下町開業のこつ
ある時は梅ちゃん先生の親父(父)そして隣の鶴太郎(鶴)
「あの、夫の事なんですが、どうなんでしょうか?」
「御主人のことですね。伺います。」
本人は勿論いない。誰だったかと思う間に
話が続く、
そのうち気を利かして看護婦がカルテを持ってくる。
ぱらぱら、見て、手早く病状を飲み込む
「十年以上も患ったクローン病なのですから、1週間で治るはずないのが一般の医学的見解です」と父
数週間前のこと、「先ずはこれ飲んで、様子をお聞かせ下さい。下痢っぽいのが改善するかどうか1週間後に判断します。効かない漢方薬だらだら飲んでも仕方ないですから。処方を変化させるかどうか、1週間で判断します。」
それから、本人は来ていない。そこで鶴の登場。
「まあ、先生がさ、心配してたよって、伝えて頂戴な ね」
ある不安神経症の女性
延々と話が続く
父として、カルテに記入しながら
「ちょっとお待ちください。書きながら、お返事するのってできませんから」
遅々として進まない。予約の患者さんが心配になる。
鶴の登場
「んだからさ。この間実験してみてって言ったら、上手くいったでしょう?」
「はい、先生がおっしゃるとおり、眠前の薬、ずらして、遅く飲んだら、途中
で目が覚めなくて、調子良かったです」
「ね、九時に寝たら、誰だって途中で目が覚めちゃいますから」
高血圧、糖尿病、慢性便秘、腰痛の御老人
先ず父として、診察して、カルテに記入
そのうち、「あのう」「何でしょうか?」
「知り合いの孫のことなんですが、」「ハイ」
「~病と~は関係あるんでしょうか?」
延々と続きそうになったら、鶴の登場
「診てみなくっちゃ 解かんねえなぁ。近くに住んでいるんでしょ? 一度 その知り合いに 連れて来て頂戴って言って頂戴」
「それが、東京に住んでいて、、」
「それじゃ、しょうが無いよ。ついでの時って話」
あるお方
父としての時間が終わろうとしていると、突然
「統合失調症ってなんですか?」
「えっ?」
話は一方的に9:1ぐらいの割合で、お方からの質問が続く
回答も続く
「その心療内科の先生が紹介状も書かず、薬も出さなかったわけですから、あまり、御心配しなくてよろしいのではないでしょうか」
「それが、●◎有名大学のカウンセリングに直ぐ行くようにって、言ったんですよ」
「それで、本人が行ったのですか?」
「分かりません」
「何故でしょうか」
「息子が来るなって 言うものですから」A
「行って様子見たらいいのではないですか?」B
「本人が嫌がることしていいんですか?」C
「一般の場合、人が嫌がることをすると確かに、嫌になりますね」
A B C が繰り返えされる。
父からだんだん鶴になる
「でも、一般じゃなくて、緊急の場合は 話は別でしょ? せっかく有名大学に入ったんだから、途中でもったいないことになったらこまるでしょ?」
Cプラス「で、行ったら病状が悪化することありませんか?」
完全鶴になる
「まあ、私があんたの御亭主ならね、行ってこいや、俺は心配しなくていいかからよ 嫌われても それが母親の愛情ってもんだから、腹痛めて生んだ息子なんだから って言うけどな」
分かったような、分からぬような うなずきを残してお方は出て行く。
「ハイ 次の患者さん お呼びしてください」父
待ち時間の限界
人間の待合での待ち時間の限界は「15分」と平素の感覚がある。
大病院でのそれは「2時間30分」である。それ以上になって、何の診察も受けないで、パソコンの画面ばかり見ている医師に「次は~に検査の予定です」
ハイ 疑問も疑念も感じない。 感じすぎるのが町医者の待合室
大病院
「結果は次回説明します」
「いつになれば、結果でるんですか」「次回に」
当院
「結果は、すぐに出ます。次の検査の必要性は、その結果によります」父
人診て せざるは 勇無き也
梅ちゃん先生の父
隣の鶴太郎
関東やくざによく間違われる
ドクター康仁 記