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子宮筋腫の漢方治療

2007-02-23 12:04:58 | うんちく・小ネタ

子宮筋腫とホルモンとの関係

妊娠可能な年齢,つまり女性ホルモンの分泌が盛んな間はホルモンの影響で子宮筋腫は大きくなります。通常は50才を過ぎて女性ホルモンが低下すると筋腫は縮小し,生理が終わると(閉経すると)症状も軽快するので外科的な治療の必要はなくなります。
 子宮筋腫は悪性腫瘍ではありません。従って子宮以外の臓器に転移したりしません.癌化して手遅れになるような病気ではないのです。外科手術の適応は、筋腫のサイズとは無関係です。ただ単に大きいという理由だけで手術する必要はありません.一方、小さい筋腫でも、たとえば粘膜下筋腫などの場合で、過多月経などの症状が強く,内服薬の治療がうまくいかない場合は手術の適応になります。当然、妊娠、分娩の希望があるかないかで治療方針はかわってきます。

 義父が婦人科医であった関係上、自然と婦人科の術式には慣れ親しんだ経緯がありますが、開腹手術でなくても腟式でも粘膜下筋腫は手術が可能です。子宮筋層にある筋腫の場合には、一部の医療機関では、子宮鏡観察下に高周波メスやレーザーを用いて筋腫核を摘出する手術が行われるようになりました。過多月経が著しく、かつ妊娠を望んでいない場合には,子宮内膜を一定温度で凝固壊死させる方法などもあります。 

子宮筋腫のホルモン療法は考え物

 生理不順や生理痛,過多月経の時などの薬としてエストロゲン(卵胞ホルモン) とプロゲステロン(黄体ホルモン)の合剤があります。経口避妊薬のピルと,生理日を変更したい時に使うホルモン薬は同様のホルモン剤です.

子宮筋腫はこれらのホルモンによって増殖する性質をもっていますので,長期の使用は禁忌とされます。現在では「エストロゲンと同様プロゲステロンも筋腫の増殖に関わる」という認識が一般です。
 これらのホルモンの分泌を強力に抑制して人工的に閉経状態にする薬(商品名スプレキュア,リュープリンなど)が開発されました。これにより閉経し、生理痛から開放され,筋腫もかなり縮小します.しかし,更年期障害の症状(のぼせ,肩こり,めまい、骨粗しょう症、はなはだしい場合は鬱など)がでやすいことが副作用です。値段も高価であり、6カ月以内が保険給付期間とされています。そこで、6カ月で治療を一旦終了しますが、また生理が再開してさらに6カ月後にはほとんどの人は筋腫がもとの大きさ以上になります.そこで(元のあるいは別の医療機関で)スプレキュアなどを再開するわけです。なにかいたちごっこの様相です。この治療法は閉経が近いと思われる人には向いている治療法です。 しかし、漫然と繰り返す治療ではありません。出血を減少させ貧血を速やかに改善させ,筋腫のサイズを縮小させて手術を容易にするなどの,手術を前提とした一時的な使用と考えるべきです。

手術時に置き忘れたガーゼの塊りは子宮筋腫と誤診される可能性がある。

最近のニュースより

岐阜県のある病院は、30代の女性に帝王切開手術をした際、体内にガーゼを置き忘れた上、7年後にこれを子宮筋腫と間違えて、子宮と右卵巣を摘出する医療ミスがあったことを表明し、慰謝料を女性に支払うことで和解したという。発表によると、女性は子宮筋腫と左卵巣嚢腫と診断され、子宮と右の卵巣を摘出した後に、子宮と直腸の間に丸まったハンカチ大のガーゼ1枚が見つかり、子宮筋腫と誤診していたことが分かった。左卵巣膿腫の診断に誤りはなかったという。ガーゼの塊りが子宮と直腸の間に癒着し、あたかも子宮の漿膜下の筋腫のように見えたのであろうが、将来の妊娠分娩のチャンスは永久に失われた。痛ましいニュースであった。

手術したくなければ子宮筋腫は漢方で治療するのがいい

子宮筋腫の患者さんには同時に冷え性、痔、静脈瘤、更年期障害などを合併していることが多く、漢方治療により「総合的な子宮筋腫の治療」が可能です。特殊な保険の効かない生薬を使う場合は別として一般の桂枝茯苓丸などを使用する場合はコストが安いのも魅力です。スプレキュア,リュープリンなどと比較して安価ですみます。

将来の妊娠を望んでいる場合,妊娠中に筋腫が増大した場合、更年期障害の症状がある場合などには特に漢方薬が有効です。また低用量の男性ホルモン製剤を併用することも可能です。通常使用量の3分の1以下の使用量では、報告されているむくみ、体重増加、肝機能障害、にきび、性器出血などの副作用はありません。

 漢方薬単独で十分効果が現れない場合は,低用量の男性ホルモン製剤を併用することは選択肢の一つです。プレキュア,リュープリンなどと比較して更年期障害のような症状が出たり,骨のカルシウム含有量が減ったりする心配はありません.

お勧めの漢方製剤と生薬

子宮筋腫の漢方治療の原則は活血化淤(かっけつかお)と軟堅散結(なんけんさんけつ)です。西洋医学の医師でもあり漢方専門医でもある医師は月経周期に合わせて治療を行います。生理前には逍遥散や四物湯をあわせ疏肝解郁(そがんかいうつ)や養血を行います。生理期には膠艾四物湯などで補血と共に過剰な出血を止めます。生理が終わると桂枝茯苓丸などで子宮内の血液循環を改善し、しこりを軟化させます。中国では生理周期と関係なく海藻 石見穿 三 蛇莓 生甘草 玄参 牡蠣 貝母などを併用します。中等度までの子宮筋腫であれば、確実に縮小効果が得られます。閉経が近い40代後半や50代前半のご婦人には、早期に閉経へ誘導する漢方治療が併用されます。

子宮筋腫 冷え 月経過多 経期延長 生理痛の症例から

38歳の女性で、直径7cmの子宮筋腫があり、将来の妊娠分娩を希望している女性が漢方外来を受診された。脈象は細弱、青紫舌で舌下静脈やや怒張、下肢が冷え、しもやけになりやすく、眠れないくらいジンジンと足先が冷えるとのこと、生理痛は生理が来ると痛みが増し、イブやバッファリンを服用して痛みをコントロール、生理量が多く、生理期間が10~12日と長く、生理に血塊が混じるとの事であった。

気血両虚、気虚不摂血気味、寒凝淤血、筋腫合併と診断した。

気血両虚に対して人参 白朮 茯苓 生甘草 当帰 熟地黄 白芍を、

衝任寒証に対して、肉桂 桂枝 烏薬 小茴香の温薬を、

寒凝血淤に対して 丹参 紅花 桃仁 莪朮 三などやや多目の活血薬を、

理気止痛の目的で川郁金 延胡索 香附子を

筋腫に対しては夏枯草 蒲公英根 威霊仙 蘇木 劉寄奴 石見穿を配合しせんじ薬を調合した。

服用後1ヶ月後、生理痛も無く、とても楽であったとのこと、手足の冷えも改善し、生理時の血塊が少なくなり、生理期間も5日に短くなって調子がとてもいいと喜んでおられた。

服用後2ヶ月で筋腫サイズは5cmに減少、4ヵ月後には3cmに減少した。

劉寄奴の「破血通経」 「斂瘡消腫」とは?

劉寄奴(りゅうきど)とは耳なれない生薬であるが中国では一般的な生薬である。

淤血(おけつ)を除く作用を淤(きょお)と言うが、その作用の中でも特に強い淤作用を破血という。血を破ると書くが、その血は淤血の血である。通経とは生理を再び起こさせるという意味である。しかし、生理が正常にある場合でも劉寄奴を使用しても問題は無い。卵巣嚢腫 子宮内膜症 子宮筋腫に中国では治療効果をあげている。

斂瘡消腫(れんそうしょうしゅ)の効があるとされ、傷を収斂させ(固めて)、腫れや浮腫を除く。古くから刀傷には単味を粉末にして外用すると、傷の治りが非常に早いとされている。

  続く、、