引き続き『菊とポケモン』に触れながら話を進めるが、レビューというより、この本を参考にしながら、このブログのテーマにそって論じていくという形をとりたい。つまり、「日本文化のユニークさ」として四項目を挙げたうち、
(1)狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。
と関係させながら、「マンガ・アニメの発信力」の①「生命と無生命、人間と他の生き物を明確に区別しない文化、アニミズム的、多神教的な文化が現代になお息づき、それが作品に反映する」という視点から論じる。
◆『菊とポケモン―グローバル化する日本の文化力』(アン・アリスン、新潮社)
著者は、日本のポップカルチャーがポストモダン的な最先端の美意識を表現しているのはなぜかと問い、それを戦後日本の歴史的な要因と、日本文化の伝統的な側面から考えている(第2章および第3章)。今回はとくに後者にのみ触れたい。
「民族的で宗教的な伝統によって育まれた日本のアニミズム的な感性は、米国にはない日本独特のポストモダンの時代背景のなかににじみ出ている」と著者はいう。たとえば日本人はケータイに、ブランド、ファッション、アクセサリーとして多大な関心を払い、ストラップにも凝ったりする。そうしたナウい消費者アイテムにも、親しみ深いいのちを感じてしまうのが日本人のアニミズムだというのだ。そうしたアニミズム的な傾向は、『鉄腕アトム』に代表される多くの作品に見られるような、生命のあるものとないものとがたえず交わり、絡み合う世界を描く、マンガ、アニメ、ゲームなどにも現れている。
このように機械と生命と人間の境界があいまいで、それらが新たに自由に組み立て直されていく、日本のファンタジー世界の美学を著者は「テクノ-アニミズム」と呼ぶ。日本では、伝統的な精神性、霊性と、デジタル/バーチャル・メディアという現代が混合され、そこに新たな魅力が生み出されているのだ。
このブログでもしばしば触れたように西欧に共通するキリスト教的な世界観では、人間が世界の中心であり、人間、生物、無生物は明確に区別される。日本人の感覚は、現代の日常生活の場面でも、モノに生命を与え、そこに精神性を見出す。日本のポップカルチャーに表現されるファンタジー世界は、日本に深く根ざした特有の文化、美的感覚、超自然的なものに対する鋭敏さを表現しており、世界中の人々がその魅力に惹きつけられるようになった。ポケモンをはじめとするファンタジー製品の人気は、そこに日本人のやさしさや感性が表現されているからで、そうした日本の精神の特徴が、現代世界の子供たちたちに伝えられ、生きる力となっている。
ここでは、日本文化のアニミズム性にかかわる一面だけを取り上げたが、著者の考察は多岐にわたり、複雑である。ただ前回も述べたように、日本文化のアニミズムがどのような歴史的な経緯のなかで残り、どのような性質のものかという考察はなく、誤解を呼ぶような単純化された表現が見られるだけである。
《関連記事》
★マンガ・アニメの発信力の理由01:ソフトアニミズム
★マンガ・アニメの発信力の理由02:手塚治虫、性の垣根
★マンガ・アニメの発信力の理由03:『宮崎アニメの暗号』
★子供観の違いとアニメ
★日本文化のユニークさ03:今息づく縄文の心性
★日本文化のユニークさ04『肉食の思想』
★日本文化のユニークさ05『日本人の価値観01』
★日本文化のユニークさ06『日本人の価値観02』
★日本文化のユニークさ12:ケルト文化と縄文文化
★日本文化のユニークさ13:マンガ・アニメと中空構造の日本文化
★日本文化のユニークさ17:現代人の中の縄文残滓
(1)狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。
と関係させながら、「マンガ・アニメの発信力」の①「生命と無生命、人間と他の生き物を明確に区別しない文化、アニミズム的、多神教的な文化が現代になお息づき、それが作品に反映する」という視点から論じる。
◆『菊とポケモン―グローバル化する日本の文化力』(アン・アリスン、新潮社)
著者は、日本のポップカルチャーがポストモダン的な最先端の美意識を表現しているのはなぜかと問い、それを戦後日本の歴史的な要因と、日本文化の伝統的な側面から考えている(第2章および第3章)。今回はとくに後者にのみ触れたい。
「民族的で宗教的な伝統によって育まれた日本のアニミズム的な感性は、米国にはない日本独特のポストモダンの時代背景のなかににじみ出ている」と著者はいう。たとえば日本人はケータイに、ブランド、ファッション、アクセサリーとして多大な関心を払い、ストラップにも凝ったりする。そうしたナウい消費者アイテムにも、親しみ深いいのちを感じてしまうのが日本人のアニミズムだというのだ。そうしたアニミズム的な傾向は、『鉄腕アトム』に代表される多くの作品に見られるような、生命のあるものとないものとがたえず交わり、絡み合う世界を描く、マンガ、アニメ、ゲームなどにも現れている。
このように機械と生命と人間の境界があいまいで、それらが新たに自由に組み立て直されていく、日本のファンタジー世界の美学を著者は「テクノ-アニミズム」と呼ぶ。日本では、伝統的な精神性、霊性と、デジタル/バーチャル・メディアという現代が混合され、そこに新たな魅力が生み出されているのだ。
このブログでもしばしば触れたように西欧に共通するキリスト教的な世界観では、人間が世界の中心であり、人間、生物、無生物は明確に区別される。日本人の感覚は、現代の日常生活の場面でも、モノに生命を与え、そこに精神性を見出す。日本のポップカルチャーに表現されるファンタジー世界は、日本に深く根ざした特有の文化、美的感覚、超自然的なものに対する鋭敏さを表現しており、世界中の人々がその魅力に惹きつけられるようになった。ポケモンをはじめとするファンタジー製品の人気は、そこに日本人のやさしさや感性が表現されているからで、そうした日本の精神の特徴が、現代世界の子供たちたちに伝えられ、生きる力となっている。
ここでは、日本文化のアニミズム性にかかわる一面だけを取り上げたが、著者の考察は多岐にわたり、複雑である。ただ前回も述べたように、日本文化のアニミズムがどのような歴史的な経緯のなかで残り、どのような性質のものかという考察はなく、誤解を呼ぶような単純化された表現が見られるだけである。
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