クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

クールジャパンに関連する本02

2010年04月24日 | coolJapan関連本のリスト
また、ここ2・3ヶ月の間に読んだ本からいくつか、短評をしておく。いずれきちんとレビューをしたい。

◆『欲しがらない若者たち(日経プレミアシリーズ)

この本は、もともとは現代日本の若者たちの意識変化とそれに伴う消費動向の変化を探り、これからの企業戦略に役立てようという企図のもとに調査され、マーケッテリング専門誌に報告されたものだ。しかし私にはこの調査結果が、日本人の生き方の大きな変化を物語る、かなり重要な意味をもつように思えた。

取り上げられた様々なデータから言えるのは、現代日本の若者が、物を買って所有するということに、あまり喜びを見出さなくなっているということだ。人に差をつけたいとか「格好つけたい」とか「もてたい」とかの動機から、車や高級品を買ったり、スポーツに励むという心性が消えつつある。若者がより満足を感じるのは、誰かと一緒にする体験であり、親しい相手と気持を分かち合う体験だという。要するに、あまり見栄をはったり、背伸びしたり、無理したりせず、自然なありのままの自分で生きていこうとする若者が増えつつあるようだ。著者は、「急激な経済成長と人口構成の変化が、他の先進国も経験していない次の段階へと日本を押出している」というが、こういう若者の意識変化も、マンガやアニメに微妙に反映され、世界に何らかのメッセージを発信しているかもしれない。

◆『日本辺境論 (新潮新書)

出版は去年の11月だが、大型書店にいくと、いまだにうず高く平積みされているので、売れているのであろう。しかし、私はこの本にはかなり不満がある。著者が最初にことわっているように「この本には、ほとんど創見といえるものは含まれていません」。それはそれでいい。しかし著者には、先人たちが語り尽くしてきた日本及び日本人論を、ちょっと新鮮な切り口で語る、語りのうまさがあり、なるほどと思わせるものがある。私が不満な点は別のところにある。世界標準の文明原理を発信することがなかった日本人は、文明の「保証人」たる先生を外部に求め、つねに教えを請う「辺境人」の性癖が骨の髄まで染み込んでいる。だったらそこに居座り、とことん「辺境人」でいこうという著者の発想に、限界を感じてしまうのだ。現代の日本は、もちろん世界標準の文明原理を発信していないが、かといっていつまでも学び続ける「辺境人」という傾向とは明らかに違う変化が、若者たちを中心に起っているのではないか。著者には、それが見えていないような気がしてならない。

◆『深い泉の国「日本」―異文化との出会い (中公文庫)

著者のトマス・インモースは、スイス出身だが日本に在住するカトリック司祭であり、日本ユングクラブ名誉会長でもある。彼は、「神道とヨーロッパの先史時代とは共通のものを分かち合っている」という。スイスは、ケルト文明のひとつの中心地であった。それで、縄文的な心性が現代に残る日本という土地で、少しずつスイスの過去に出会うようになった。日本という「深い泉」に触れることで、自分自身のルーツのより深い意味を見出していったというのだ。随所に、日本の民族芸能や神道儀式などへの、ユング心理学に基づく深い洞察がちりばめられており、刺激的だ。

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クールジャパンに関連する本01

2010年04月20日 | coolJapan関連本のリスト
ここ1・2ヶ月の間に読んだ本の中で、クールジャパンというこのブログのテーマに関連の深い本をいくつか選んで、かんたんなコメントを付けてみた。本格的なレビューは、順次書く予定であるが、おそくなってしまうかも知れないので、とりあえず数行での紹介をする。

なお「日本の長所」のシリーズは、間隔はあくまもしれないが、今後も何回か続けていく予定でいる。

◆『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす (NB online books)

遠藤誉著。今、中国の若者たちが日本のアニメ・マンガにいかに熱狂し、影響を受けているかを、中国の内部事情を知る著者が、綿密な取材によって報告する力作だ。たんに日本のアニメ・マンガの流行を追うだけではなく、中国の特殊事情の中でそれがどうしてこれだけ普及するようになったのか、なぜ、どのように中国の若者たちに大きな影響を与えるようになったのか、そして近年中国政府が、なぜその人気に危険を感じ、きびしい規制をし、対抗策を打ち出すようになったのか、までをつっこんで取材している。

◆『私を劇的に変えた 日本の美風

著者・呉善花は、韓国出身だが、日本に留学し、日本文化と韓国文化の違いに悩みながらも、日本文化への理解を深め、ついには日本に帰化した人だ。それだけに、日本文化への洞察力は、並大抵のものではない。とくにこの本で印象に残ったのは、「お陰さまで」という言葉に表現されるような日本人の生き方への洞察だ。蕾が花開くように、大自然の作用を受けて自分の中から内発して開花しようとするものに従うという自己のあり方が、「お陰さまで」という言葉には含意されているという。

◆『日本力

松岡正剛とエバレット・ブラウンの対談本。エバレット・ブラウンは、日本滞在のアメリカ人で、日本に伝承される食や生活の知恵、心身の調和、自然への畏敬の念などを実践的に追求する。二人の対話を通して、日本の古い文化と新しい文化との間に深いつながりがあることが洞察される。とくにアニメ・マンガ・コスプレ・ファッションなどに無意識のうちに伝統的なものが表現されているという指摘に教えられた。

◆『日本語は亡びない (ちくま新書)

金谷武洋著。日本語を、英語をモデルとした文法で理解しようとする愚かさを鋭く指摘する。英語文法は、主語-述語を基本とした人間中心の構造をもつ。英語の話者は、他との関係で自分を捉えるのではなく、状況から独立した絶対的な私(主語)を中心に考える傾向が強くなる。それに対して、日本語文法は、自然や状況中心の文法であり、英文法モデルで分析するには無理がある。むしろ、混迷する世界の救える思想が日本語には含まれており、だからこそ日本語の脱英文法化が急がれなければならないという。日本語だけでなむ、日本文化全般への著者の愛情を感じさせる本だ。
コメント (2)
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日本の長所05:とりあえず列挙すると

2010年04月18日 | 日本の長所
日本企業は、「見えない資産」(インタンジブルス)の宝庫であるという(『「見えない資産」の大国・日本』)。しかし、日本企業の「見えない資産」は、日本社会や日本文化の「見えない資産」を基盤にして成り立っている。それを少しでも多くの人が自覚して、私たちの「資産」を失わず、さらに育てていくことがますます重要になっている。

私は海外に長期滞在したなどの体験はないが、インターネットや本などで触れるかぎりでも、日本の社会が全体としていかに多くの長所を持っているかがよくわかる。その長所と思われるものを、とりあえず列挙してみよう。

1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 
3)治安のよさ、犯罪率の低さ 
4)勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること
5)サービスの質の高さ、完璧に近い公共サービスと人情味あふれる応対
6)清潔さ(ゴミが落ちていない)
7)環境保全意識の高さ 

以上は、これまでに調べてきた印象から、最大公約数的なものをあくまでも暫定的に列挙したものだが、今後、さらに検討するなかで、変更したり、項目を細分化したり、追加したりするなどしていくつもりである。各項目ごとに詳しく検討していくことも考えている。

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ところで以下は、これまでのこのブログの記事の中で「日本の長所」に多少とも関係するものである。探せばもっとあるかも知れないが、とりあず見つけたので参考までに。

2)「規律性、社会の秩序がよく保たれている」に関係して、日本人の規律性、秩序を重んじる傾向などが、端的に表れているもの。

あるアメリカ将軍の驚き

『世界中にアメリカ軍の基地があるけれども、朝八時半に従業員が全員来る基地は日本だけです。つまり遅刻がない。それは日本だけです。五時半に帰ったあと、備品が一個もなくならない基地も日本だけです。』

日本人の人間観・その長所と短所(2)

性善説に立って人を信用することを前提とした社会、基本的に人を信用して行動する関係。これが日本社会の秩序や治安のよさに関連していると思われる。



4)「勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること」に関連するもの。

日本人のここが好き

「国民全員が国の現実に責任を負っているのだ 真面目で勤勉、そして「質」をとても大事にすると思います 皆が一体となって一つの事に立ち向かい、成功させていくことが、日本人が自分の仕事に責任感を持ち、夢中になっているかということ」

日本人の仕事への責任感は世界一

「どれほど日本人が自分の仕事に責任感を持ち、夢中になっているかということ。日本人はそのことに誇りを持って欲しい。世界的に素晴らしい現象なのだから。自分の仕事に誇りと責任を持つという点で、世界一なのだから。その素晴らしさを意識してほしい、ということであった。」

平凡な日本人のレベルの高さ

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日本の長所04:どのように自覚するのか

2010年04月17日 | 日本の長所
前回の『「見えない資産」の大国・日本』の書評でも触れたが、日本人や日本文化がもっている「目に見えない資産」をしっかりと自覚し、それを意識的に維持して、さらに伸ばしていくことが、これからますます大切になると思う。

最近、それが少しずつ自覚化されつつあるのは、日本人の意識調査などからも確かだろう。そのひとつの理由は、海外でのアニメ・マンガや日本文化全体への人気(クールジャパン現象)が、インターネットなどを通して知られるようになったことかも知れない。それでもまだ日本人は、自分たちの社会や文化を過少評価する傾向の方が強く、自分たちの優れたところに充分気づいていないような気がしてならない。

もちろん自信過剰になってはいけない。かといって自信「過少」になるものこまりものだ。自信過剰は、前向きのエネルギーになることもあるが、独善にもなる。自信「過少」は、謙虚な向上心にもなるが、マイナスの内向エネルギーにもなる。どちらも、客観的な姿と「自己像」との間にずれがあるので、内に多少とも不安を抱え込むことになる。

自信過剰にも自己卑下にも陥っていない集団や個人は、自分に自分を偽らないだけ安定感があって、地に足のついたエネルギーを発することができるのではないだろうか。

しかし、自分たちの「客観的な姿」をとらえることは、言葉でいうほどに簡単ではない。他国との統計的な比較データなどがあれば、それがいちばん良いのだろうが、そうしたデータは限られたものしかないだろう。とくに「見えない資産」といわれるものは、客観的な数字としてとらえにくい面がある。

そこで、私がとりあえず考えている方法は、限られたデータなども参照しながら、本やインターネット上で公表された、外国人の体験談などをできるだけたくさん集めて、分類し整理していくことである。まずは、参考にできる本やウェブサイトの一覧をつくって見る必要があるだろう。

例としてあげると本で代表的なものは、『私は日本のここが好き!―外国人54人が語る』や『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』があるだろう。

インターネット上では、最近では、Global Voices from Japanというサイトで、「外国人の見る日本」というコラムコンテストが行なわれていて、その応募記事を読むのがとても参考になった。ウェブ上には、これに限らず、外国人の生の声を聞けるサイトが数多くあり、こうしたものもできる限り参考にする必要があるだろう。

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『「見えない資産」の大国・日本』

2010年04月16日 | 日本の長所
◆『「見えない資産」の大国・日本

「日本の長所」というタイトルでの連載は、あと1・2回は続けるつもりだが、今日は「日本の長所」に関係する本の紹介をしたい。テーマが連載と深く関係するからだ。

この本は、大塚文雄、R・モース、日下公人の三氏よる対談である。テーマは、長くソニーに勤務し、内外の関連会社で経営に携わってきた大塚文雄氏の「インタンジブルス(無形のもの、見えないもの)」という考え方をめぐって展開する。日本企業内の人や人相互の関係に含まれる見えない長所が、日本企業にとっての大きな資産であり、これからの日本経済に重要な役割を果たすという考え方だ。

現代は第三次産業革命が進行している時代という。第二次産業革命で、部品や製造工程の標準化が進んだが、そこに情報処理能力が加わって、製造業がさらに高度化するのが第三次産業革命である。この変化の中で、魅力的で高品質な製品を、必要な量だけ即座に生産できることがますます求められるようになる。

これは、「インタンジブルス」を常識として身につけている日本人、日本社会や企業にとって得意中の得意なことである。エリートが指揮、命令し、働く人が標準化されるアメリカなどにはない、働く人々が持っている目に見えない人間的な資産が「インタンジブルス」である。

具体的には、社員の一人一人がもっている道徳心、好奇心、改善や創意工夫の意識、仕上げに凝る、仲間を助けるなどの姿勢がいい例である。日本人は、自分を鍛え育ててくれるのがいい企業だと判断し、仕事を通して成長しようと考える傾向がある。隣の人間に無償で教えたり、逆に先輩に習ったりなど、制度化されない人間関係の中で受け継がれていくものも多い。これらは、目には見えないが企業にとっての貴重な資産と考えることができる。これらすべてが、独自の創造性を育み、ハイセンスな情報をともなった魅力的な超高級品を生み出すためのエネルギーとなるだろう。第三次産業革命の時代に、他国が真似のできない長所となるのである。

要するに日本社会や企業が元来もっていた個々の人間の資質とその関係という長所が、「インタンジブルス」として今後ますます重要な意味をもつようになるということだ。その意味で日本企業は、「インタンジブルス」の宝庫なのだ。しかし日本の「インタンジブルス」は誰もまだ深く分析していないという。

日本人にとって当たり前すぎることで、しかもあまりに豊富にありすぎるので、分析の対象になるとすら考えられなかったのかも知れない。しかし、これからはそれぞれがどれほど「価値ある資産」としてプラスの意味をもっているのかを、分析し、可視化し、体系化することがきわめて重要となる。分析され、その資産としての意味が自覚化されることで、その長所をさらに活かし、伸展させていく方法も見えていうるからだ。その分析・自覚化・方法かが、第三次産業革命を生き抜くための重要な戦略へとつながっていくだろう。

この本では、日本経済の発展や企業の経営の観点から、今まで自覚することのなかった日本の企業風土に含まれる見えない資産としての「インタンジブルス」を積極的に体系的に伸展させようという提言が語られている。私自身の関心は、日本という国あるいは日本文化全体について同じような自覚化、体系化を行なうことである。

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『日本はアニメで再興する』(2)

2010年04月13日 | coolJapan関連本のレビュー
◆『日本はアニメで再興する・クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった (アスキー新書 146)

前回も触れたよう著者は、「世界の若者の人格形成の日本のアニメやマンガがいかに大きなな影響を与えているかを、日本人自身もっとしっかり知らなければいけない時期がきている」と何度も強調する。実際に世界中の多くの若者やメディアに接した上で語る言葉なので説得力がある。いくつか若者の言葉を拾ってみよう。

「今の若いブラジル人の魂は日本のアニメで作られているんですよ」(ブラジル人、バーバラさん)
「夢中になったものは、これまですべて日本のものでした」「みな同じ人間。考えれば考えるほど、同じ結論(日本のものが好きになるということ)に世界の人たちが至るのは当然だと思います」(ブラジル人、カロリーナさん)
「友情、正義、人間関係に何が必要か、人生で大切なことの多くを、私はアニメやマンガから学びました」(イタリア人、シモーナさん)

ほかに、日本のアニメ・マンガから平和のメッセージを受け取り、「日本のアニメは平和のプパガンダとしてもっと活用すべき」と主張する若者もいた。こうした主張を日本人がもっと真剣に受け止め論じるべきではないかというのが著者の考えのようだ。

次に著者が強調していることに「コスプレとロリータの両立」ということがある。世界の「日本熱」にコスプレが与えた影響は、日本人が考えている以上に大きいと著者は考えている。アニメ・マンガのパワーに、コスプレ人気が重なって、その相乗効果で日本への関心がますます急上昇したらしい。

私もYoutubeで調べ、コスプレ関係の動画へのアクセス数が数百万規模になっていることから、それを実感した。さらに日本では、コスプレとロリータ・ファッションは別系統だが、海外ではアニメ・マンガ人気の延長線上で日本発のポップカルチャーとして、一人のファンが共に楽しんでいる場合も多い。

もう一つ著者が強調していることを挙げれば、アニメ・マンガが日本や日本文化のきわめて巨大な宣伝塔になっていて、そこから日本のファッションや食べ物だけでなく、日本語や様々な伝統文化への関心をすごい勢いで高める結果になっていること。にもかかわらず肝心の日本人がそれにあまり気づいておらず、日本人自身がもっと生の情報を知ってもらうと出かけていくような努力をほとんどしていない。さらにそこに隠されている膨大なビジネスチャンスも逃してしまっているのではないか、ということである。

ともあれ、世界中の日本発ポップ・カルチャー人気の実態をじかに体験し、精力的に取材を続け、それを公にしてくれる数少ない人として著者の活動は、重要であり、もっと多くの人が注目すべきであろう。

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『日本はアニメで再興する』(1)

2010年04月12日 | coolJapan関連本のレビュー
◆『日本はアニメで再興する・クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった (アスキー新書 146)

今日は、「日本の長所」の続きは休んで、昨日触れた櫻井孝昌のこの本について、印象が強い間にレビューしておこうと思う。

この著者の本は、『アニメ文化外交 (ちくま新書)』、『世界カワイイ革命 (PHP新書)』と、出版されるたびにこのブログでも取り上げている。外務省アニメ文化外交に関する有識者会議委員や、カワイイ大使アドバイザーなどの役目を持ち、世界を飛び回って、いま世界で日本のポップカルチャーがどのように熱狂的に迎えられているかを、生々しくレポートしてくれる。世界中の現場の熱を肌でじかに感じ、日本人がいちばんその熱狂を分かっていない、これでいいのか、と読者に訴えかける。三冊の中ではこの本がいちばん著者の熱っぽさを感じた。

本の冒頭では、2009年11月に氷点下のモスクワで開催された第一回目の『ジャパン・ポップ・カルチャー・フェスティバル』の様子が語られる。オープニングで特別上映される『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を観るため氷点下の中を4時間近く並んで待つロシアの若者たち。会場をおおうマグマのような日本熱。日本への片思いにも似た熱い想いとジャパン情報への「飢餓感」等々が、著者の強い驚き・衝撃とともに報告される。

同様の報告が、フランス、ブラジル、スペインと続く。著者は、世界のあちこちで何度もこの種のフェスティバルを開催したり、招かれて講演したりしているが、行くたびに新たな驚きがあるようだ。

今度の本で強調されていることをいくつか紹介しよう。

まず、海外に出るたびに現地のメディアからされる質問。
「若者たちの考え方や生き方に、アニメやマンガがものすごい影響を与えていることを日本人は知っているのですか?」

この質問は、以前の本にも紹介されていたが、同じような質問が色々な国で何度も出るとは知らなかった。ということは、アニメ・マンガが世界の若者の生き方に与える影響がかなり普遍的なものになっているということだろう。そしてその事実を知らないのは日本人だけということに、世界の人々がうすうす気づいているから、こういう質問が何度も出るのだろう。

逆の言い方をすれば、若者の考え方や生き方に大きな影響を与えるだけの内容や魅力や力があるからこそ、これだけ世界の若者に受け入れられているということだ。

では、アニメ・マンガに表現される日本人の考え方や生き方のどういう面が世界の若者に影響を与えているのか。こういうことについても日本人は無自覚だ。

ちなみに、その辺を少しでも明らかにしていきたいというのが、私自身の重要なテーマになっている。

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日本の長所03:長所を自覚する大切さ

2010年04月11日 | 日本の長所
国ではなく個人で言っても、あまりに自信過剰すぎても、逆に自己評価が低すぎても、いろいろと問題が出てくる。この点は、国家という大きな枠組みについても同じではないだろうか。個人でも国家でも、できるだけ実際に近い自己評価ができていることにこしたことはない。

その点、前回(日本の長所02)見たような調査の数字から判断しても、日本人の自国に対する自己評価は、あまりにも低すぎるようだ。

今日、手元に届いた櫻井孝昌の『日本はアニメで再興する クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった (アスキー新書 146)』は、たいへん興味深く、先ほど読み終わったばかりだ。近々レビューを書くつもりだが、今日のテーマに関係して心から共感する文章に出会ったので、ここに紹介したい。

「世界の若者が、アニメやマンガ、ファッションを通して、日本に抱いてくれている印象は、『敬意』という言葉がもっとも近いと私は考えている。
 われわれには当たり前のように目の前にあるアニメやマンガやファッションと、世界の若者たちは、オリジナリティーに溢れ世界のどこからも生まれてこないものと見ている。
 まず日本人自身が自分の周りにある壁を崩し、世界から日本がどう見られているかを知ったときにこそ、よりよい世界にしていくために自分たちができることも、出口のない不況に悩み続ける年月に終止符を打つために何をなすべきかも、見えてくると思うのだ。」

 世界に好影響を与える国として日本への評価が高い、ひとつの大きな理由に、アニメ・マンガが世界に広がり、それらを通して日本という国がイメージされていることがあるのは確かだろう。もちろん優れた工業製品から得る印象というものあるであろう。それらが一体となって日本の好印象を生み出している。

 しかしもうひとつ忘れてならないのは、実際に日本人に接したり、来日したりした外国人が、現実の日本から受ける日本の印象だ。(続く)

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日本の長所02:自己評価が低い日本人

2010年04月10日 | 日本の長所
BBC(英国放送協会)が中心となり、各国が世界に「好影響を与えているか」「悪影響を与えているか」を聞く調査については、このブログでも2回取り上げました。

世界でいちばん好影響を与える国は日本

日本「世界に良い影響」

2006年から行なわれているこの調査で、世界に肯定的な影響を与えている国の1位は3年連続で日本だったので、日本でもインターネットなどではかなり取り上げられました。

2009年に結果が出た4回目の調査では、21か国対象の世論調査で、「日本は世界に良い影響を与えている」という評価は56%となり、前回の調査と同じ数字でした(「悪い影響を与えている」は23%)。ただし順位は下げて、トップのドイツ61%、2位の英国58%、3位のカナダ57%に続き、日本は4位でした。

56%という数字は変らないのに順位を下げた理由はよく分からないのですが、調査方法に何かしら変更があるのかも知りません。この点は、のちほどよく調べて見たいと思います。

今日、この話題を再び取り上げたのは、別の観点からです。2008年(3回目)からは、日本の影響に関して、日本の世論調査結果もふくめることにしたことで、どのような変化が起ったかということです。2008年の調査結果では、好影響では日本とドイツが56%ずつで並びましたが、悪影響という評価ではドイツが18%だったのに、日本では21%だったので、総合的にはドイツが1位ということになります。

ところが、自国民についての評価の内訳を見ると、ドイツ国民は75%が「自国は世界に好影響を与えている」と回答し、10%が「自国は悪影響を及ぼしている」と回答していたのです。一方、日本国民は36%が「自国は好影響を与えている」と回答し、15%が「自国は悪影響を及ぼしている」と回答したのです。

ドイツ国民の自信の数字75%と日本国民の自信のない数字36%の差は、当然全体の調査結果にある程度の影響をおよぼしているでしょう。

自国の世界に対する影響力を尋ねると、日本国民は世界で最も謙虚で否定的だったという結果が出ているのです。ちなみにアメリカ国民が次に謙虚で、56%がアメリカが世界に肯定的 な影響を与えていると回答しました。反対に、91%の中国人と、87%のロシア人が自国が世界に対して肯定的な影響を与えていると回答したということです。(増田悦佐『格差社会論はウソである』、「Global Views of USA Improve (2008.04.01)」参照)

何を問題にしたいのかというと、世界でもっとも好影響を与えていると世界中から見られている当の日本人が、世界でもっとも自己評価が低いということです。つまり自分の長所がいちばん分かっていないのが日本人なのではないかということです。

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