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ダイエット漢方とは?

2008-04-16 16:59:03 | ダイエット

脱メタボリック症候群の漢方治療

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)の効用①

防風通聖散は中国金時代の寒涼派の劉完素(りゅうかんそ)または劉河間(りゅうかかん)(金:11201226)によって創製された方剤で、医書「宣明論」に述べられたものである。剤(下剤)が配合されているのが特徴である。

それ以前の中国漢方での「傷寒論」に多く述べられる「補法」とは異なり、金元の時代になると、清熱の瀉法という考え方が生まれた。
「傷寒論」では冷えを温めるというのが治療の基本である。反対に金代の劉完素らは、すべて病は熱(炎症)が原因であり、熱が体を消耗させてゆくという考え方にたった。そしてその熱を下げるには邪、即ち悪いものを汗で発散し、吐かせ、下すという当時としては強烈な瀉法を推奨した。つまり汗吐
下(かんとげ)を重んじた。無論、現代医学の常識からしてみれば、「補うべきものは補い、瀉すべきものは瀉す」のが正しい。

瀉方のみでは反って体を弱らせてしまうことから、気を補いながら清熱しようという考え方が同じく同時期に生まれた。これも学問の流れとすれば当然のことである。即ち甘温除大熱を提唱した李東垣(りとうき)で、日本でよく使用されているエキス剤の補中益気湯が有名である。
金元以前の「和剤局方」にある十全大補湯や人参養栄湯という処方も医療用漢方エキス製剤の中でよく知られているが、補中益気湯は気を補いつつ清熱するという点に違いがある。

また元の時代には朱丹渓(しゅたんけい)らが、「滋陰降火」という考え方を提唱した。熱は陰虚すなわち、わかりやすく、水が涸れる状態と単純化して考えれば、滋陰つまり水を補うことによって熱を冷ますという考え方である。これは強い清熱解毒薬を用いる瀉法とは異なり、いわば側面から清熱するという考え方である。いわゆる虚熱が生じる慢性消耗性疾患に対し、現代でも重要な漢方手法の一つである。これら金元の処方を集大成したのが明代の「万病回春』で、江戸初期に日本でも大流行した。

今から800年前の中国金元時代の「新学派」の強烈な瀉剤方剤がなぜダイエット漢方なのか?

まずダイエット漢方なる考え方は存在しない。創作新語の類である。

ダイエットコントロールとは栄養摂取を調節することによって、理想体重に体重を近づけることを指す。現在、ダイエット漢方とか肥満解消漢方などと銘打って販売されている「肥満解消漢方薬」は、それ自体では栄養摂取の調節作用は無いと考えてよい。最近販売されているこの種の市販漢方薬はほとんど防風通聖散の別名である。いわば、「800年前のパクリ」である。きちんと「防風通聖散」と銘打つべきであるが、それでは古めかしくて「売れない」のだろう。

そもそも、劉完素らは人の病因として、外因のなかでも火熱が最も重要だと考え、熱病に対して、多くの苦寒薬が配合されてある防風通聖散により三焦の実熱と表裏の熱証を双解(ともに解熱するの意味)したわけで、800年後に肥満の薬として使用されることは想像もつかなかったであろうし、また、劉完素らは当時の宮廷のご婦人に肥満症の治療目的で使用したことは無かった。

防風通聖散の組成

生薬(赤は温薬 青は寒薬 グリーンは平薬)とその作用

 ?芥 防風 麻黄 薄荷(発汗邪:発汗させることで解熱させる)

 大黄 芒硝(泄熱通便:下痢をさせて熱を便とともに体外に出す)

 石膏 黄芩 連翹桔梗(宣泄肺胃熱:体内の熱を直接的に下げる)

山梔子 滑石(清熱利湿:熱を小便に排泄させる)

当帰 白芍 (養血活血)

白朮(健脾化湿)甘草(和中緩急)

防風通聖散の古典的方意

表裏倶実の状態に用いるとされる。現代風に言えば感染症で発熱している状態と考えられる。苦寒薬(青)による清熱作用が主体であり、麻黄による発汗解表(発汗させて解熱させる)は補助的効能である。

瀉熱通便といい、大黄、芒硝などで便通を改善させ、内熱を便とともに体外に出す。

同じ考え方として、内熱を小便に出すという意味で、滑石や山梔子が配合されている。

配合の妙は、当帰、白芍、川芎のいわゆる養血剤「四物湯」(熟地黄は除かれている)の配合を見ることである。これらは補剤として働いている故に、防風通聖散が単なる瀉剤でないことは明らかだ。

全体で「発汗させ表を傷めず、瀉下して里を痛めず」と古書に記載がある。さらに「悪寒が無ければ麻黄を除き、 高熱口渇が無ければ石膏を除く」とある。

防風通聖散の古典的な適応症

カゼをひいて喉が痛く、目の充血や鼻閉がある場合。内熱のために口が苦く、喉が渇き、尿量が減少し、便秘傾向がある場合。炎症が肺に及び、風熱犯肺(ふうねつはんはい)といい、息苦しく、粘調淡があり、咳嗽があり、舌診で紅舌 黄?苔が観察され、脈診で脈浮滑数などが観察される場合である。

現代漢方の防風通聖散の応用としては、祛の作用を持つので、風熱壅盛で生じる皮膚化膿症、蕁麻疹、痔核などにも有効であると考えられる。

防風通聖散の肥満症への応用の根拠

はっきり言ってしまえば、西洋医かつ漢方医である私自身はその根拠をまだ、見出せない。

摂取カロリーより消費カロリーを増加させなければ決して減量は出来ない。運動もせずに、カロリー摂取を減らさず、ただ薬剤を以って減量させるためには、まずは基礎代謝を上げることである。それには体を温める温薬が必要だ。

防風通聖散はその方意から寒涼薬が多い、寒涼薬は代謝を低下させる。温薬の中で、代謝を亢進させる可能性が高いのは、麻黄(まおう)である。麻黄にはエフェドリンが含まれている。エフェドリンは発汗作用と共に、気管支拡張作用がある。体内脂肪の代謝を亢進させる作用も報告されている。そうであれば、麻黄単独でもかまわないかも知れない。以前、代謝を亢進させる目的で甲状腺末をやせ薬と称して販売していた悪質な業者がいた。人為的に甲状腺機能亢進症を起こさせたわけである。

肥満症と食べ過ぎは正の相関関係にある。大黄や芒硝のような瀉下剤は便秘を解消させる。宿便が無くなれば、体重は一時的に減少するだろう。ただし、真に減量させるまで通便剤が効くのであろうか?疑問は多い。

思い切り代謝を上げて、発汗させ、下痢をさせればどんな健康体でもげっそりと痩せてくる。しかし、これは危険な発想である。悪魔の誘惑に近い

「下剤を飲んで、サウナに入れ」という極論は排除されなくてはならない。

防風通聖散には活血薬が配合されている。この活血薬も脂肪代謝を亢進させる意味を持つかもしれない。食事によって摂取されるはずの脂肪の吸収を抑える生薬などの検討と配合が今後の防風通聖散の配合課題になるはずである。

全ては、今後の臨床的な総合的な研究が必要である。元来の防風通聖散の方意は肥満解消やメタボリック症候群の予防、改善ではないのであるから。

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