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『「見えない資産」の大国・日本』

2010年04月16日 | 日本の長所
◆『「見えない資産」の大国・日本

「日本の長所」というタイトルでの連載は、あと1・2回は続けるつもりだが、今日は「日本の長所」に関係する本の紹介をしたい。テーマが連載と深く関係するからだ。

この本は、大塚文雄、R・モース、日下公人の三氏よる対談である。テーマは、長くソニーに勤務し、内外の関連会社で経営に携わってきた大塚文雄氏の「インタンジブルス(無形のもの、見えないもの)」という考え方をめぐって展開する。日本企業内の人や人相互の関係に含まれる見えない長所が、日本企業にとっての大きな資産であり、これからの日本経済に重要な役割を果たすという考え方だ。

現代は第三次産業革命が進行している時代という。第二次産業革命で、部品や製造工程の標準化が進んだが、そこに情報処理能力が加わって、製造業がさらに高度化するのが第三次産業革命である。この変化の中で、魅力的で高品質な製品を、必要な量だけ即座に生産できることがますます求められるようになる。

これは、「インタンジブルス」を常識として身につけている日本人、日本社会や企業にとって得意中の得意なことである。エリートが指揮、命令し、働く人が標準化されるアメリカなどにはない、働く人々が持っている目に見えない人間的な資産が「インタンジブルス」である。

具体的には、社員の一人一人がもっている道徳心、好奇心、改善や創意工夫の意識、仕上げに凝る、仲間を助けるなどの姿勢がいい例である。日本人は、自分を鍛え育ててくれるのがいい企業だと判断し、仕事を通して成長しようと考える傾向がある。隣の人間に無償で教えたり、逆に先輩に習ったりなど、制度化されない人間関係の中で受け継がれていくものも多い。これらは、目には見えないが企業にとっての貴重な資産と考えることができる。これらすべてが、独自の創造性を育み、ハイセンスな情報をともなった魅力的な超高級品を生み出すためのエネルギーとなるだろう。第三次産業革命の時代に、他国が真似のできない長所となるのである。

要するに日本社会や企業が元来もっていた個々の人間の資質とその関係という長所が、「インタンジブルス」として今後ますます重要な意味をもつようになるということだ。その意味で日本企業は、「インタンジブルス」の宝庫なのだ。しかし日本の「インタンジブルス」は誰もまだ深く分析していないという。

日本人にとって当たり前すぎることで、しかもあまりに豊富にありすぎるので、分析の対象になるとすら考えられなかったのかも知れない。しかし、これからはそれぞれがどれほど「価値ある資産」としてプラスの意味をもっているのかを、分析し、可視化し、体系化することがきわめて重要となる。分析され、その資産としての意味が自覚化されることで、その長所をさらに活かし、伸展させていく方法も見えていうるからだ。その分析・自覚化・方法かが、第三次産業革命を生き抜くための重要な戦略へとつながっていくだろう。

この本では、日本経済の発展や企業の経営の観点から、今まで自覚することのなかった日本の企業風土に含まれる見えない資産としての「インタンジブルス」を積極的に体系的に伸展させようという提言が語られている。私自身の関心は、日本という国あるいは日本文化全体について同じような自覚化、体系化を行なうことである。

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