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不妊症の漢方治療

2008-04-04 09:50:40 | 月経前後不定期

生理不順と不妊症の関係 月経前後不定期

月経前後不定期とは?

漢方医学では予定より生理1週間以上早く来たり、1週間以上遅く来たりすることが連続して2回以上続く場合を月経前後不定期と呼んでいます。生理不順の一種です。不妊症に月経前後不定期を伴うことが多いのです。

漢方医学での分類

大きく分けて4型に分類されますが、移行型や混合型ももちろんあります。

専門的な用語が並びますが、我慢して読んでください。

肝気郁滞(がんきうったい)型不定期(郁滞は鬱滞と日本語では書きます)

まず生理の量は不定です。生理に血塊が混じることがあります。胸苦しい感じや脇腹の張った感じが多く、遊走性の脇腹の痛み、生理前の乳房痛、下腹部の張った感じの痛みがあります。何より精神的に抑鬱(よくうつ)傾向があることが特徴です。舌診では薄白苔か薄黄苔で脈診では弦脈をみることが多いのです。

治療原則は、疏肝理気調経(気の流れを良くして生理周期を正常化する)で、使われる方剤は逍遥散(しょうようさん)の加減です。専門的には逍遥散は肝郁血虚脾弱証の治療方剤です。

 柴胡 薄荷 茯苓 白朮 当帰 芍薬 が基本生薬であり、患者さんの体質にあわせ次のような加減をします。

気鬱血淤(きたいけつお):丹参 益母草 延胡索 蒲黄 など加味

気の流れが停滞するタイプですので、血の鬱滞が起きて淤血が生じることもあります。これが気鬱血です。

肝郁化火(がんうつかひ):丹皮 梔子 などを加味

気の流れが鬱滞して長くなると「火」に変化します。臨床的には、のぼせや、精神的ないらいらが強くなり、ひどい場合には怒りっぽくすらなります。

肝郁犯脾(食欲不振など):厚朴 陳皮など加味

肝気鬱滞に胃腸障害が併発した場合です。

腎陰虚(がんじんいんきょ)型不定期

陰血不足ですので生理量は少なく、生理の色は淡く、生理の質は希薄です。めまいや耳鳴り、腰痛を伴うことがあります。

舌診では少苔 脈は細で尺脈は弱です。

治療原則は補陰調経で、中国では固陰煎(こいんせん)加減を用います。

熟地 山茱萸 山薬  菟絲子 遠志 五味子 党参 炙甘草が基本生薬です。

気血両虚(きけつりょうきょ)型不定期

まず生理の量が少く、色が淡く 質が希薄です。 疲労倦怠が著しく、面色無華(顔色につやがなく)舌診で舌質の色が淡く薄白苔です。 脈は細弱です。

治療原則は気血双補です。八珍湯加減を用います。

党参 茯苓 白朮 炙甘草 当帰 熟地 白芍 (これに川を加えると八珍湯になります)黄耆 肉桂を加えたものが十全大補湯であり、遠志 五味子陳皮を加味した人参養栄湯もあります。

肝腎不足(がんじんぶそく)型不定期

専門的には腎陰虚の証に肝陰虚の証が加わる場合を言います。

中国では定経湯加減を用います。

柴胡 ?芥 当帰 白芍 山薬 茯苓 菟絲子 熟地が基本生薬です。

ここまでは漢方の素養がないと無味乾燥な言葉の羅列にしか見えませんが、具体的な症例を挙げてみましょう

A子さん28

主訴 不妊症

排卵期がやや遅くなり、黄体ホルモンの分泌が少ない。基礎体温表の高温期が2週間以内で、結婚以来5年間、不妊です。足が冷え、肩こりがあり、顔色がさえず、艶がなく、若白髪を気にしていました。

生理の量はばらばらで、多い時が少い時がある、生理が遅れたり、早くなったりする。生理痛がある。疲れやすく、声が小さいとよく言われます。舌診では舌質の色が淡く薄白苔でした。 脈は細弱です。

ここまでくれば、「気血両虚」タイプがメインの月経前後不定期と診断できるはずです。

漢方医学では、子宮から起こる衝脈のことを“血海”と言い、生理の発現に密接に関係していると考えます。衝脈が空虚になると月経が不定期になります。

血海が空虚になる理由は、血脈をつかさどる“心”と、血の源となる水穀精微物質から営気(栄養)を消吸収する後天の元である“脾”の機能が衰えているからと考えるのです。

「心脾兩虚,気血不足」による衝脈の充実不足と考えます。

古来より、帰脾湯(きひとう)が有名な方剤です。

また、若白髪、腰痛、冷えなどは腎虚、特に腎陽虚の証が絡んできていると考えられますので、補腎薬を加味しなくてはなりません。

さらに、高温期を安定させるためには、月経周期療法で述べたように、高温期に、補陽薬を中心に少量の補陰血薬を併用して、受精卵を子宮内に着床させ妊娠を継続できるようにすることが大切になります。

黄体期方を併用すればもっと確実に妊娠するようになるはずです。

黄耆 白朮 准山薬(補気健脾)仙霊脾 巴戟天 鎖陽 菟絲子(補陽)女貞子(補陰)などを用いました。

A子さんは、治療開始後半年で妊娠、無事元気な男児を自然分娩されました。

「終わり良ければすべて良し、漢方また良し」なのです。

不妊症の漢方治療のお問い合わせは下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 岡本康仁堂クリニック