クールジャパン★Cool Japan

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なんとなく、日本人

2009年11月02日 | 相対主義の国・日本
◆『なんとなく、日本人―世界に通用する強さの秘密 (PHP新書)

題名からは軽い読み物という印象を受けるかも知れないが、実は本格的な日本文化論だ。これまでの日本論の成果を受け継ぎながらも新しい切り口で日本語や日本人を論じていてとても面白かった。

欧米人にとって個人は、自立的でその主体性はいわば絶対視される。IとYouは相互排他的に独立している。日本人にとっては、個人に優先する「場」が存在し、「場」が個人を超えた優越性や自発性をもつことがある。

以上は、よくいわれることだが、著者はこの違いを日本語と欧米語の構造の違いにも触れながら、説得力をもって明らかにする。また、このような自我構造の違いを、どちらが優れていてどちらが劣っているという見方をせず、文化の違いとして相対化する。さらに「場」に生きる日本人の長所と短所、強さと弱さを吟味し、これからの日本に何が必要か、にまで触れている。

場に依存する日本人の自己においては、自分が属する共通の場がどの範囲かをまず把握し、その場の中での自己の相対的な位置を確認することが大切となる。それによって場の中での自己の役割構造が安定し、その役割を通して安心して自己実現を図ることができる。欧米人も自己の役割構造を意識することはあるが、それが自立的な個人に優先することはない。

日本人は、場の中での役割に過度に同一化する傾向があり、それが個々の仕事への誠実さや熱心さ、責任感などにつながっているのだろう。それは日本人の強さであり、日本を訪れた外国人が大いに賞賛するところだ。しかし、それが同時に日本人の欠点にもなっており、場での役割構造に依存するあまり、その構造が変化することへの強い抵抗を生む。場の役割構造から突出する人間は、「出る釘」として強く否定される傾向もある。

また著者は、日本人の根源的な強さとして、絶え間なくいろいろな文化を外部から取り入れ、日本的なものに変えて、自家薬籠中の物にしてきたことに触れる。有史以来の絶えざる日本化、つまり持続性と変容性の両立こそ、日本人と日本文化の特徴なのだという。取り入れたものを、役割構造の中での、日本人特有の熱情や責任感でもって、終わることなく精緻化し、極めていく、それが日本人最大の強みだというのだ。

おそらくマンガやアニメが世界的に流行する背景にも、著者がいう日本人の強みが直接・間接に働いていることは間違いないだろう。

著者の論点は豊かで、以上の要約ではきわめて不充分だが、全体として長い欧米での生活に裏打ちされかつ論理的にもしっかりした日本人論として高く評価すべき本だ。

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