dlに換算されます。

血清蛋白4.8g/dl、総コレステロール300mg/dl、尿蛋白(+~2+)

蒋氏診察時所見:ここ半年、夜間尿が前より多く、毎晩45回あり、量多清長、腰がだるく痛む、両側の耳鳴り、全身倦怠、舌質淡紅胖大で水っぽく、舌辺に歯痕があり、苔は薄白?、脈沈細。益気養陰、補腎化濁をもって治療する。

方薬 耆茱仲柏湯(ぎしゅちゅうばくとう)加味:以下

生黄耆24g 制茱肉(山茱萸)6g 生地15g 杜仲12g 黄柏9g 銀花(金銀花)15g 生牡蠣20g 白茯苓15g 白茅根15g 金桜子12g 芡実15g 菟絲子12 潞党参 15g

注:生薬の産地名のつけ方

当地薬剤 上海産は ?フー 山東省産は魯ルー 広州産は粤ユエ 河南省産は晋、四川省産は川チュアンというように産地名を示す漢字の次に薬剤名が続きます。中国漢方薬の場合です。日本では北海~、九州~、四国~とかの産地名はありません。中国産も勿論ありません。本場と、ごっちゃになってしまうからです。(ルー)は現在の山西省を指します。

医案続き

上方の意を尊重し、やや加減しながら50余剤を連続服用した。

1125日再診、尿検査連続三回蛋白陰性。夜尿12回。腰痛耳鳴り軽減、体力増加。血清蛋白4.8/dlトリグリセリド120mg/dl、総コレステロール260mg/dl

評析

慢性腎炎は中医学の“陰水” “虚労” “腰痛”などの範疇に属する。其の病因病機は錯綜複雑であるが虚実挟雑に過ぎない。蒋氏は数十年の臨床経験を積み、概ね“腎虚濁滞”を病機とした。其の中で、腎虚が本であり、気虚陰虚が最も常見され;濁滞が標であり、湿停熱郁を兼ねることがある。

慢性腎炎には虚証が多く、最たるものは水腫が基本的に消退した後に更に顕著になる。

仮に実であっても、虚中挟実である。腎は精を蔵し、封蔵の本である。腎虚は封蔵失職、固摂無権となり蛋白、赤血球などの精微物質が尿に随って流出する;濁滞で不潔なものが去らず、停滞と阻害の結果、正気を傷つけ、クレアチニンや尿素窒素などの代謝廃物が祛除されにくい。気陰不足の故に全身倦怠;上は不栄の色、即ち面色少華;腎元欠虚、故に腰がだるく或いは痛み、これは「素問 脈要精微論」中“腰は腎の府、転揺不能、腎は将に極度の疲労」の如くである。脈の有力、無力、尺脈の沈取はどうであるのか、及び舌の有苔、無苔などは、更に証の虚実の重要な根拠となる。腎虚は脈象の多くは沈細無力、舌は胖大で水っぽく辺に歯痕がある;濁滞は脈の多くは弦であり、苔は?苔を呈する。蒋氏の「腎虚濁滞」の病機により、補腎化濁の治療法を立てた。

蒋氏考案の耆茱仲柏湯は、黄耆 萸肉 杜仲 黄柏 白茅根 茯苓 牡蠣 金桜子などを主な組成とする。

黄耆は気を充実させ、萸肉は陰を養い、杜仲を合わせて補腎益元に働く。

萸肉は酸温不熱、平補陰陽に;杜仲は甘温で濁を去り、また陽中求陰し益腎する。

茯苓、白茅根は滲水湿、清郁熱に作用し、黄柏の汚濁を除く作用を助ける。汚濁を「祛す」とは、尿中の白血球を消し、血中のクレアチニン、尿素窒素を清することである。

牡蠣、金桜子は斂陰液、縮水泉に作用し、黄耆、山茱萸の補腎摂精を助ける。

補腎摂精とは、血中のアルブミンを増加させ、尿中の蛋白、赤血球を消すことである。氏の方は、補虚に重点があり、補にして滋?にあらず、瀉濁を兼ね、瀉にして正気を傷つけない。故に、臨床で選択し使用すれば、効果は打てば響くものである。

方薬加減

蒋氏の経験によれば、以下の加減がある。

体が弱く感冒にかかりやすい者には、党参12g 炒白朮9gを加える。

水腫未消、小便短少の者には、茯苓を茯苓皮に変え、大腹皮9g 車前草10g 薏苡仁20gを加える。

口干燥熱者には、生地15g 麦冬9g 炒知母9gを加える。

腰膝のだるさ冷え、頭がくらくらして耳鳴りのある者には、仙茅9g 仙霊脾9g 巴戟天9g 菟絲子12gを加える。

尿が赤く、赤血球が多いものには、大小薊各12g 阿膠珠9gを加える。

ドクター康仁の印象

蒋文照氏(19252008年)の生まれた嘉善県(かぜん-けん)は中国浙江省嘉興市に位置する県です。浙江省は伝統的に学問で身を立てる人材が多いのです。私の好きな紹興酒の特産地でもあります。浙貝母の浙は浙江省参を意味します。魯迅(ルーシュン)(18811936 享年55歳)の生地は浙江省の紹興市です。

(ぼれい)甘微寒 帰経は肝腎

牡蠣

平肝潜陽、軟堅散結、収斂固渋、特に加熱処理した煅牡蠣(たんぼれい)は収斂固渋に優れます。胃酸に対する制酸作用も有ります。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20070121

注:板状の阿膠より、粒状の阿膠珠が水に溶けやすく、計量も容易です。

中国のブログで以下の文章を見つけました。

蒋文照老先生的逝去,?人感到是中国医学界的一个?失。

201337日 記