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桜はなぜ日本文化の象徴なのか?—自然災害との関係

2024年06月02日 | 自然の豊かさと脅威の中で
★ここにリンクする動画は、世界の人々のために、桜がなぜ日本文化の象徴なのかを英語で解説したものである。以下はその日本語全訳である。映像は昭和記念公園や金沢城や兼六園で撮影した。美しい桜の動画もぜひ楽しんでください。
 ⇒ Why are cherry blossoms a symbol of Japanese culture? —Relationship with natural disasters

私は今75歳であるが、いまだに毎年桜の季節が訪れるのを楽しみにしている。今年は桜が満開になるのが例年に比べるとかなり遅かった。しかも東京ではその間あまり天気が良くなかった。4月7日ようやく晴れた日に、東京西部の昭和記念公園を訪れ、青空を背景に美しい桜の写真と動画を撮ることが出来た。その後、4月中旬に日本海側の石川県と新潟県を訪れたときにもまだ桜を楽しむことができた。

ところで石川県の能登半島では、今年1月1日に大きな地震があった。その地震の結果、能登半島の海岸では、最大4メートルもの大規模な海岸隆起があった。被害も深刻であった。能登半島に近い金沢市では、幸い私は被害の跡をほとんど見なかったが、金沢城の周囲で美しく咲く桜を見て、災害の多い日本と桜文化の関係を考えた。

日本人はなぜこれほど深く桜を愛するのだろうか。もちろん、それがあちこちで一斉に満開になったときのたとえようもない美しさが一番大きな理由だろう。葉が出ないうちに花だけが開花するためにその美しさがよけいに際立つ。そしてそれが本格的な春の訪れを告げるのだ。日本の春は、桜と切り離して語ることは出来ない。

桜は日本の四季の変化を象徴している。四季のある国は他にも多く存在するが、日本はとくに四季の違いがはっきりしている。そしてその変化を生活の中で意識し、深く味わう風習や文化が発達している。そして桜は季節の変化を最も鮮やかに告げるのだ。日本人は、満開の桜の下で、花見という風習によって春の到来を楽しむのだ。

しかし、日本人が桜を愛する別の理由もある。それは、花が咲いている期間が10日前後ときわめて短いことである。桜は、一斉に開花し、その美しさを一瞬、露わにすると、瞬く間に散ってしまう。花の命が短いからこそ、その短い時をより強くいとおしむのである。その短い花の命を惜しむかのように、人々は花見を楽しむのだ。

桜の花が咲く季節は、壮麗で魅惑的ですが、悲しいことに短命で、私たちの人生もまたはかないものだということを視覚的に思い出させてくれる。この意味で、花見は私たちに人生は短いこと、そしてその一瞬一瞬を大切にしなければならないことを思い出させてくれる。今日では、多くの人が家族や友人、同僚と桜の下で花見パーティーをただ単に楽しんでいるように見える。しかし、歴史的には桜の観賞が、何よりも瞑想的な意味があるものと認識されてきた。

そして今日でも、日本人が集まって桜を見物し、その美しさに驚嘆するとき、彼らは単にその花の美しさを楽しんでいるだけではなく、桜が表すより深い意味と背後の文化的伝統をもどこかで意識しているはずだ。彼らは、桜の下でただ飲んで歌って踊って楽しんでいるように見えても、今を楽しみながら人生の輝きや儚さを思い出しているのかもしれない。

実は、桜の中で私が一番好きなのは、散る桜の花びらの風景です。日本語には「花吹雪」という言葉があり、桜の花びらが雪のように散る美しい光景を表現している。雪のように舞い散る桜は、その美しさと儚さを際立たせます。日本の桜は、仏教の死生観、マインんどフルネス、今に生きるという教えと結びつき、人間の実存の永遠のメタファーとなっている。

この動画のタイトルは「桜はなぜ日本文化の象徴なのか?」だ。この問いへの答えは、桜が咲いている時が短いことに深く関係している。日本は国土の67%が豊かな森林に覆われ、四方が海に囲まれ随所に美しい海岸がある自然が豊かな国だ。しかし同時に、地震、津波、台風、大雨、洪水といった自然災害も多い。

1200年代の初頭(鎌倉時代初期)に鴨長明は『方丈記』という随筆を書いた。古典的な随筆の代表作の一つである。その冒頭にはこう書かれている。

「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。」

この文章は有名で、日本人なら誰でも聞いたことがあり、そしてその通りだと感じるだろう。こうした感覚は日本人の心に沁みついているからだ。日本人の歴史観や人生観は、こうした見方が底流になっている。つまりすべては移り変わり永遠にとどまるものは何もないということだ。

一方、ヨーロッパの国々ではどうだろうか。地震も津波も台風もほとんどなく、洪水があっても日本の洪水ほど急激な増水はない。つまり自然災害によってすべてが破壊されたり流されたりしてしまうことはほとんどない。ダヴィンチ、ニュートン、ルソー、モーツアルトの生家が今もそのまま残っている。日本では、彼らと同時代に活躍した人々の生家など、どこにも残っていない。もちろんそこには、石造りの建物と木の建物との違いもある。ともあれヨーロッパでは、古い時代の遺産の上に新しいものが積み重なっていく傾向がある。

ところが日本では、建物が木で出来ている上に自然災害が多いから、すべては時間の流れの中で消えていく傾向が強いのである。日本人は、すべてが流れ去り、消えていくという感覚が強く、そういう感覚を基礎にして日本文化が成り立っているのだ。ヨーロッパでは、変わりにくいから変わらないことを大切にする文化が育った。しかし日本では、すべてが変わってしまうから変わることを受け入れる文化が育った。何もしなくともすべてが変わってしまうから、変わることを前提とした文化が育ったのだ。そして人々は変わりゆく過程、消えゆく過程に美を見出したのだ。日本人が四季の変化を大切に感じる理由のひとつもそこにあるかもしれない。。

変化や儚さに美を見出す元々の日本人の傾向は、すべては無常であるという仏教の思想「無常観」の影響でさらに強まっている。 「無 
ここまで語れば、なぜ桜が日本文化の象徴であるのか、もう理解いただけただろう。日本人が桜を深く愛するは、そこに美しさと儚さが同居しているからだ。ごく短い間、美しく咲き誇り、そしてあっという間に散っていく桜。人々は、桜の美しくも短い命に、自分たちの命の儚さを重ね合わせて見ているのだ。豊かであると同時に、時に猛威をふるう自然の前で、人間の命がいかに儚いものであるかを、桜を見ながら実感する。その無常観が、日本の文化と美意識の根底にある。

江戸時代の学者本居宣長は、日本の思想や文化の研究者であった。彼の有名の和歌に次のようなものがある。

敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ 山桜花(本居宣長)

If asked what the Japanese spirit is,
I would answer that
it is the mountain cherry blossoms
shining in the sunrise.

★ここにリンクする動画は、世界の人々のために、桜がなぜ日本文化の象徴なのかを英語で解説したものである。以下はその日本語全訳である。映像は昭和記念公園や金沢城や兼六園で撮影した。美しい桜の動画もぜひ楽しんでください。
 ⇒ Why are cherry blossoms a symbol of Japanese culture? —Relationship with natural disasters



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