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侵略されなかった幸運(日本文化のユニークさ総まとめ06)

2012年05月27日 | 侵略を免れた日本
続けて「日本文化のユニークさ」6項目の5番目を5点から見ていくが、今回はその④と⑤である。

5)文化を統合する絶対的な原理や正義への執着がうすかった。また、宗教などのイデオロギーによる社会と文化の一元的な支配がほとんどなかった。

④弥生時代以降も一貫して、日本列島に異民族が大挙して侵入したり、さらに日本民族を征服したりすることがなかった。したがって「正義」の優劣を決する熾烈な争いも、完璧に異民族の「正義」の支配下に置かれてしまう経験ももたなかった。そのため縄文時代以来の独自の文化を保持しながら、大陸の高度文明の不都合なところはわきにおいたまま「いいとこどり」を繰り返すことができた。

これは「日本文化のユニークさ」6項目のうち(4)「大陸から海で適度に隔てられた日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺な体験をもたず、また自文化が抹殺されることもたなかった」(前半部分のみ)に重なり、これに関連してもこれまで多く書いてきた。

日本文化のユニークさ07:ユニークな日本人(1)
日本文化のユニークさ08:ユニークな日本人(2)
日本文化のユニークさ09:日本の復元力
日本文化のユニークさ11:平和で安定した社会の結果

他民族との戦争を通して、部族の神は、自民族だけではなく世界を支配する正義の神となる。武力による戦いとともに、正義の神相互の殺し合い、押し付け合いが行なわれる。社会は、異民族との戦争によってこそイデオロギー的になる。自分たちの「正義」を絶対視する傾向が強まるのである。

ところが日本は、異民族との激しい闘争をほとんど経験してこなかったため、自分たちが強力な正義の神でまとまる必要もなかったし、他民族の神を暴力的に押し付けれることもなかった。イデオロギーなしに自然発生的な村とか共同体に安住することができた。

西洋人にもそういうレベルはあるが、そこに留まるのではなく、宗教やイデオロギーのよう原理・原則によって統合されていった。そういう背景から、「イデオロギーを基盤にした社会こそが進んだ社会であり、そうしないと先進文化は創れない」とどこかで思っている。

日本は強力な宗教やイデオロギーによる社会の再構築もなく、村的な共同体から逸脱しないまま、前農耕的な縄文文化さえ、その内側に抱え込んだまま発展した。そして村的な共同体をかなり洗練させる形で、大きくしかも安定した、高度な産業社会を作り上げてしまった。ここに日本人の相対主義的な価値観の源泉がある。

⑤日本列島は、国土の大半が山林地帯であるため、水田稲作は狭小な平野や山間の盆地などでほぼ村人たちの独力で、つまり国家の力に頼らずに、灌漑設備や溜池などを整備してきた。巨大な専制権力や、それを可能にする政治的、文化的な統治イデオロギーも必要なかった。強大な権力による一元支配がなかったのである。

中国大陸では、広大な平野部で大規模なかんがい工事を推し進める必要から、無数の村落をたばね無数の労働力を結集させる力が国家に要求された。巨大な専制権力が必要だったのだ。武力的にその権力下に組み込まれる場合も多かった。それを可能にするのに政治的、文化的な統治イデオロギーも必要だった。そのイデオロギーをやがては儒教が担うことになる。こうしてしだいに農耕文明以前の精神性(日本でいえば縄文的・多神教的な精神性)が失われていった。

逆に、日本列島のように農耕に適した土地がみな小規模だと、強大な権力による一元支配は必要なかった。島国であるため外敵の侵入を心配する必要もなかったから、軍事的にも大陸に比べ小規模でよかった。そのため日本では、強固な統治イデオロギーによる支配も必要とせず、縄文時代以来のアニミズム的な精神性が消え去ることなく残った。こうした地形的な特徴も日本人の相対主義的な考え方を形づくる要因のひとつだった。(呉善花『日本の曖昧力 (PHP新書)』)

これで、日本人が相対主義的な価値観を持つにいたった歴史的・地理的および自然環境の面からの考察はいちおう終わりにする。しかし、それが文化の面でどのように表現されたかについては今後の課題として残したい。

日本神話の中の相対主義的な価値観についてはすでに若干ふれた。無常観やもののあわれという美意識との関係についても指摘した。しかし、まだ考えてみたいことはある。

たとえば判官びいき。能。建前と本音の文化。義理と人情、およびその江戸文学における表現。昔話‥‥。これらも何らかの形で相対主義的な価値観や世界観と関係があるのではないか。しばらく後になると思うがじっくり考えてみたい。

《関連記事》
日本文化のユニークさ37:通して見る
日本文化のユニークさ38:通して見る(後半)
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《関連図書》
☆『ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)
☆『日本の曖昧力 (PHP新書)
☆『日本人はなぜ震災にへこたれないのか (PHP新書)
☆『世界に誇れる日本人 (PHP文庫)
☆『中空構造日本の深層 (中公文庫)
☆『山の霊力 (講談社選書メチエ)
☆『日本とは何か (講談社文庫)
☆『ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)

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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-05-27 23:43:10
世界で唯一核を持たせてもらえない国
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Unknown (HEう)
2012-05-28 02:16:50
この間はちょっと酔っていた所にあの内容だったので
失礼な書き込みになってしまったことを先に謝罪しておきます。
m( _ _ )m

>無数の村落をたばね無数の労働力を結集させる力が国家に要求された。
>巨大な専制権力が必要だったのだ。

一寸気になったのがこの点で、「古代エジプト」もこの括り=専制権力に入りますよね?
でも古代エジプト王政は意外と古代天皇制と感覚的に似通う部分が多くて
このサイトで言う所の、男性原理女性原理では単純に分けられない気がします。
その点、何かコメント頂ければ有難いです。
返信する
エジプトの蛇信仰 (cooljapan)
2012-05-28 22:27:50
HEうさんへ、

あのコメントをいただいたので、その点をもう少し補強しようという気持ちになりました。あまり補強にはならなかったかもしれませんが、充分刺激になりました。

古代エジプトの件ですが、私は専制権力であるにもかかわらず、やはり文化の基本は母性原理が強かったのだと思います。大地の豊饒性が他の周辺地域に比べると抜きんでいたことが大きな原因だと思います。

ブログでも書いた紀元前1200年頃の気候の悪化はエジプトでも例外ではなく、このころアテン神(アトン神)を唯一信仰するアマルナ革命も起こっています。

モーセの出エジプトもこの時代に前後していたのではないでしょうか。

それでもエジプトはナイルの豊饒性のためか、やはり母性原理が強く、蛇信仰も盛んでした。ユダヤ教の唯一神信仰は、蛇をシンボルとするエジプトの多神教との対決の中から生まれたともいえると思います。だからこそユダヤ教は蛇を邪悪の象徴とするのだと指摘する研究者もいます。(→安田義憲)

エジプト王政が古代天皇制と似通った面があるというご指摘興味深かったです。私もエジプトをもっと調べたいと思いました。
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