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慢性関節リュウマチ治療中の突然死

2007-02-15 14:44:28 | うんちく・小ネタ

ある種の「痛み止め」で心筋梗塞 漢方治療の併用で防止

あるリュウマチ患者から、一時期「肝機能が悪化して」中止していた抗リュウマチ剤「セレブレックス」を再開していいか?の問い合わせがあった。

米ファイザー社は、関節リウマチの痛み止めの一種「COX2阻害薬のベクストラ」(一般名バルデコキシブ)の販売を中断すると発表している。

米ファイザー社のもう一つのCOX2阻害薬である「セレブレックス」(一般名セレコキシブ)は既に副作用警告内容が添付文書に記載されており、継続使用されている。

近年、関節リウマチの痛み止めに使われる非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID=エヌセイドあるいはエヌサイド)の「COX2阻害薬」が心筋梗塞や脳梗塞などの発症率を高めることが明らかになった。アメリカ政府は「すべてのNSAIDが心筋梗塞などを起こす危険性がある」として、メーカーに添付文書に警告文を追加するようにメーカーに要請したという。

慢性関節リュウマチの治療薬は現在、抗リュウマチ剤と痛み止めのNSAIDで行われる。抗リウマチ剤はリウマチの進行を遅らせる薬だが、NSAIDのような直接的な鎮痛作用が無い。日本ではおよそ10種類の抗リウマチ剤がある。免疫調整剤、免疫抑制剤、生化学製剤などの分類があるがとにかく痛み止めとしては効かない。患者にとっては「とにかく痛みを止めて欲しい」が切実なる願い。そこでCOX2阻害薬を服用することになる。しかし、心筋梗塞で突然死にはもちろんなりたくない。「これだけ痛いなら死んだほうがましだ」という場合もあるが、死ぬ危険性を犯してまでも危険な薬剤は服用したくはないのが通常人の感覚だと思う。ところが、驚くほど現在の日本ではNSAIDは蔓延(まんえん)している。手軽に処方され患者も手に入りやすい。

 COX1とCOX2

COX(シクロオキシゲナーゼ)には、胃腸の粘膜を保護するCOX1と、炎症を促すCOX2の2種類がある。NSAIDの多くは、COX1も抑えてしまうので胃腸粘膜が荒れやすくなる副作用がある。事実、胃に穴が開いて出血死した患者もいる。そこで、痛みに関係するCOX2だけを抑制する「COX2阻害薬」が開発された。その結果、NSAID誘発性胃潰瘍の発生率が従来の薬に比べ半分ほどに減少した。

 しかし、果たせるかな、新たな副作用が出現した。心筋梗塞や脳梗塞である。

米政府は昨年12月、「心筋梗塞や脳梗塞の危険性を高める恐れがある」として、心臓病患者への処方や多量の長期使用を避けるよう勧告した。ただし、「服用による利益は危険性を凌ぐ」として、当面、販売継続は認める方針である。日本では慢性関節リュウマチは整形外科が診る。欧米では免疫内科(あるいは膠原病科)が主として診る。整形外科医では心臓病などに詳しい医師は殆どいない。専門外なのである。ましてや脳血管障害などは門外漢である。最近日本でも「心筋梗塞や脳梗塞の既往がある人(起こしたことがある人)や高齢者など、動脈硬化が進んでいる場合は注意が必要であり、念のため、これらの薬を避けた方がよい」と免疫内科から警鐘が発せられるようになったが、何処まで現場医療に浸透しているか疑問である。

されど、COX2阻害剤は悪役ではない

腫瘍免疫(がん免疫)分野の研究では、COX2は活性酸素、TNF-αなどでがん細胞が刺激されると産生されることが判明した。その結果プロスタグランジンE2という癌組織の血管新生を促進したり、がん細胞自体の分裂増殖を助ける物質を作り出す。さらに、プロスタグランジンE2は腫瘍免疫に働くリンパ球を弱体化させることも次第に明らかになってきている。これらの観点からは、COX2阻害剤はがん治療に役に立つ理論立ても可能だ。

僕が慢性関節リュウマチの治療に木香、黄柏、丹参、田七人参を加える理由

木香の中のテルペン類はCOX2産生を抑えるとの報告がある。黄柏の中のアルカロイドには同じくCOX2産生を抑えるとの報告がある。丹参はフリーラジカルを抑え、さらに血液の過凝固性を防止して梗塞性疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)を防止する。田七人参は動脈硬化を予防し、血管の強化とともに血液の過凝固性を防止する。

独活寄生湯(どっかつきせいとう)や疎経活血湯(そけいかっけつとう)をベースにしているが、特にCOX2阻害薬である「セレブレックス」などを服用している患者さんの場合にはCOX2産生そのものを抑え、COX2阻害薬の効果を増強するとともに、その使用量の減少を図り、危険な副作用である梗塞性疾患を防止することに留意している。

なにはともあれ、痛みは除かなくてはならないし、重篤な副作用は防止しなくてはならないのだ。

  続く、、


浮腫み(むくみ)と漢方

2007-02-14 19:28:01 | うんちく・小ネタ

大根足には漢方が効く 肝硬変 ネフローゼも原因となるので注意

夕方になると足が浮腫んでパンパンになる女性が多い。立ち仕事をしているスーパーの店員さん、看護婦さん、有名デパートのエレベーターの係り、一日中黒板に向う教師など職種は様々だ。血行改善剤とかビタミンEとかのサプルメントが流行っているが残念ながら効果は無い。つまり効かない。

足浴も効果は無い。リンパマッサージはその時は効くようだが、連日通えるはずも無い。結局は自己マッサージ、ふくらはぎ筋収縮運動、腹式深呼吸などで静脈の血液鬱滞(うったい)を改善させる方法になる。しかし、現実には眼に見えて浮腫んだ足(大根足)を改善、あるいは防止することは難しいのだ。ましてやすでに青筋(あおすじ)がはっきり浮き出ている表層の静脈瘤(じょうみゃくりゅう)がある場合には、運動療法では改善は難しい。

表層ではなく深部の静脈に血液の鬱滞を起こす場合になると血の塊(血栓)が生じやすくなる。血栓が肺動脈に詰まると命にかかわることもある。経口避妊薬(ピル)を服用していると血栓が出来やすくなる。このように、大根足もご愛嬌で済まされなくなる場合もある。

肝硬変では腸管と肝臓を結ぶ静脈である門脈の流れが悪くなり、門脈に血液の鬱滞が起こる。これを門脈圧亢進症という。この際には腹腔に水分が滲みだして腹水が生じる。肝硬変では肝臓での蛋白合成機能が低下するために、血液中の蛋白質(主としてアルブミン)が低下する。その結果、足に浮腫みが生じる。血液の浸透圧低下が原因だ。

 同様に、腎臓から大量の蛋白質が尿に漏れ出るネフローゼ症候群も血液中の蛋白質(主としてアルブミン)が低下する。その結果、足に浮腫みが生じる。同様に血液の浸透圧低下が原因だ。

 血液の浸透圧低下が原因の足の浮腫みは即刻治療が必要だ。といっても、肝硬変を根本治療する方法は現在のところ肝移植しかない。ネフローゼ症候群を引き起こす各種の腎臓病の中で治療に反応するものは多くは無い。つまり治療しにくい腎臓病が多いのである。

 愛嬌で済まされる「大根足」の漢方治療は利水滲湿剤と活血化淤剤と通陽剤を混合してポイと服用するだけである。「大根足」は予防され、愛嬌で済まされない「血栓」も防止できる。毎日飲んでも副作用も殆ど無い。体質に関係なく服用できる。私の考案した「浮腫み1~3号」は3号に近いほど足が冷えるタイプで、1号は足が火照るタイプに有効だ。薬事法の関係で自主開発製品は成分表示が出来ないのが残念である。

西洋薬の単一成分製剤の利尿薬はお勧めできない。長期服用していると腎臓の尿細管障害が出現してくる。ましてや「急痩せ」目的に西洋利尿剤を飲むことは厳に慎むべきである。モデル業の女性は特に注意されたし。

 続く、、


脳梗塞 漢方で予防する

2007-02-09 17:26:12 | うんちく・小ネタ

郵政民営化に反対して自民党を離党した無所属の平沼赳夫元経済産業相(67)が昨年12月に脳梗塞を起こし、東京都内の病院に入院中であるらしい。平成1634日には読売巨人軍終身名誉監督の長島茂雄さんが脳梗塞で倒れたが無事復帰を果たした。平沼さんもリハビリを終え一日も早く復帰されることを祈る。思い返せば故田中首相がロッキード裁判公判中に、竹下登氏の創政会設立の「造反行為」で19852月に脳梗塞で倒れ入院、さらには、故小渕敬三氏が首相在任中の20004月に脳梗塞で倒れ順天堂大学医学部附属順天堂医院に緊急入院し、意識を回復すること無く約1か月半後に逝去された。62歳のまだまだ働き盛りである。動脈硬化の体質に精神的肉体的ストレスが加わったときに脳梗塞が発症する。

脳出血から脳梗塞へと死因は変化しつつある

日本人の死因統計では第一位が悪性腫瘍 第二位が心臓病 第三位が脳血管疾患である。脳血管疾患で増加しつつあるのが脳梗塞だ。脳血栓と脳梗塞は基本的に発症病理が異なるが、簡単に言えば、脳梗塞は脳の血管が閉塞することによって発症する。どうしたら脳梗塞の発症を予防できるのだろうか?

動脈硬化の防止とアテローム血栓の防止

 巷では「血液さらさら健康法」などと称していろいろなサプルメントが人気がある。しかし一向に脳梗塞が減少しない理由は何故であろうか?原因は「片手落ち」の考え方にある。

すでに動脈硬化が激しく、血圧が高い場合には、「血圧を放置して血液さらさら健康法」などは馬鹿げている。先ず、血圧を安定させ、血管を強化し、動脈硬化の進行を抑制したうえで血小板凝集抑制剤などを服用するのが順序である。無理なダイエットなどをすれば血管の弱体化が進む。

動脈硬化が軽度で、血圧が高い場合には、先ず血圧を安定させて、動脈硬化促進因子である高脂血症、肥満、喫煙、過剰な飲酒などに留意する。

漢方の役割は①血圧の安定 ②高脂血症の改善 ③肥満の改善 ④血流を良くし淤血を取り除き総合的に動脈硬化の進行を遅らせることだ。西洋薬と共同した方が効果は確実なものとなる。漢方薬やサプルメントを選択する際に重要なことは単一生薬やサプルメント製品であたかも万能であるような広告に惑わされないことである。

高麗人参は血圧を上げる副作用がある

高麗人参は特に補陽の効果があり、過剰に摂取すると血圧が上昇したりする副作用がある。また、製品の中には調剤のために糖分が過剰に含まれているエキス剤も有り、糖尿病の悪化をきたす場合も報告されている。専門医に相談してから服用するほうが安全である。

良質の田七人参は脳梗塞を防止する

田七人参は三七人参とも言われ、漢方薬学では化淤止血薬に分類されている。

化淤止血とは、「血を取り除いて、その結果止血する」という、やや難しい概念であり、現代薬理学で説明すれば、血液をサラサラにすると同時に出血を止めるという、特殊な血管強化薬である。近年は動脈硬化予防作用が注目されている。

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1.田七人参はβ―リポ蛋白、中性脂肪などの血清脂質を減少させ、

善玉コレステロールを増加させる。

2.動脈硬化指数の有意な改善効果がある。

3.高脂血症、心血管の動脈硬化症に有効性が認められる。

4.脳動脈硬化症の防止、脳梗塞の防止作用が期待されている。

5.捻挫、打撲による腫れをのぞき(消腫作用という)、痛みを除く(除痛)

今や、中国大陸で働きまわる日本の猛烈サラリーマンの多くが、心臓の冠状動脈や脳血管の動脈硬化を防止する守護神として、田七人参を愛用している。

写真は粉末製剤である。粗悪品は色が黒く、不純物が多く、極端な例では砂様な混入物があるので注意されたい。

丹参を含む製剤は病状、体質に合わせて服用する

淤血を取り除き血流を良くする生薬の代表に丹参がある。丹参のなかでも紫丹参が良質とされている。

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丹参(たんじん)を含む中国産の製剤は多く市販されています。それぞれ病状、体質によって使い分けをしなくてはなりません。代表的な製品を挙げれば、

消栓再造丸(しょうせんさいぞうがん)
製造元:北京同仁堂製薬厰
成分:丹参、田七人参、血竭、安息香、蘇合香、川弓、人参、沈香、天麻、金銭白花蛇。
効用:血液の流れよくさせ、お血を除去。補気養血、高脂血症をコントロール。脳硬塞などによる後遺症、半身不髄、口の歪み、言語障害、胸の苦しみ、高脂血症などに使用。

鎮脳寧(ちんのうねい)カプセル
製造元:通化東宝薬業股分有限公司
主要成分:川弓、藁本、細辛、天麻、水牛角、丹参など。
効用:吐き気、手足のしびれ、目眩耳鳴りなどに伴う頭痛。
高血圧、動脈硬化、血管神経性頭痛。とくに頭痛が酷い場合に使用。

糖脈康(顆粒)(とうみゃくこう)
製造元:中医研究院中匯製薬公司
成分:黄耆、生地黄、丹参、牛膝、麦冬、黄精など。

効用:養陰清熱、活血化淤、益気固腎。糖尿病の気と陰の虚(気陰両虚)と淤血による倦怠、多汗、渇き、胸の痛み、手足の痺れ、便秘、舌の腫れなど。糖尿病を合併した場合に使用。

安神補心丸(あんじんほしんがん)
製造元:上海和黄薬業
成分:丹参、五味子、石菖蒲、合歓皮、墨旱蓮、女貞子、首烏藤、地黄、珍珠母、莵絲子。
効用:養心安神。体力が低下気味で、動悸、息切れ、いらいら感、肩こり、不眠等の神経症状の改善を目的とした薬です。配合されている生薬には、体力の低下を改善する作用、神経のいらだちを鎮める作用があります。自律神経失調気味の場合に使用。

天王補心丸(てんのうほしんがん)
製造元:北京同仁堂
成分:丹参、当帰、石菖蒲、党参、伏苓、五味子、麦冬、天冬、地黄、玄参、遠志、酸棗仁、柏子仁、桔梗、甘草、朱砂
効用:滋陰養血、補心安神。不眠症、動悸、健忘症、神経衰弱、更年期障害など。

復方丹参片(ふくほうたんじんへん)
製造元:上海雷允上製薬有限公司
主要成分:丹参エキス、三七(田七)、など。
効用:血液の流れをよくし、淤血除去、気の流れをよくし、痛み止め。胸の苦しみと痛み。主として冠状動脈硬化症、狭心症に使用。

消栓通絡片(しょうせんつうらくへん)
製造元:哈薬集団太陽島製薬厰
主要成分:丹参、川弓、三七人参、黄耆、澤潟、郁金(ウコン)、木香、槐花、桂枝、山楂子、氷片。
効用:活血、通絡。高脂血症、脳血栓、脳梗塞による精神痴呆、舌が硬く、言語障害、手足冷え、動きに伴う痛みなどがある場合に使用。

以上のように各々症状や体質に合わせて服用することが大切である。最近では中国から取り寄せて服用されている患者さんも多いが、是非とも専門の医師に相談なさってから服用していただきたい。

   続く、、


レタスの安眠効果の「ネタ元」は?

2007-02-08 11:10:47 | うんちく・小ネタ

やっぱり「チャングム」? 結論「安眠効果は無い」

現在世間を騒がせているレタスの安眠効果について漢方医の立場から私見を申し上げる。結論は「安眠効果は無い」である。

まず、レタスを中国語でなんというかを申し上げれば「?苣(うーじゅー)」あるいは「生菜(しゃんつぁい)」と訳されてくる。どちらも薬草ではない。食品である。

元来、レタスは中国には無かった。ここ20年ぐらいの間に輸入栽培され始めたものである。「?苣」が似ているので近種ではないかということでそのまま訳語となってしまった経緯がある。正確にはレタスは「生菜(しゃんつぁい)」である。

?苣(うーじゅー)」は中国湖南地方で産出される。北方には存在しない。独自の香りがある。醤油、ごま油、塩などでドレッシングしてサラダにして人気がある。味は苦くなく、表面のぱりぱりした歯ざわりと共に、中には水分が十分にあり美味しい野菜だ。面白いことに葉の部分より茎(芯)の部分をよくたべる。中国の親は子供にこのように言う。「?苣(うーじゅー)を食べ過ぎると体に熱が溜まり口内炎になるよ」と。つまり「温性」の食品である。梅雨時に食べるのが良しとされているのは体を内側から温めて「湿を除く」からである。?苣(うーじゅー)は香烏笋(しあんうーすん)とも言う。

 一方、レタス(生菜)には?苣のような香りは無く味は淡、苦味は無い。中国人はレタスを食べ過ぎると下痢を起こすという。?苣が温性食品でレタスは涼性食品だからだと漢方医は言う。日本人が冬でも氷の入った水を飲み、レタスを食べるのは中国人からしてみれば「奇妙な食慣習」なのである。

 韓国の焼肉料理につきものの「サンチュ」と同一の野菜は中国にはない。韓国の野菜の起源は殆どが中国由来であるのに対して不思議ではある。野菜としては、サンチュ、レタス、?苣の起源は同じであろうと思う。サンチュも香りが無く、味も淡であり、苦味は無い。食物栄養学的にはサンチュはレタスに比べてビタミンCやベータカロチン、カルシウムの含有量が多いと報告している学者もいる。真偽はともかく、通常の食生活の摂取量ではレタスもサンチュも似たりよったりである。性味はレタスの方がより淡白な気がする。

 小説「宮廷女官 チャングムの誓い」の中で、「サンチュは鎮痛や催眠に効果があり、たくさん食べると眠くなる」の記載がある。知り合いの韓医(韓国の漢方医)に尋ねてみたところ、「食事で食べる量ぐらいでは薬効といえるものは無い」との返事であった。上海医科大学の漢方医の知人に尋ねてみたが、サンチュ自体の薬学が無いとの話だった。「そんなに薬効があったなら当然、薬として使用されたはずだ。中国漢方医学が放っておくはずが無い」の返事である。

 ラクッコピコリンとは笑止千万

19世紀に英国でアヘンの代用品として使用されたLactuca viroza(別名アヘンレタス、野生レタス、あるいは毒レタス)の研究で解析された化学物質の一つにlactucopicrin(ラクツコピクリンあるいはラクチュコピクリンと発音)がある。現在米国FDAは栽培は合法的であるとして、販売購入に特殊なライセンスは不要だ。

ラクチュコピクリンには短時間作用型の麻酔作用と催眠作用があることが判明している。味は苦い。Lactuca virozaは抗酸化作用を持つフラボノイド類、血液の凝固を防ぐクマリンも含有する。独自の香りを有する。野菜というより花が咲く野草であり、香草(ハーブ)である。現在の食用レタスはもちろん野菜でありハーブではない。

なぜ食用レタスに馬鹿馬鹿しい「ラクッコピコリン」なるものが存在するという話になったのであろうか?

某テレビ局の目玉番組の制作スタッフがチャングムーサンチュ レタス 毒レタスと無責任に連想を重ね、加えて番組に参加した浅学な大学教授のお墨付きによって馬鹿馬鹿しい「ラクッコピコリン」誕生劇となったようだ。機能性食品の研究者らしいが香草(ハーブ)に関しては浅学のそしりを免れない。

 肉を飽食する際に沢山の野菜を一緒に食べるのは体にいいことである。サンチュと共に肉を飽食するのは韓国の伝統であり、それはそれで「幸せな食習慣」ではある。

   続く、、


繊維筋痛症 中国漢方治療の現状

2007-02-06 13:47:46 | うんちく・小ネタ

線維筋痛症(Fibromyalgia)

線維筋痛症は中国語で線維肌痛症あるいは肌筋膜痛総合症と呼ばれている。非膠原病性でかつ非炎症性の原因不明の全身の筋肉痛、関節痛、骨痛を主症状とする本病は、従来「症(ひしょう)」の一つとして中医学的に治療がなされてきたものである。ただし「線維筋痛症の疾患概念」は1990年代になって米国から中国へ移入されたものである。従って

① 中国国内では、「Fibromyalgia」として確定診断された症例数がまだ蓄積されていないことが現状である。

    骨傷科より内科{風湿病専科(リュウマチ科))}が治療していることが多く、または、鍼灸治療が多く併用されてきた。

鍼治療は八針透針法で穴位崑崙透太溪(直透法)、合穀透魚際(斜透法)、太陽透?竹空(斜透法)、陽陵泉透陵泉(直刺法)、条口透承山(斜刺法)、内透外関(直刺法)腰透陽白(横刺法)風致(斜刺法)である。詳細は省くがステンレス針、34~36号で30分留置針を行う。

③ 内科治療の場合は“痺証”に基づいて治療がおこなわれる。

治療原則は西洋治療に合わせて

①「疏肝解郁」(抗焦燥、不眠に対して)

②「※※止痛」(鎮痛)、③「補益肝腎」(免疫調整)が主体である。

①、②は「標」を、③は「本」を治療する意味です。中医学でいう「標本同治」の手法をとる。

「※※止痛」は弁証結果(風、寒、湿、熱、気滞、)に対応し、具体的な治療法を応用する。※※部分には弁証により風 散寒 湿 清熱(清熱は少ない)理気 化淤の漢方治療原則が入りそれぞれの方薬が使用される。それぞれの止痛法に関する使用生薬については http://okamotokojindou.com/cancer/detail09.html

を参照されたい。

ここでは基本的な中医漢方医学の観点から線維筋痛症をどのようにとらえているのかを紹介する。

中医学的な治療の目的

現時点において線維筋痛症の単一的な治療方法は西洋医学、中医学でも発見されていない。従って「痛みを取り除く諸方法」を総合するものである。治療目的は

①痛みの周期を打ち破る 

②睡眠のモードを回復する 

③生体機能の活動のレベルを高める。 の3点である。

原因不明のある化学物質が小さな血管を攣縮させ筋膜組織が酸欠になり、線維組織が増加していくのではないかというとらえ方がされている。外傷が治らないままに放置された場合、出産などで疲労、出血などが過ぎた場合などに気血が消耗され、血は筋を濡養できなくなり、肝は筋(すじ)を司れなくなることが本病のメカニズムと考える中医がいる。

生体の正気(広い意味で抵抗力)が虚せば邪気(ウイルスや寒さなどの物理的な生体を侵襲するもの)が乗じやすくなる。 正気の虚により体表の理(そうり)(毛穴)が開いてしまい外邪は生体に侵入してくる。その結果、気血が閉疽し、経絡の気血も不足し、脈絡の正常機能が失われる。

痛みの原因を中医学では「不通即痛」と捉える。「通りが妨げられると痛みが生じる」という考え方である。正常な気 あるいは血の流れに阻滞が生じると痛みが生じると考える。

やや中医学の概念的な治療用語になるが、以下を以って、正常人であれば痛みを感じない程度に、痛覚の閾値(いきち)を上昇させることを治療原則としている。

    益気固表(えっきこひょう)

補気剤により体表の抵抗力である衛気(えき)を強化する。

    養血舒筋(ようけつじょきん)

血を養い筋への濡養を促進する。

    通絡止痛(つうらくしつう)

経脈の気血の流れを改善し痛みを止める。

    風寒湿(きょふうかんしつ)止痛

風寒湿を除き痛みを止める。

西洋医学的解釈に対する中医学的私見

        不安 睡眠障害 ストレス うつ などの関与

 三環系抗うつ剤を眠前に服用する方法が推奨されている。

私見:

中医学的には不安 ストレスは肝気の鬱滞をきたし、うつを引き起こし、さらにその症状を悪化させる。慢性病になると陰血が消耗し肝血不足となりひいては心血不足となり失眠が生じる。一方肝腎同源という基本的な中医学の哲学から、上記症候には疏肝解郁(そがんかいうつ)補益肝腎(ほえきがんじん)養血安神(ようけつあんじん)法をとるべきであろう。

        慢性疲労症候群の合併

背景に免疫力の低下、ウイルス感染、胃腸機能の低下が疑われる。

私見:

気血生化の源である脾胃の機能が減弱すれば免疫力の低下になる。肝と脾胃が不和になれば最終的に気虚に加え肝血不足が生じ慢性疲労の原因にも①の原因ともなる。調和肝脾(ちょうわがんぴ)法をとるべきである。慢性疲労症候群の漢方治療に関してはhttp://okamotokojindou.com/internal/detail26.htmlを参照されたい。

        過敏性胃腸障害を時に合併する。

私見:

 肝脾胃の臓腑学説から説明が可能と思われる。過敏性大腸症候群の漢方治療についてはhttp://okamotokojindou.com/internal/detail23.htmlを参照されたい。

罹患人口が多い割には(日本で推定200万人)線維筋痛症への解析はまだ始まったばかりである。果たして「独立疾患」であるのかさえもはっきりしていない。治療は手探り状態なのが現状である。特徴的な検査所見を示さないのも「独立疾患」を疑わせる原因である。アメリカではFibromyalgiaの代替治療として中国医学療法が広く認められつつあるようだ。

   続く、、