余計なお世話だ!って患者さまに言われたら?
本日の「一般診療皮膚科講座」
風体 渡世人 職業 会社役員
入ってくるなり、ドスッと 対面(といめん)に鎮座
問診表に視線を落とす私。
勝手に怒鳴り声で、おののく看護婦に一声
「この間サ、フランスに行ってヨ 映画祭り(まつり) 観たわけ」
「そうなんですか?」と看護婦
「そんなんだヨ」と、
自分から、話掛けて、後が続かない。
真っ赤にただれた、額と口
脇の頭も真っ赤っか。
歳に似合わず、黒過ぎる 少ない髪
瞬間診断
慢性の再発性、接触性皮膚炎です。 はあ~?
要するに、染め過ぎのかぶれなんです。
「だからヨ、あそこんとこの 皮膚科 行ったのヨ」
はい それで?
「すぐに治るんだけど、また出ちゃうわけヨ」
はい、そうですか
「んでヨ。出なくなる薬(やく)って、あるんだろう?」
「ありません!口ひげも染めてるんでしょ?
んだから、口の回りも真っ赤っか、頭の方は、地面まで」
「ねえんなら、なんで受付したんだヨ。」
「言われても、医者は患者を選べませんし、選択権がないんです」
「洗濯~? 汚れもん扱いされたんじゃ しばくゾ」
「染めなきゃいいでしょ?それ原因なんだから、お互い歳なんだから、
いっそ、染めない方が、見栄えするんじゃない? (西部進口調で)
まさかですよォ 下の方まで ってことになると そりゃ いわゆる
一大事ってことで」
「大きなお世話だ!」
さあ、ここなんですよ 押さえどころってのは
「小さなお節介だったら、御免ヨナ、でもさ、止めた方が いいと
おいら が思ったから つい 口が滑っちゃって まあ 落ち着いて」
「薬ありそうだなァ、出してくれヤ」
「はい お出しします。でも再発防止は自信が無いですね」
「藪(やぶ)じゃないの?あんたは?」
「はい、藪の中で育ったもんですから、芥川だったか、黒澤だったかぁ
(藪の中)って、御存知でしょう? 映画好きなんだから」
「知らん」
「お薬、出来ましたぁ。先生」と看護婦
「すぐに良くなりますよ、安心して。私はこの辺のホジュン、ある時は張仲景って言われ てるんですから」
「ん?」
「んだけど、なんか、経験では、毛染め繰り返すと、癌 癌 あっと驚く
肝~臓がんが多かった 思い出って あっちゃうんですヨ。」
「えっ?」
「では、お大事に」
「はい、帰ります」
「はい、さようなら」
背中が恐怖を物語る、消え行く 凶暴
「あっ 誕生日がマジ、間近 なんですね、おめでとうございます」
[Happy Birthday ! no return!]
「ハイ、アリガトウゴザイマス 糊(のり)?」
「すて!ろ!いど!! たっぷり 入れときましたから!!」
「捨て?ろ!井戸? 前のポスターか あんがとサマデシタ」
夜も更けて、犬の遠吠え 消えにけり
明日も犬猫 来るのやら
ドクター康仁 早期に退院します。 こういう時間外診療
は 滅多にありません。
念のため。
Marilyn Monroe
“Goodnight Mr. President”
An original wood-cut print by Dr. Kojin,
midnights September 2012.
Also being put up with an original wood-cut?