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レタスの安眠効果の「ネタ元」は?

2007-02-08 11:10:47 | うんちく・小ネタ

やっぱり「チャングム」? 結論「安眠効果は無い」

現在世間を騒がせているレタスの安眠効果について漢方医の立場から私見を申し上げる。結論は「安眠効果は無い」である。

まず、レタスを中国語でなんというかを申し上げれば「?苣(うーじゅー)」あるいは「生菜(しゃんつぁい)」と訳されてくる。どちらも薬草ではない。食品である。

元来、レタスは中国には無かった。ここ20年ぐらいの間に輸入栽培され始めたものである。「?苣」が似ているので近種ではないかということでそのまま訳語となってしまった経緯がある。正確にはレタスは「生菜(しゃんつぁい)」である。

?苣(うーじゅー)」は中国湖南地方で産出される。北方には存在しない。独自の香りがある。醤油、ごま油、塩などでドレッシングしてサラダにして人気がある。味は苦くなく、表面のぱりぱりした歯ざわりと共に、中には水分が十分にあり美味しい野菜だ。面白いことに葉の部分より茎(芯)の部分をよくたべる。中国の親は子供にこのように言う。「?苣(うーじゅー)を食べ過ぎると体に熱が溜まり口内炎になるよ」と。つまり「温性」の食品である。梅雨時に食べるのが良しとされているのは体を内側から温めて「湿を除く」からである。?苣(うーじゅー)は香烏笋(しあんうーすん)とも言う。

 一方、レタス(生菜)には?苣のような香りは無く味は淡、苦味は無い。中国人はレタスを食べ過ぎると下痢を起こすという。?苣が温性食品でレタスは涼性食品だからだと漢方医は言う。日本人が冬でも氷の入った水を飲み、レタスを食べるのは中国人からしてみれば「奇妙な食慣習」なのである。

 韓国の焼肉料理につきものの「サンチュ」と同一の野菜は中国にはない。韓国の野菜の起源は殆どが中国由来であるのに対して不思議ではある。野菜としては、サンチュ、レタス、?苣の起源は同じであろうと思う。サンチュも香りが無く、味も淡であり、苦味は無い。食物栄養学的にはサンチュはレタスに比べてビタミンCやベータカロチン、カルシウムの含有量が多いと報告している学者もいる。真偽はともかく、通常の食生活の摂取量ではレタスもサンチュも似たりよったりである。性味はレタスの方がより淡白な気がする。

 小説「宮廷女官 チャングムの誓い」の中で、「サンチュは鎮痛や催眠に効果があり、たくさん食べると眠くなる」の記載がある。知り合いの韓医(韓国の漢方医)に尋ねてみたところ、「食事で食べる量ぐらいでは薬効といえるものは無い」との返事であった。上海医科大学の漢方医の知人に尋ねてみたが、サンチュ自体の薬学が無いとの話だった。「そんなに薬効があったなら当然、薬として使用されたはずだ。中国漢方医学が放っておくはずが無い」の返事である。

 ラクッコピコリンとは笑止千万

19世紀に英国でアヘンの代用品として使用されたLactuca viroza(別名アヘンレタス、野生レタス、あるいは毒レタス)の研究で解析された化学物質の一つにlactucopicrin(ラクツコピクリンあるいはラクチュコピクリンと発音)がある。現在米国FDAは栽培は合法的であるとして、販売購入に特殊なライセンスは不要だ。

ラクチュコピクリンには短時間作用型の麻酔作用と催眠作用があることが判明している。味は苦い。Lactuca virozaは抗酸化作用を持つフラボノイド類、血液の凝固を防ぐクマリンも含有する。独自の香りを有する。野菜というより花が咲く野草であり、香草(ハーブ)である。現在の食用レタスはもちろん野菜でありハーブではない。

なぜ食用レタスに馬鹿馬鹿しい「ラクッコピコリン」なるものが存在するという話になったのであろうか?

某テレビ局の目玉番組の制作スタッフがチャングムーサンチュ レタス 毒レタスと無責任に連想を重ね、加えて番組に参加した浅学な大学教授のお墨付きによって馬鹿馬鹿しい「ラクッコピコリン」誕生劇となったようだ。機能性食品の研究者らしいが香草(ハーブ)に関しては浅学のそしりを免れない。

 肉を飽食する際に沢山の野菜を一緒に食べるのは体にいいことである。サンチュと共に肉を飽食するのは韓国の伝統であり、それはそれで「幸せな食習慣」ではある。

   続く、、