精進の日々は続く

2011年08月25日 | 風の旅人日乗
関東地方が、
夏らしからぬ雨の北風になった8月21日は、
千葉県内房の保田から、海ほたるの橋の下を経由して
東京ディズニーシー沖にフィニッシュする
距離約30海里の東京湾ヨットレース。

ここ数年東京湾で乗せていただいている
30ftのそんごくう。
ここのところめっきり機会が減ってしまったレースでのステアリングを
このチームではありがたく担当させていただいている。

前夜遅くまでの宴会と、朝6時のスタートがセットになったこのレース、
本来朝型のワタクシにとってさえ、結構朝がしんどい。
しかも今年のレース日の夜明けは夏らしからぬ霧雨。

それでも、レースフリートの他の皆さんより一足先にもやいを解いて、
金谷沖の大某網の位置での風の様子をチェックしに行く。

それから、保田漁港すぐ沖に設置されたスタートラインにもどる。
前夜、久し振りに集まった昔の仲間との時間がうれしくて
ちょいと深酒をしてしまったみたいで、
認めたくないけど、ちょっと気持ち悪い、ような気がする。

そんごくうは、派手なオレンジ色にお化粧しているけれど、
実はもう約20年も前にヤマハから発売された、よぼよぼのおばあさん。
しかも、20年前にNセールでセールデザインを担当していた
ワタクシがデザインしたスピネーカーが、
変わり果てたシェイプになって
まだバックアップとして艇に積み込まれている。

そんなよぼよぼのおばあちゃんであるけれど、
夢の島のレースでは、とても名誉ある高いレーティングをいただき、
ときどきだけど、自分たち内部では『ほぼ完璧♡』と思うレースをしても、
なかなか勝つことはできない。

でも、この高いハンディキャップは、
チーム全員の力を出し切るモチベーションをキープするには
とても価値あるものだと感謝している。

そういうことなので、
少しでも勝つ可能性を高く保つために、
そんごくうでのスタートは、
いつもピンを狙わなければならないという宿命にある。

これはこれで結構しんどいことではあるけれど。
こういう試練を与えられることも、
腕を錆びさせたくない自分にとっては
ありがたいことだと思って
このプレッシャーに感謝するようにしている。

で、最初のマークである金谷沖の大某網に最も近く、
岸寄りのほうがパフが濃い、という意味でも有利な、
本部船の横、上一番からスタート。

滑り出しは、ほぼ思い通りに行き、
楽しいレースの始まり始まり。

でも、ワタクシがそんごくうで出たこれまでのこのレースは、
滑り出し順調で、後半失速するパターンが多い。
気を引き締めようとするが、なぜか頭がとっても痛い。
身に覚えはないが、どうやら酒でも飲みすぎたようだ。
ジッパーを閉め忘れたジャケットから入り込んでくる雨も嫌な感じ。

040度よりも右に振れてもいた北東風が、
金谷と富津崎の中間地点辺りから左に振れ始める。
かと言って、左の振れをきちんと掴みたくても、
コースのすぐ左側には、
縫航中(タックタックのクローズホールド)の帆船が
侵入してはいけない浦賀水道航路があって
左に大きく伸ばすことはできない。



観音崎を西に見るあたりで、
夏らしからぬまじめな北風16~18ノットが
ドシンと吹いてきた。
これは正直なところほとんど予期してなかった風で、
この風が続いては、大型艇に伍して走ることはできそうにない。

#2ジェノアを持っていないので、ジェノアを#3にセールチェンジ。
セールチェンジのためにマイナスのタックを長く走らざるを得なかったけど、
タックチェンジそのものは、クルーのみんなの頑張りで見事に決まった。
惨敗した今年のスバル座カップで使ったセールを、
このレースでも見ることになった。悔しさが甦る。

第一海堡をかわした後は、
海ほたるの橋に向かって約2時間のポートタックの片上り。
このレグの走りはじめに、
「2時間も片上りかあ」、なんて瞬間思ったけど、
昔のハワイのケンウッドカップでは、
最終レースのハワイ諸島一周レースの、
ニイハウ島からハワイ島までのレグは、
平均25ノットの風と悪い波の中、
丸二日、48時間のポートタックの片上りだったことを思い出し、
わずか2時間に苦情を言おうとした自分を叱り付ける。

海ほたるの橋をくぐる前あたりから、
それまでほぼ真北で安定していた風が、
左右への振れを見せるようになった。

レース前に調べた限りでは、
東京湾奥では北東へと振れる
という予報が大勢を占めていたが、
ある気象予報サイトは、
北北西まで風が左に振れるという予想も出していた。

海ほたるをかわしてからは
西側を走る本船航路に入らないようにしつつ、
基本的にシフトに合わせてタックしながら
北西への振れを意識して他艇の左にいるようにして北上したが、
徐々に東、つまり右へのシフトの気配が強くなってきたため、
このレグの中間を越えた辺りで
一緒に走っていた他の2隻の右側を走るよう、
サイドを変えることにした。

ところが
スターボ艇の後ろをかわそうとしているときに、
艇が切り上がってしまい、
衝突を避けるためにスターボへタック。
再び左に向かって走りながら、
危険を感じさせてしまったスターボ艇のオーナーに
謝ったりしつつ、仕方なくスターボを延ばしているうちに
案の定、右へのシフトが入り、
むむむー、タックできなくなる。

結果としてはあそこで右に行けなかったことで
その後のシフトのプレイのリズムを乱してしまい、
自分自身で左へ左へと行ってしまい、自滅した。

北風のシーズンの東京湾では、
ディズニーシー沖と海ほたるの間の南北10海里の海面は、
シフトをつかむというヨットレースの頭脳プレイの部分を楽しむのに
最適な海面だと思う。



今回も、第一海堡まではまあまあかな、というレースだったけど、
その先がジリ貧の、3位に対してきわどい2位。
雨交じりの冷たい風の中、
一生懸命ハイクアウトして、
一生懸命パフコールと波コールしてくれたクルーのみんな、
ありがとう。
そして
ちょっぴり、ごめんなさい。
でも、前夜のお酒と30マイルのクローズホールド、
楽しかったよね?


夏に開催される東京湾ヨットレースにしては珍しく
冷たい雨の振る北風のレースになった今年のレース。
雨の振る中、また、フリートが前後に大きく分散して
レースコミッティーの皆様は大変だったと思います。
ご苦労様でした。
おかげさまで楽しいレースをさせていただきました。
ありがとうございました。