クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

東日本大震災と日本人(3)「身内」意識

2011年04月05日 | 自然の豊かさと脅威の中で
これまでこのブログでは、以下の5点にまとめらるような日本の歴史・文化のユニークさがどのように日本人の長所を育んできたかを見てきた。

(1)狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。

(2)ユーラシアの穀物・牧畜文化にたいして、日本は穀物・魚貝型とで言うべき文化を形成し、それが大陸とは違うユニークさを生み出した。

(3)大陸から適度に離れた位置にある日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験をもたず、また自文化が抹殺される体験ももたなかった。

(4)宗教などのイデオロギーによる社会と文化の一元的な支配がほとんどなかった。

(5)西欧の近代文明を大幅に受け入れて、非西欧社会で例外的に早く近代国家として発展しながら、西欧文明の根底にあるキリスト教は、ほとんど流入しなかったこと。

今回の大震災の直後に見せた日本人の行動が、驚きと賞賛をもって世界に報道されたが、その賞賛された行動は日本人の長所のうち以下の点に関係が深かった。

1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 
3)治安のよさ、犯罪率の低さ 
4)勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること
5)謙虚さ、親切、他人への思いやり

このような日本人の長所が、日本の歴史・文化のユニークさのうち特に3)に関係が深いことは、これまで繰り返し見てきたところである。(それら関係するエントリーを下に挙げておく。)

これまで見てきたことをかんたんにまとめよう。日本では、自分たちの言葉や文化や習俗が根こそぎ奪われてしまうような、異民族による侵略はなかった。国内に戦乱はあったにせよ、規模も世界史レベルからすれば小さく、長年培ってきた文化や生活が断絶してしまうこともなかった。異民族との闘争のない平和で安定した社会は、長期的な人間関係が生活の基盤となる。相互信頼に基づく長期的な人間関係の場を大切に育てることが、日本人のもっとも基本的な価値感となった。安定した長期的な人間関係と相互信頼を保つことが可能であり、大切だったからこそ、上に挙げたような日本人の長所が育まれた。

逆に日本では、異民族による殺戮の歴史はほとんどなかったが、自然災害による人命の喪失は何度も繰り返された。しかし、相手が自然であれば諦めるほかなく、後に残されたか弱き人間同士は力を合わせ協力して生きていくほかない。

しかし異民族間の戦争の歴史の中で生きてきた大陸の人々は、「力の信奉者」とならざるを得ない。人間関係をどちらが強いか、上か下かで判断し、可能なら支配しよう、略奪しようと考えることが習性になってしまう。そこから、信頼を前提とした人間関係は育ちにくい。戦争が絶えないと、それが社会の常識になってしまうのは当然かも知れない。戦争と殺戮の繰り返しは、不信と憎悪を残す。

さらにある民族による他民族の征服が繰り返されると、征服した民族が支配階級を形成し、征服された民族が被支配階級として抑圧される傾向が生まれる。そのような歴史的背景からくる階級の差は今のヨーロッパにもある程度残っている。ケルト人やアングロ・サクソン人が被支配階級を形成し、征服したノルマン王朝の人々が支配階級を形成したイギリスがその典型だ。このような傾向は、その他の世界にもまだかなり残っている。貧富の差という形でも残っている。そして大災害などの混乱状態の中では、ふだん抑圧された人々の怨念が解き放たれてしまうのかもしれない。

日本の社会は、いい意味でも悪い意味でも均質性が高く、社会階層間の格差も貧富の差も世界に比べるとまだまだ少ない。同じ日本人という身内意識が強い。「身内」であるからこそ、大災害に直面しても、いや大災害の時だからこそ、互いに迷惑をかけず、助け合い、かってな行動をとって秩序を乱すようなことを慎もうとする意識が強く働くのだろう。

しかし、今回の大震災では日本人の短所もはっきりと現れた。戦争であれは敵を研究を、戦略を立てて、強力なリーダーのもとに一丸となって戦わなければ明日の命はない。戦争を繰り返してきた人々は、それが身に染みて分かっている。日本人にはそのような「伝統」がない。強力なリーダーの不在が今度の災害をより深刻なものにしてしまった。これも日本の歴史・文化のなせるわざなのだろう。

《関連記事》
日本の長所は、島国の歴史がつくった
『国土学再考』、紛争史観と自然災害史観(1)
『国土学再考』、紛争史観と自然災害史観(2)
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日本文化のユニークさ16:自然環境が融和を促した

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東日本大震災と日本人(2)日本人の長所が際立った

2011年04月03日 | 自然の豊かさと脅威の中で
東日本大震災後に日本の社会・文化がどのように変化していくかについて四つの視点を挙げた。一番目の視点からやや詳しく見ていきたい。

★大震災の後に、その恐怖と不安の中で日本人が見せた冷静さ、混乱のなさ、相互のいたわり合い、保たれた秩序などが、世界中で驚きをもって報道された。それが日本人とその社会・文化のユニークさを再度、鮮明に自他に思い知らせることになった。それは、日本人が気づかずに保持している大切なものが何なのかを日本人に自覚させた。その大切なものを守っていこうとする意識が今後強まっていくだろうし、そうしなければならない。

大震災直後の日本人の行動が驚きと賞賛をもって世界に報じられたことは、多くのニュースがブログが取り上げている。ここでそれらの記事を改めて紹介する必要もないだろう。ここではひとつだけ、地震後に日本人が見せた具体的な行動がTwitterでどのように報告されていたかをYouTube上でまとめたものを紹介しておく。

とりいそぎ:海外の反応 - 東北地方太平洋沖地震:そのとき日本のTwitterでは -


恐怖と混乱でパニックに陥ってもおかしくない状況の中で、にもかかわらず日本人が示した態度に世界の人々が心底驚いた様子が各国のメディアの報道ぶりからもよくわかる。海外で報道された記事中の驚きと賞賛の言葉には次のようなものが多かった。

誰もが冷静で落ち着いていた。なぜあのように冷静でいられるのか。
誰もが忍耐強く秩序を保って行動し、規律が保たれていた。
略奪行為もなく暴動も起きず、食料を奪い合う住民の姿もみられない。
最悪の状況下でも他人を気遣い、思いやりを失わなわなかった。
混乱の中でも自分の職務を責任をもって果たそうしていた。

このブログでは、「日本人の長所」について以下のような11の観点からまとめていろいろ考えてきた。

1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 
3)治安のよさ、犯罪率の低さ 
4)勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること
5)謙虚さ、親切、他人への思いやり
6)あらゆるサービスの質の高さ
7)清潔さ(ゴミが落ちていない)
8)環境保全意識の高さ
9)食べ物のおいしさ、豊かさ、ヘルシーなこと 
10)伝統と現代の共存、外来文化への柔軟性
11)マンガ・アニメなどポップカルチャーの魅力とその発信力

このうち震災直後の日本人の行動に関係するのは1)から5)だが、そのすべての特長が震災後の不安な状態のなかでも失われず、逆に際立った。危機的な状況の中でもそれらの長所が自然に保たれたから、強烈な印象をもって世界の人々に注目されたのだ。私たちが、ふだんあまり自覚していない自分たちの長所だが、世界各国の報道によって逆に自覚を促される形となった、「私たち日本人は、世界の目から見るとそんな長所があったのか」と。(地震後に示された冷静な態度については、日本は地震が多いので国民の間にある程度耐性があるということが大きいだろう。)

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東日本大震災と日本人(1)

2011年04月02日 | 自然の豊かさと脅威の中で
3月11日の東日本大震災の前後では日本の状況は激しく変わった。太平洋戦争とその敗北以来の大きな困難の直面しているといってもよい。と同時に日本は、歴史の重要な転換点を迎えている。日本人の意識や価値観がこの大震災や福島原発の事故をきっかけにして根本的なところで大きく変化していくのではないか、もちろんプラスの方向へと。この困難の中でも日本人や日本の社会・文化の良さがきらりと輝き、それが世界を驚かせた。そのことで逆に自分たちが持っている良さに日本人が少なからず気づいた。それだけでなく、この国家的な困難は、これまでこのブログで語ってきた「クールジャパン」という言葉を超えて、もっと深いレベルで、輝く日本を生み出していく可能性を秘めているのではないか。その可能性を以下のような四つの観点から考えてみたい。

1)大震災の後に、その恐怖と不安の中で日本人が見せた冷静さ、混乱のなさ、相互のいたわり合い、保たれた秩序などが、世界中で驚きをもって報道された。それが日本人とその社会・文化のユニークさを再度、鮮明に自他に思い知らせることになった。それは、日本人が気づかずに保持している大切なものが何なのかを日本人に自覚させた。その大切なものを守っていこうとする意識が今後強まっていくだろうし、そうしなければならない。

2)やれ無気力だ、生命力がないなどと否定的に見られていた日本の多くの若者たちが、今、被災地を援助するためのボランティア活動に積極的に関わっている。実は、若者たちがこのような行動を見せる、その背後にある意識の変化は、近年の若者を対象とした意識調査の中にすでに読み取れるのではないか。大震災以前から、日本人の意識変化が若者たちを中心にして静かに進んでいたのだ。それがこの大震災でひとつの形となってはっきりと現れた。

3)原子力発電所の事故による危機的な状況の中で、近代文明の根幹を支えるエネルギーの問題やテクノロジーの問題について、深刻な見直しが始まる。いやすでに始まっている。今後、当面のあいだ原子力発電は維持されていくだろうが、徐々に縮小されていくだろう。そしてよりエコロジカルな代替エネルギーの開発が急速に進んでいくだろう。科学技術への盲信に由来する文明の危機に直面した日本だからこそ、文明のあり方を変えるような新しい技術開発が進むことを期待する。その可能性も高いだろう。

4)以上の三点や、その他のいくつかの視点を踏まえると、日本は今後世界に先がけて「脱近代」の動きを加速させていくのではないかと思われる。日本文化は、非西欧諸国ではいちばん最初に近代化に成功した国であったが、良い意味でも悪い意味でも西欧的な近代化のモデルからははみ出してしまう面を多く持っていた。その良い面が、逆に近代文明の限界を突き抜けるための潜在力となって、日本を「脱近代」の方向に変化させていくのではないか。大震災と福島原発の事故は、その方向への大きな転換点となるのだろう。

以上、四つの観点を今後、それぞれもう少し詳しく検討していきたい。

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