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慢性関節リュウマチと「リウマトレックス」

2007-02-16 12:43:03 | うんちく・小ネタ

漢方で副作用防止

 

「リウマトレックスは最も基本的な抗癌剤ですよ。」

あるリュウマチ患者に話したら

「えっ? ぜんぜん知らなかった。もう何年も飲んでるんです。」との返事である。

「副作用について何か説明を受けていましたか?」と尋ねると

「とくに何も伺っていません。」との返事。のんきで天真爛漫な美しい女性である。兵庫県でも雪深い地方にお住まいだが今年は記録的な暖冬だとのこと。

リューマトレックス

リウマトレックスというよりもメトトレキセート(MTX)の方が認知度は高い。乳がん、肺がん、胃がん、食道がん急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ザルコーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、絨毛がん、菌状息肉腫(皮膚T細胞リンパ腫)など多くの癌に使用されてきた。免疫抑制剤としてネフローゼ型慢性腎炎やSLEに伴うループス腎炎などに以前は積極的に使用された経緯もある。

メトトレキセート

メトトレキセート(MTX)は、19993月より抗リウマチ剤として使用されている。強い葉酸代謝阻害作用を有する。細胞(がん細胞、正常細胞を問わず)が分裂するためにはDNAが複製されなくてはならない。DNAが複製されて後に有糸分裂が起きて細胞は2つに分裂する。DNAの材料はヌクレオシドでありプリン体とピリミジン体である。そのヌクレオシドの材料がテトラハイドロ葉酸(補酵素F)であり葉酸から体内で合成される。メトトレキセート(MTX)は葉酸からテトラハイドロ葉酸(補酵素F)への過程をブロックする。細胞分裂の大本(おおもと)の過程を阻害すると考えてもいいだろう。つまり何でも屋的な細胞分裂阻害剤である。正常細胞のうちで最も活発な分裂を起こしているのが骨髄細胞である。従ってメトトレキセート(MTX)服用による最大の副作用は骨髄障害である。白血球、赤血球、血小板の減少が同時に起こる汎血球減少症(pancytopenia)は報告によると1-2%と低率であり、死に至らないとされている。しかし一部の症例では服用後短期間で、しかも急激で重篤な汎血球減少症があることも確かである。邦文の報告では、40例弱のpancytopenia症例のう一割強の死亡率である。重症例では、感染症、出血、多臓器不全(MOF)、DICから死に至るとされる。突然に発症する汎血球減少症の可能性とそれに対する活性型葉酸や骨髄刺激に働くG-CSFの投与などの必要性を患者さんに説明しておくべきである。一般的に血小板が6万以下になると出血傾向が出現し、赤血球が200万以下になると動悸、息切れがひどくなり、白血球が1500以下になると感染のリスクが高まる

僕が慢性関節リュウマチの治療に補気剤や補益肝腎剤を使用する理由

古来より中国医学では慢性病(久病)は気血不足、肝腎両虚になるので、気血双補、

補益肝腎が必要であるとする。人参は補気薬の代表であり、桑寄生 杜仲 牛膝 などは補益肝腎剤である。

人参の作用は

①実験的に抗がん剤の作用を増強させる一方で、抗がん剤による白血球減少などの副作用を有意に改善する。

②実験的に、異物を貪食する大食細胞(マクロファージ)を活性化するとともに、リンパ球のナチュラルキラー活性を増強する。細胞性免疫機能を、人参は活性化し、抑癌効果はがん防止につながる。

③抗がん剤や放射線療法に伴う骨髄抑制を防止する。

などである。リウマトレックスを服用している場合などには特に配合することにしている。

中国医学では腎は骨と髄をつかさどるとされ、慢性関節リュウマチには補腎剤の配合を行う。まさに抗がん剤の骨髄抑制には「うってつけ」の配合なのである。

西洋医学と協力して患者の痛みを除き、副作用を防止する。これが中国漢方医学の面目躍如たる所以である。

  続く、、