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中国経済はバブル崩壊寸前か?!―高橋 洋一氏と長谷川 慶太郎氏の著書を読んで

報道では米朝首脳会談が2月27,28日にベトナムで開催されることが話題になっている。
一部の見方では大統領再選とノーベル平和賞獲得に向けて“トランプ・ショウ”で盛り上げようとすることが中心だろうと言っている。そのために“アメリカ・ファースト”の政策が軸であろうと予測されている。従がって、核実験とICBM試射の停止継続を担保するための条件交渉、つまり北に対する見返りを何にどの程度とするか、であろうと思われている。そうなれば相手の北が交渉目的としているレベルが大きな問題となる。

ここからは憶測だが、恐らくトランプからは“経済援助○○○億ドルで手を打っておいたから、後は晋三上手くやっといてくれ。”と ようやく始めてお鉢が回ってくる。“エェー?!”と目を丸くしても後の祭り。拉致問題も何もかも、日本側で交渉する羽目になるのではないか。つまり米側はビタ一文金銭的負担を負わないことで、“アメリカ・ファースト”を実現させる。
そうなると日本の交渉目標は既に決められた○○○億ドルに見合う、拉致問題解消条件交渉となるのではないか。或いは、既にその額は先日の事前の電話会談で伝えられている可能性は高いかもしれない。安倍氏は米国側トランプの決定を黙認して、その制約の中で次に北と交渉する準備を余儀なくされ、外務省等当局者にその旨伝達或いは指示を出しているのではないだろうか。(指示には何らかの戦略が含まれるはずだが、それはあるまい。)北は核や中距離ミサイルは保有したままとなり、つまり日本への脅威は残ったままの経済援助交渉となるのではないか。
安倍氏はトランプ追従のまま“ライフ・ワーク”に取組むのであろうか。現に、彼は国会答弁で“政権責任者としては仕方がない”と言い訳をしている。否、それでは“政権責任者としての矜持”があるとは言えないし、何の工夫も交渉力もあるとは言えない。

ところで金正恩は鉄道で中国入りと伝えられているが、その後も鉄道利用であろうか。ならば中国ご自慢の高速鉄道を使うのだろうか。それとも高速鉄道は使わず、北の車両のままで延々鉄路を行くのだろうか。そうなれば高速鉄道を使わない理由は何であろうか。安全性に問題ありと見ているのだろうか。


さて、私は2月の初め あるテレビ番組である日本の大学教授が“中国のGDP伸び率は実は1.5%程度ではないか”と言っていたことから、その真実性が非常に気懸りになって来ている。
又その番組では、先頃中国国家統計局の発表では2018年のGDP伸び率は前年比6.6%となっていたが、中国人民大学教授でマクロ経済学者の向松祚氏の講演内容を次のように報じていた。政府内部重要機関の統計では1.67%、さらに別の見方ではマイナス成長であった可能性もある。となると2019年は“全ての資産価値は急落する”可能性がある、というもの。また習近平も共産党の重要メンバーに“灰色のサイを警戒しろ”と発言した、ともいう。“灰色のサイ”とは日頃気にならないものだが、一旦暴れだすと手が付けられないリスクのことだという。

そういう見解の根拠となる数字も示していた。曰く、中国全土の空き家5000万戸。不動産時価総額65兆ドル(7,100兆円)、108兆元(1,800兆円)国営鉄道の債務規模5兆2,800億元(85兆円)、国内負債総額600兆元(9,700兆円)だという。中国のGDPがほぼ90兆元というから、どの数字も大変な規模だ。

“全ての資産価値は急落する”は言い換えれば“バブルは崩壊する”と同じこと。中国人民大学とは中国共産党が最初に創設した大学で経済官僚育成のためのエリート大学だとのことで、その教授の発言なので、信憑性は高いはずだ。
しかしながら、その後に私が目にする報道や解説では一切そのことに触れられることはない。これはどういうことだろう。例によって、日本人のアンテナの低さであろうか。
しかし確かに、バブル崩壊前はおおよそ世間はそんなもの。先の300年に1度と言われたリーマン・ショックの時も金融機関倒産から、はじめて大騒ぎとなった。事前には何らの警戒も無かったものだ。

そこで私も既に発刊されている書物を探して次の2冊を読んだ。
高橋 洋一 (著) “中国GDPの大嘘” 講談社 (2016/4/20)
②長谷川 慶太郎(著)“中国大減速の末路” 東洋経済新報社(2015/7/2)
発刊日時は3~4年前。既に、そのころから指摘があって、その後も言い続ければ“オオカミ少年”にさせられてしまうことを恐れて、沈黙しているのだろうか。確かにマスコミはその頃、中国にバブルのゴースト・タウン鬼城がいくつも出来上がっているとシャドゥ・バンキングと共に盛んに報道していたように思うが、最近何の続報もない。事態はそれ以来良くなったのか、悪くなっているのか一般人には何もわからない。
さらに、先週の“朝生”では“トランプ流外交とニッポン”と題して、“ド~なる?!「米中新冷戦」”も議論されたが、中国経済の現状分析について議論する参加者は無く、期待がそがれた。本当に、最早中国経済現状は大丈夫と見て良いのだろうか。いよいよ際どくなっているのが現状ではなのだろうか。

高橋氏は①の著書で、中国5000年の歴史で孫子に代表される戦争術には、敵をあざむく偽計を良しとし、そのためにハニートラップや偽造統計の原点があると指摘している。中国の統計偽装と言えば李克強指数が有名だが、高橋氏もこれに言及している。知らなかった事実だが、李克強指数は李克強が遼寧省党書記だった時に言った台詞で、遼寧省でのことで、決して国全体のことではないらしい。つまり遼寧省では、電力消費量と鉄道貨物輸送量、銀行融資額の3つの指数だけが信じられ、これで景況を見ていると。しかし、これは製造業中心の遼寧省だから採用できる指数だという。
また高橋氏は、“中国の実際のGDPは(公表値の)3分の一”と結論している。6.6%の公表値 の1/3ならば2%程度で≒1.67%である。ということで、プラスならまだしもマイナスが真実ならば論外で、今にも崩壊となるのではないか。
もし、中国に投資している中小企業があるのならば、早々に逃げ出す必要があるのではないか。

これらの本を読んだ上での私見だが、高橋氏が言うように中国は社会主義市場経済であることを忘れてはならない。国有企業がその経済の根幹に存在する。従がい、容易に倒産しないので、バブル崩壊とはならない。民間企業は大半が中小零細で、多少倒産しても大きな影響はない。しかし放置すれば失業者が確実に増えて不況に向かうのは事実だろう。恐らく時間はかかってもトレンドとして崩壊に向かってはいるのだろう。
そこに、“朝生”で議論のあった“米中新冷戦”となって余計な二重苦となってしまった。米側はしたたかに、それを見込んだ可能性はある。日本ではそこまで言及しないのは何故なのだろう。一方、習近平としてはここで、弱みは見せられない正念場なのだろう。しかし、極めて厳しい状況に追い込まれていることになる。

②の著者・長谷川氏は80年代頃に活躍した評論家で、工学部出身。高橋氏同様理系。だが御高齢で、最近はテレビで見かけることはあまりない。この本の議論全体で高橋氏との論旨に矛盾なく、どちらがどんな議論だったか特徴を見いだせないほどで、記憶の中で融合してしまっている。しかし、副題の“日本はアジアの盟主となる”は今や余計な見果てぬ夢ではないか、という気がする。

高橋氏同様アジア・インフラ投資銀行AIIBには否定的。中国の不況脱出のための、政権の苦肉の策だと評している。つまりバブル崩壊寸前の状態で国内需要が無くなったところで、国外に投資して中国企業に紐付き受注させて景気回復を狙うというもの。それで上手く行くのかという論旨。
未だに日本企業の強さを誇る論調が目立ちすぎる。日本企業を論評するなら、なぜ日本株が割安に放置されたままなのか、3本の矢政策にも拘らず何故FANGやHUAWEI(ファーウェイ)にキャッチ・アップできる日本企業が出ないのかの議論が今や必要なのだ。内向き論理では生き残れず、シャープが中国に主力工場を持つ台湾外資の軍門に下った時代になっているのが現実なのだ。それに世界の動きは早い。少し前、栄華を誇ったサムソンは携帯電話の中国市場でHUAWEIに取って代わられて落日の中にいるのだ。
また“中国崩壊は目前に迫っている”とは言うものの、残念ながら“中国崩壊のシナリオ”の項を読んでも具体的な筋道は示されていない。知りたいのは、中国の場合、何がきっかけになるのか、だ。それが分かれば、今後それを重点に監視しておけば良いはずだ。

上海株価は、政府管理市場だからあてにはならない、と思う。ある証券会社が、“絶対に儲かる”と政府系人脈を臭わせていたことがある。だから官制相場なのは間違いない。前の高橋氏も役人が一般人から金を巻き上げる装置だと指摘していたように思う。とは言うものの、手掛かりにはなるかも知れない。

この本で出色なのは、平和で安定の時代は“デフレになる”との指摘だ。今以外に1873年~96年の24年間は“グレートデプレッション(大不況)と呼ばれる「大デフレ」の時代”で“普仏戦争後の「平和と安定」の時代”だったとの指摘だ。この時、物価が下がったのは産業革命が世界規模で進行し、供給が増加したためと暗に指摘している。決して経済成長しなかったためではないと言っている。頭からデフレを不況と連想して、成長が無いとか、資本主義は死んだかも知れないと議論するのは早計なのかもしれない。

マッ、どうなれば“灰色のサイ”は暴れだすのか、その時、日本経済はどのように影響されるのか、或いは日本は政治的にどう振る舞うのか、しっかりした歴史観を基本にした戦略が求められるのではなかろうか。
しかし、そんな議論は全く日本には聞かれないのが大いに残念なところだ。日本人に論理性や戦略性を求めるのは無理な話なのだろうか。
日本の国益を何と考え、それを実現するべくどのように戦略的に外交を進めるのか、その延長上に韓国とどのように付き合うのか、論理的に考察するべき問題なのだ。そのために必要な情報をどのように収集するのか、それが安全保障の根本になければならない。無暗に軍事力増強するのが、必ずしも効果的な安全保障ではないはずだ。とにかく喫緊の課題として、中国経済は要監視対象としなければならない。

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