日本のマンガ・アニメの発信力の理由を5つの視点に注目して、これまでにアップした記事を集約、整理している。5視点は次を参照のこと。→アニメとアニミズム:世界に広がるマンガ・アニメ02
今回からは、
②小さくかわいいもの、子どもらしい純粋無垢さに高い価値を置く「かわいい」文化の魅力。
についての記事を集約・整理しているが、これは、日本文化のユニークさ8項目でいえば、(2)「ユーラシア大陸の父性的な性格の強い文化に対し、縄文時代から現代にいたるまで一貫して母性原理に根ざした社会と文化を存続させてきた」に深く関係する。
◆マンガ・アニメの発信力:「かわいい」文化の威力
今回は、櫻井孝昌氏の『ガラパゴス化のススメ』に触れながら考えてみたい。
21世紀に入ってもっとも世界に普及した日本語は和製英語の「アニメ」だろうが、それに続く言葉が「カワイイ」ではないかと櫻井氏はいう。世界の若者が「カワイイ」といいう言葉を使うとき、そこには「東京的な」とか「日本的な」といった意味が含まれると語る女の子もいるという。確かに、キュートやミニョンを使わずわざわざ日本語のカワイイを使う以上は、そこに独自のニュアンスを込めたいからだろう。そこには日本や日本のポップカルチャー全体への憧れのようなものが反映されているのだろう。
カワイイという概念が急速に世界に広がったものまた、インターネットの力が大きい。ロリータファッションの愛好家に、その出会いを聞くと、やはりきっかけはアニメであることが多いという。アニメを通して、日本の生活やファッションに興味を持ち、インターネットで日本のものを次々にチェックしていく。櫻井氏の本を読んで知ったのは、どうやら世界では、日本のアニメ・マンガや日本の若者文化の魅力そのものが「カワイイ」という概念で特徴づけられる傾向が強いらしいということだ。「かわいい」文化のもつ発信力がますます大きな影響力をもちはじめているということか。
「かわいい」文化は、おそらく一神教的な父性原理の文化とは正反対の、アニミズム的ないし多神教的な母性原理の反映であり、一表現だ。だから、上に述べた5視点のうち、②の「かわいい」文化の独自性と、①のアニミズム的、多神教的な文化が生み出す想像力の魅力とが結びついている。今、世界は一神教的な文化の強大な影響力のもとに置かれ、しかもそれが行き詰まりを見せている。「かわいい」文化は、一神教的・父性原理的な文化に対する「反乱」の始まりを意味するかもしれない。
◆日本のポップカルチャーの魅力(1)
日本のポップカルチャーが世界に受け入れられているのは、その背景となっている文化や社会が、他の国の人々に何かしら魅力的なものと感じられているからだろう。マンガやアニメを生み出す、日本という国の文化や人々の生き方に引き付けられるものがあり、共感を感じるからだろう。では、日本の文化のどのような面が魅力と感じられ、憧れられているのか。
何よりも「子供に対する考え方・見方」に魅力がある。マンガ・アニメの中には日本独特の「子供観」があり、それが受け入れられているというのだ。欧米では、子供は未完成なものという認識がある。大人の理性がない存在は、完成された人間としては扱われない。赤ちゃんに対し英語では「it」とう代名詞を使うのはその表れだろう。欧米では、子供っぽいことは否定されるという。「あどけない」「かわいい」という子供らしさは、教育的観点からはマイナスの見方をされるのだ。
一方日本では、「子供は人間らしさの原点」と考えられる。大人になるとは、その無邪気な人間らしさが何がしか失われていくことを意味する。
「日本の躾は、社会のために理性を押し付けるのではなく、人間として本来覚えるべき心がけや行儀礼儀を、本人のために訓練して教えることである。だから、人間の精神世界の内部は自由である。‥‥したがって日本では子供は、そのまま子供らしく暮らせるし、それがマンガに表現されている。」(『数年後に起きていること―日本の「反撃力」が世界を変える』)
《櫻井孝昌氏の関連著作》
◆アニメ文化外交 (ちくま新書)
◆世界カワイイ革命 (PHP新書)
◆日本はアニメで再興する クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった (アスキー新書 146)
《関連記事》
☆『日本はアニメで再興する』(1)
☆『日本はアニメで再興する』(2)
☆アニメ文化外交 (ちくま新書):YouTubeでのJapan熱を裏付ける本(1)
☆「カワイイ」文化について
今回からは、
②小さくかわいいもの、子どもらしい純粋無垢さに高い価値を置く「かわいい」文化の魅力。
についての記事を集約・整理しているが、これは、日本文化のユニークさ8項目でいえば、(2)「ユーラシア大陸の父性的な性格の強い文化に対し、縄文時代から現代にいたるまで一貫して母性原理に根ざした社会と文化を存続させてきた」に深く関係する。
◆マンガ・アニメの発信力:「かわいい」文化の威力
今回は、櫻井孝昌氏の『ガラパゴス化のススメ』に触れながら考えてみたい。
21世紀に入ってもっとも世界に普及した日本語は和製英語の「アニメ」だろうが、それに続く言葉が「カワイイ」ではないかと櫻井氏はいう。世界の若者が「カワイイ」といいう言葉を使うとき、そこには「東京的な」とか「日本的な」といった意味が含まれると語る女の子もいるという。確かに、キュートやミニョンを使わずわざわざ日本語のカワイイを使う以上は、そこに独自のニュアンスを込めたいからだろう。そこには日本や日本のポップカルチャー全体への憧れのようなものが反映されているのだろう。
カワイイという概念が急速に世界に広がったものまた、インターネットの力が大きい。ロリータファッションの愛好家に、その出会いを聞くと、やはりきっかけはアニメであることが多いという。アニメを通して、日本の生活やファッションに興味を持ち、インターネットで日本のものを次々にチェックしていく。櫻井氏の本を読んで知ったのは、どうやら世界では、日本のアニメ・マンガや日本の若者文化の魅力そのものが「カワイイ」という概念で特徴づけられる傾向が強いらしいということだ。「かわいい」文化のもつ発信力がますます大きな影響力をもちはじめているということか。
「かわいい」文化は、おそらく一神教的な父性原理の文化とは正反対の、アニミズム的ないし多神教的な母性原理の反映であり、一表現だ。だから、上に述べた5視点のうち、②の「かわいい」文化の独自性と、①のアニミズム的、多神教的な文化が生み出す想像力の魅力とが結びついている。今、世界は一神教的な文化の強大な影響力のもとに置かれ、しかもそれが行き詰まりを見せている。「かわいい」文化は、一神教的・父性原理的な文化に対する「反乱」の始まりを意味するかもしれない。
◆日本のポップカルチャーの魅力(1)
日本のポップカルチャーが世界に受け入れられているのは、その背景となっている文化や社会が、他の国の人々に何かしら魅力的なものと感じられているからだろう。マンガやアニメを生み出す、日本という国の文化や人々の生き方に引き付けられるものがあり、共感を感じるからだろう。では、日本の文化のどのような面が魅力と感じられ、憧れられているのか。
何よりも「子供に対する考え方・見方」に魅力がある。マンガ・アニメの中には日本独特の「子供観」があり、それが受け入れられているというのだ。欧米では、子供は未完成なものという認識がある。大人の理性がない存在は、完成された人間としては扱われない。赤ちゃんに対し英語では「it」とう代名詞を使うのはその表れだろう。欧米では、子供っぽいことは否定されるという。「あどけない」「かわいい」という子供らしさは、教育的観点からはマイナスの見方をされるのだ。
一方日本では、「子供は人間らしさの原点」と考えられる。大人になるとは、その無邪気な人間らしさが何がしか失われていくことを意味する。
「日本の躾は、社会のために理性を押し付けるのではなく、人間として本来覚えるべき心がけや行儀礼儀を、本人のために訓練して教えることである。だから、人間の精神世界の内部は自由である。‥‥したがって日本では子供は、そのまま子供らしく暮らせるし、それがマンガに表現されている。」(『数年後に起きていること―日本の「反撃力」が世界を変える』)
《櫻井孝昌氏の関連著作》
◆アニメ文化外交 (ちくま新書)
◆世界カワイイ革命 (PHP新書)
◆日本はアニメで再興する クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった (アスキー新書 146)
《関連記事》
☆『日本はアニメで再興する』(1)
☆『日本はアニメで再興する』(2)
☆アニメ文化外交 (ちくま新書):YouTubeでのJapan熱を裏付ける本(1)
☆「カワイイ」文化について