★この記事の内容のフルバージョンは、次の動画で見ることができます。⇒ 「生きがい」は長寿の秘訣?—世界を魅了した日本語「IKIGAI」
以前、インド人の友人とオンラインで話していたときのことです。ドバイへの出張から戻ったばかりの彼はドバイの空港内の小さな書店で買った数冊の本を見せてくれました。その中に「IKIGAI」というタイトルの本がありました。それは日本語の「生きがい」について英文で書かれた本でした。西アジアの空港内の小さな書店になぜ「IKIGAI」という日本語のタイトルの本が売られたいたのだろうと驚き、さっそくAmazonで調べてみました。するとその本は500万部を超えるベストセラーで、Amazonのメディテイション(瞑想)部門の1位を保持しています。もともとスペイン語で書かれ、英語を含む何か国語かの翻訳もあるようでした。
ちなみに何人かの外国の友人、併せて10人ほどにオンラインで聞いてみると、6~7人がIKIGAIという日本語を知っており、そのうち3~4人がこの本をすでに読んでいたのです。彼らは日本に関心が深い人々なので、その点は差し引いても、やはり驚くほど高い割合です。それで私もさっそく電子ブックの英語版を買って読んでみたのです。
「生きがい」という日本語にあたる外国語はないらしいということは知っていました。しかし、この言葉が「IKIGAI」としてことさらに注目されるのは、それが日本人の長寿と結びつけて紹介されたことに一因があるようでした。
実際にこの本「IKIGAI」(Francesc Miralles 、 Héctor García共著)を読んで見ると、沖縄の長寿村として有名な大宜味村の長寿の秘訣を現地に滞在して調査し、その秘訣のひとつが「生きがい」にあるとしているのです。この本がどのような視点から「生きがい」について語っているのか、いくつかピックアップしていみます。
1.「生きがい」こそ長寿の秘訣
著者のふたりは、100歳以上の高齢者の割合が世界最高である沖縄県・大宜味村でその長寿の秘訣を調査し、その結果がこの本の中心になっています。沖縄やこの村の長寿の秘訣は、健康的な食事、家庭菜園などでの戸外活動を中心としたシンプルな生活、緑茶(特にさんぴん茶)やシークワーサーをよく飲むこと、亜熱帯の気候などが考えられます。しかし「生きがい」こそが長寿の最も大切な秘訣だと著者たちは考えているようです。
2.「生きがい」の意味
では「生きがい」という日本語はこの本ではどのように理解されているのでしょうか。
日本語の「生きがい」に近い語にはフランス語の「raison d’être(レゾン デートル)で「存在意義」「存在理由」という意味ですが、この語とて二語で出来ており、しかも元は哲学用語で、日本語の「生きがい」のように昔から気軽に日常の中で使っていた言葉ではないのです。たった一語で「生きがい」に匹敵する意味を表す外国語はないようです。
この本によれば「IKIGAI」とは、「私が生きる意味とは何かWhat is the meaning of my life?」や「長く幸せな人生の秘訣とは何かWhat is the secret to a long and happy life?」という問いへの答えだと理解されています。すでに「生きがい」を見つけた人ともいれば、探し中の人もいるけれど、ともあれ日本人は、それを持つことは非常に大切だと考えると、この本は紹介しています。
3.大宜味村の人々の生きがい
では大宜味村の長寿の人々は何に生きがいを見出しているのでしょうか。この村では、住民同士のつながりを大切にしています。住民たちが互いに支え合う小グループとして「結(ゆい)」と呼ばれる伝統的な互助会があり、重要な役割を果たしています。結の働きは、農繁期などに協力して互いの農作業を手伝ったり、冠婚葬祭で協力し合ったり、定期的に集まって歌や踊りを楽しんだり、互いの健康を見守ったりして、仲間との社会的なつながりコミュニケーションを維持し、孤立を防ぐなどです。大切なことは、この「結」での助け合いや支え合いが、住民が生きがいを感じる一因となり、結果として大宜味村の高い長寿率に寄与していると見られています。
この本の内容は大宜味村の紹介だけでなく、健康法一般に関して様々な話題が取り上げられています。たとえばマインドフルネスを中心とした瞑想法、太極拳、気功、ヨーガ、ラジオ体操、指圧、ロゴセラピー、内観法まで多岐に渡っています。しかし、その主題を一言でいうならば生きがいと長寿の関係です。両者を結びつけて語ったからこそ、この本はベストセラーになったのだと思います。
しかし、IKIGAIという言葉が世界を魅了するのは、日本人の長寿の秘密との関りからだけではないでしょう。たとえば脳科学者の茂木健一郎は2017年に「The Little Book of Ikigai」という本を英文で出版し、31か国、28言語で出版が決まり、100万部を超えるベストセラーになりました。この本は、日本人自身があまり自覚していない日本人の生き方の特徴を、生きがいという言葉と結びつけて語っています。つまり、長寿との関係だけではなく、日本人の生き方や日本文化の本質とかかわる言葉として生きがいが語られ、世界で関心を持たれているのです。
★この記事の内容のフルバージョンは、次の動画で見ることができます。⇒ 「生きがい」は長寿の秘訣?—世界を魅了した日本語「IKIGAI」
以前、インド人の友人とオンラインで話していたときのことです。ドバイへの出張から戻ったばかりの彼はドバイの空港内の小さな書店で買った数冊の本を見せてくれました。その中に「IKIGAI」というタイトルの本がありました。それは日本語の「生きがい」について英文で書かれた本でした。西アジアの空港内の小さな書店になぜ「IKIGAI」という日本語のタイトルの本が売られたいたのだろうと驚き、さっそくAmazonで調べてみました。するとその本は500万部を超えるベストセラーで、Amazonのメディテイション(瞑想)部門の1位を保持しています。もともとスペイン語で書かれ、英語を含む何か国語かの翻訳もあるようでした。
ちなみに何人かの外国の友人、併せて10人ほどにオンラインで聞いてみると、6~7人がIKIGAIという日本語を知っており、そのうち3~4人がこの本をすでに読んでいたのです。彼らは日本に関心が深い人々なので、その点は差し引いても、やはり驚くほど高い割合です。それで私もさっそく電子ブックの英語版を買って読んでみたのです。
「生きがい」という日本語にあたる外国語はないらしいということは知っていました。しかし、この言葉が「IKIGAI」としてことさらに注目されるのは、それが日本人の長寿と結びつけて紹介されたことに一因があるようでした。
実際にこの本「IKIGAI」(Francesc Miralles 、 Héctor García共著)を読んで見ると、沖縄の長寿村として有名な大宜味村の長寿の秘訣を現地に滞在して調査し、その秘訣のひとつが「生きがい」にあるとしているのです。この本がどのような視点から「生きがい」について語っているのか、いくつかピックアップしていみます。
1.「生きがい」こそ長寿の秘訣
著者のふたりは、100歳以上の高齢者の割合が世界最高である沖縄県・大宜味村でその長寿の秘訣を調査し、その結果がこの本の中心になっています。沖縄やこの村の長寿の秘訣は、健康的な食事、家庭菜園などでの戸外活動を中心としたシンプルな生活、緑茶(特にさんぴん茶)やシークワーサーをよく飲むこと、亜熱帯の気候などが考えられます。しかし「生きがい」こそが長寿の最も大切な秘訣だと著者たちは考えているようです。
2.「生きがい」の意味
では「生きがい」という日本語はこの本ではどのように理解されているのでしょうか。
日本語の「生きがい」に近い語にはフランス語の「raison d’être(レゾン デートル)で「存在意義」「存在理由」という意味ですが、この語とて二語で出来ており、しかも元は哲学用語で、日本語の「生きがい」のように昔から気軽に日常の中で使っていた言葉ではないのです。たった一語で「生きがい」に匹敵する意味を表す外国語はないようです。
この本によれば「IKIGAI」とは、「私が生きる意味とは何かWhat is the meaning of my life?」や「長く幸せな人生の秘訣とは何かWhat is the secret to a long and happy life?」という問いへの答えだと理解されています。すでに「生きがい」を見つけた人ともいれば、探し中の人もいるけれど、ともあれ日本人は、それを持つことは非常に大切だと考えると、この本は紹介しています。
3.大宜味村の人々の生きがい
では大宜味村の長寿の人々は何に生きがいを見出しているのでしょうか。この村では、住民同士のつながりを大切にしています。住民たちが互いに支え合う小グループとして「結(ゆい)」と呼ばれる伝統的な互助会があり、重要な役割を果たしています。結の働きは、農繁期などに協力して互いの農作業を手伝ったり、冠婚葬祭で協力し合ったり、定期的に集まって歌や踊りを楽しんだり、互いの健康を見守ったりして、仲間との社会的なつながりコミュニケーションを維持し、孤立を防ぐなどです。大切なことは、この「結」での助け合いや支え合いが、住民が生きがいを感じる一因となり、結果として大宜味村の高い長寿率に寄与していると見られています。
この本の内容は大宜味村の紹介だけでなく、健康法一般に関して様々な話題が取り上げられています。たとえばマインドフルネスを中心とした瞑想法、太極拳、気功、ヨーガ、ラジオ体操、指圧、ロゴセラピー、内観法まで多岐に渡っています。しかし、その主題を一言でいうならば生きがいと長寿の関係です。両者を結びつけて語ったからこそ、この本はベストセラーになったのだと思います。
しかし、IKIGAIという言葉が世界を魅了するのは、日本人の長寿の秘密との関りからだけではないでしょう。たとえば脳科学者の茂木健一郎は2017年に「The Little Book of Ikigai」という本を英文で出版し、31か国、28言語で出版が決まり、100万部を超えるベストセラーになりました。この本は、日本人自身があまり自覚していない日本人の生き方の特徴を、生きがいという言葉と結びつけて語っています。つまり、長寿との関係だけではなく、日本人の生き方や日本文化の本質とかかわる言葉として生きがいが語られ、世界で関心を持たれているのです。
★この記事の内容のフルバージョンは、次の動画で見ることができます。⇒ 「生きがい」は長寿の秘訣?—世界を魅了した日本語「IKIGAI」