Sports Boat試乗感想文 - 1 Laser SB3 (その3)

2009年11月30日 | 風の旅人日乗
【撮影・矢部洋一 提供・舵社 photo copyright Yo Yabe/KAZI】


確かにレーザーSB3は操船が楽で、身体に優しいスポーツボートではある。
しかし、正確に言うと、『ヘルムスマンをやっている限りは』、という注釈をつけるべきかも知れない。
そう、ヘルムスマンの前に乗る2人の作業はかなり大変。
その2人は、ガンポールを突き出し、引っ込め、ジェネカーを揚げたり降ろしたり、パンピングしたり、トリムしたり、ジャイブしたり、ジブを返したり、タックの後メイントラベラーを上げてくれたり、といった作業をテキパキとやらなきゃならない。

夏のある一日、沖に出て思う存分ジェネカーでのスピードセーリングを楽しんだ後、
江ノ島のすぐ前の海面で、ある大学が打っていたショートコースの練習コースを使わせてもらって、
5、6周ほどコースを周回し、マーク・ラウンディングの練習をした。


【撮影・矢部洋一 提供・舵社 photo copyright Yo Yabe/KAZI】

ティラーを持ってメインシートを出し入れしているだけで、何の苦もなく、この練習が楽しいばかりのぼくが、
鼻歌を歌いながらフト気が付くと、ジェネカーホイスト、ジャイブ、ジェネカーテイクダウン、タックの繰り返しで、前の2人は汗だくになっていて、息づかいも相当荒い。前で働いている2人は結構大変なスポーツをしているようだ。
スポーツボートとはこれを指しているのかも。


【撮影・矢部洋一 提供・舵社 photo copyright Yo Yabe/KAZI】

日本にはまだ入ってきたばかりだが、レーザーSB3は本場イギリスでは、すでにフリートレースが盛んに行われていて、2008年8月のカウズウイークでは、80隻以上のエントリーを集めてこのクラスのレースも開催された。
その年の9月にアイルランドで開催されたレーザーSB3世界選手権には、120隻以上が参加したらしい。


【撮影・矢部洋一 提供・舵社 photo copyright Yo Yabe/KAZI】

日本でもこのクラスの人気に火が付いてレースが盛んに行われるようになることを期待したい。
そうなれば、この艇のスピード性能そのものだけではなく、ワンデザイン・クラスならではの、
チューニングや乗り方によって潜在性能を追求していく楽しみも生まれてくるからだ。


【330kgのバルブをぶら下げている深いキールストラットと、深いラダーがクローズホールドの性能を支え、巨大なジェネカーが生み出す大きなパワーに対応する。撮影・矢部洋一 提供・舵社 photo copyright Yo Yabe/KAZI】

(おしまい)

ポリネシア航海学会のパルミラ環礁航海(その2)

2009年11月29日 | 風の旅人日乗
【ホノルルから3時間50分、不定期便の飛行機の窓から見えてきたパルミラ環礁。北緯5度52分 西経162度5分の太平洋の真ん中にポツンと浮かぶ、本当に小さな、小さな環礁だ。photo copyright Samuel Monaghan】


パルミラ環礁の礁湖には、
オアフ島からこの環礁を訪れたポリネシア型の双胴外洋セーリングカヌー、〈ホクレア〉が錨泊していた。
ぼくが日本からホノルルを経由してパルミラ環礁にやって来たのは、
その外洋セーリングカヌーの、ホノルルまでの帰りの航海をエスコートする伴走艇〈カマヘレ〉に、
セーリング・マスターとして乗るためだった。

【パルミラ環礁の礁湖に浮かぶ〈ホクレア〉。とても平和な光景だが、第2次世界大戦ではここに米国海軍の一大基地が建設され、数千人の海兵隊員が住んだ。今でもその当時の建造物跡が至るところに残る。photo copyright Samuel Monaghan】

【ホノルルからパルミラ環礁に向かう小型ジェットの機内。操縦席のドアを開け、パイロットの後ろからずっと海を見続けているのは、ポリネシア航海学会代表のナイノア・トンプソン氏。photo copyright Samuel Monaghan】


この外洋セーリングカヌー〈ホクレア〉を所有し運用しているポリネシア航海学会は、
2012年を目標に世界一周航海を計画していて、そのための準備は、昨年2008年からすでに始められている。
そして、世界一周航海に出発するまでに若い世代のキャプテン、ナビゲーター、クルーを育て上げるプログラムが組まれ、
オアフ島とパルミラ環礁を往復するこの航海は、そのプログラムの中で最初の長距離航海だった。

ベテランたちが次世代のセーラーを実際の航海で育て上げていく、
その様子を間近で見たかったことと、
若い世代を育てる目的の航海で自分がもし役に立てることがあるなら役に立ちたいと思ったことが、
ぼくがこの航海に参加した理由だった。


【日本では秋から冬にかけての星座、オリオン座が、北緯6度ではこの時期、夜の早い時間に、西南西の低い位置に見える。その上空には、日本では見ることが難しい壮大なアルゴ座の星々が空いっぱいに輝いていた。photo copyright Samuel Monaghan】


【パルミラ環礁での一夜、石を抱いて海底に仰向けに寝そべり、上を泳ぐマンタの撮影に忙しい〈ホクレア〉往路クルーのカマキ。photo copyright Samuel Monaghan】


【環礁の一番外側のリーフで記念撮影。潮がかなり速い。遠くを泳いでいるのはナイノア(たぶん)。photo copyright Samuel Monaghan】


【パルミラ環礁滞在中は、航海準備の合間に、珊瑚の海でのシュノーケリングや、鳥たちのコロニーの観察に出かけた。珊瑚にはなるべく触れてはいけないし、ビーチに転がっている貝殻でさえ、この島から持ち帰ってはいけない。
この日の環礁観察の相棒は、〈ホクレア〉のキャプテンの一人でもありムービーフィルム・ディレクターでもあるナ・アレフ・アンソニー。photo copyright Samuel Monaghan】


【船外機で走るボートに着いてくるカツオドリは、風上に向かって滑空する。
パルミラ環礁で鳥たちと遊んでいる時に、ツバメが、北風が卓越している時期に向かい風をおして日本に来て、南風が卓越している間に急いで南に帰る、個人的に抱いていたその謎が不意に解けた。
鳥は、向かい風でなければ滑空できない。つまり、追い風だと翼に充分な揚力が発生しないのでずっと羽ばたいてなければならず、それでは餌も食べずに長距離を飛翔することなどできないのだ。
海鳥と共存し、海鳥を観察していたポリネシア人にとって、揚力を利用して風にさかのぼるカヌーを拵えることは、ごく自然な発想だったに違いない。photo copyright Samuel Monaghan】


【パルミラ環礁クーパー島の滑走路の横で〈ホクレア〉と〈カマヘレ〉のクルーたちの記念撮影。往路と復路でクルーが交代し、できるだけ多くの若い世代がトレーニング航海を経験できるよう配慮された。photo copyright Samuel Monaghan】


【往路のクルーたちがホノルルに帰る日。photo copyright Samuel Monaghan】


【photo copyright Samuel Monaghan】
(続く)














Sports Boat試乗感想文 - 1 Laser SB3 (その2)

2009年11月28日 | 風の旅人日乗
【出艇準備。コクピットは深さが適度で動きやすい。この日は裸足で乗ったが、強風のジャイブ時に安定したステップを踏むには、グリップの良い履物を履くほうが無難。
ブームバングは、通常のものと違ってブームを『引き下げる』のではなく、ブームを上から下に『押し下げる』もの。バングを逆さにしたようなので、VANGを逆さ読みしてGNAV(グナブ)、と呼ぶらしい。
この装備によって、メインセールの形が片舷だけ少し変になるが、その減点よりも、ピットクルーが素早く左右に動きやすく、ピット作業もしやすくなるプラス効果のほうが大きい。
写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】


レーザーSB3のSB3とは、『3人乗りスポーツボート(Sports Boat 3 person)』の頭文字。
そのレーザーSB3のセーリングの最大の魅力とは何か?


やはりそれは、大きなジェネカーを使った、滑るような(微・軽風)、あるいはカッ飛びの(中風以上)、ダウンウインド・セーリングだろう。
スピードがあるから舵効きがいいのは当然として、リグバランスがすごく研究されていて、
大きなジェネカーに舵を持っていかれそうな不安をほとんど感じない。
まるで従順な駿馬のように(乗ったことありませんが)、
主人がコントロールする通りに、聡明に走ってくれる。

【写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】


一方、風に向かって上っていくクローズホールドはどうか?
これまで、この手のスポーツタイプの小型艇は、クローズホールドは辛いだけの乗り物だと諦めていた。
かつてプラトー25に長く乗っていた頃、15ノット以上のクローズホールドは、
その後にダウンウインドでのカッ飛びを楽しむために乗り越えなければならない、避けて通ることができない苦しみなのだ、と我慢していた。
しかし、このSB3は、クローズホールドでも、プラトーのように凶暴にヒールしようとする挙動を見せない。
この艇を適正に走らせているときのヒールアングルは、
とてもマイルドで、カラダに苦しくない。

【写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】


また、もしハイクアウトしたくなったとしても、この艇はクラスルールでハイクアウトを禁止していて、ハイキングアウトするのを阻止するレールがデッキの縁に付いている。


【写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】


だから、お尻をデッキから外に出せない。
なので、ちっともお尻が痛くならない。
ちょっと背中を反らせるくらいならできるが、できるのはせいぜいそこまでだ。
それ以上のハイクアウトは、クラスルールで禁止してくれている、という優しさなのだ。
お腹周りと太腿部がどうしても緩んでしまう熟年セーラーの肉体事情を、
よく考えて開発された艇、クラスであるな、と感心する。


【この写真では、風が11、12ノットと弱いので、3人で少し前寄りに乗っている。
ヘルムスマン用のフットストラップはこの位置よりもかなり後ろのデッキにビス止めされている。
強風時には、ヘルムスマンはトランサムとデッキ後端のコーナーに座ることになる。
写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】


そういう、中年に優しい、全長わずか21フィートの小型ヨットなのに、
平均風速11ノットくらいの、波のない陸風のコンディションで、
10ノットのスピードでダウンウインドを走ることができる。
価格が数千万円もする40フィートクラスのレース艇であっても、
この風速では、10ノットのスピードを出すのは難しい。

この高性能に加わる魅力が、『手軽さ』、だと思う。

メンバー2人か3人が、その日のスケジュールが3時間だけでも都合が付けば、
午後の風のコンディションをチェックしてからでも気軽に乗りに行ける。


【写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】


そして、艇の艤装がディンギー並みかそれ以上にシンプルで、
ハーバーに着いてから出艇するまでの時間が短い。


【写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】


だから、タイムラグなく海に出られて、ついさっきまでのややこしい陸の世界とは別世界の、
ストレスのない爽快なセーリングの世界にいきなり飛び込める。

【写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】
(続く)













ポリネシア航海学会のパルミラ環礁航海(その1)

2009年11月27日 | 風の旅人日乗
【photo copyright: Samuel Monaghan】


スポーツボートの試乗体験記の合間に、
今年2009年3月に、ポリネシア航海学会(Polynasian Voyaging Society)が行なった
パルミラ環礁航海の様子をレポートしようと思います。

ヨット専門誌のKAZI誌に掲載された文章ですが、
ヨット専門誌に縁のないホクレア・ファンの方々に、
このブログで改めて航海の様子を報告します。
ナイノア・トンプソン氏の話とHokuleaの2007年の日本航海のことが、
9月7日のブログ以来尻切れトンボのままなのが気になっていますが、
まずは、今年3月の、パルミラ航海のことから報告することにします。

このパルミラ環礁航海レポートで掲載する写真は、
すべて『Hokulea』号のサポート艇『Kamaheleカマヘレ(気にするな=かまへん、の意のハワイ語)』のクルー、
サム・モナガンの力作です。
サムはその才能を生かして、今後写真作家の道も考えています。
無断転載は、何卒ご容赦のほど、よろしくお願いします。

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【photo copyright: Samuel Monaghan】

パルミラ環礁(Palmyra Atoll)は、ハワイ諸島から南南西へ約1000海里の太平洋に浮かぶ、とても小さな環礁だ。
Palmyraは、米国人の発音を聴くと「ポマイラ」と聴こえるけど、
ここでは日本語表記として一般的な「パルミラ」と表記する。

パルミラ環礁とそれを取り巻く海は、この環礁の所有者である自然保護団体と米国政府魚類野生生物局が厳しく管理し、保全している。
太平洋の真ん中に突然のように存在している環礁であるだけに、
島の上も海中も、この環礁で暮らす生き物は非常に多種多様だ。

島を覆おうココ椰子の群生の中に、軍艦鳥とカツオドリが、
数百万羽からなる一大コロニーを形成している。
それら以外の鳥類も多く生息するし、早朝や夕暮れにはヤシガニが歩き回る。


【photo copyright: Samuel Monaghan】


【photo copyright: Samuel Monaghan】


海中には珊瑚が発達し、小型魚類の種類と数の多さに驚かされる。
それらの小型魚類を捕食しようと、サメや大型魚も集まる。
礁湖の中にはウミガメも多く見られ、
夜になれば、研究施設の明かりを頼ってオオイトマキエイ(マンタ・レイ)も礁湖の奥に入り込んできて、島に駐在している海洋研究者たちと浅瀬で遊ぶ。


【photo copyright: Samuel Monaghan】


赤道近くの太平洋の真ん中に位置しているうえに、複雑な海流と潮流がこの環礁の周囲を流れていることで、
多くの海洋性動植物をこの環礁で見ることができる。
しかしその一方で、太平洋を漂う人工浮遊物もこの環礁に大量に漂着する。
海岸に打ち上げられた醜いプラスチック製の漁具やゴミは、それらに書かれている文字を見る限り、
ほとんどすべてと言っていいくらい日本、台湾、中国、韓国から流れてきたか、あるいはそれらの国の漁船が落とした(もしくは意図して捨てた)ものだ。

周囲15km足らず、常時駐在している人間はわずか数名という小さなパルミラ環礁で、
海とともに生きている多種多様な動植物を見るこができると同時に、自分の国が強く関わっている太平洋の人工ゴミ汚染の深刻な現実も見せ付けられ、地球の未来について、深く考えさせられる。


【photo copyright: Samuel Monaghan】


環礁の中にはいくつかの小さな島がある。
それらの中で最大のクーパー島には滑走路があり、
この環礁に駐在して海洋生物や海洋大気などの研究をしている学者たちのための、ホノルルからの不定期便機の離着陸に使われている。


【photo copyright: Samuel Monaghan】


2009年3月20日春分の日。
ぼくは16人乗りの中型機に乗って、爆音に驚いて島から飛び立った何百万とも知れない軍艦鳥やカツオドリが飛び交う中を、その滑走路に着陸し、生まれて初めてパルミラ環礁に上陸した。


【photo copyright: Samuel Monaghan】
(続く)

Sports Boat試乗感想文 - 1 Laser SB3 (その1)

2009年11月26日 | 風の旅人日乗
【写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright;Yo yabe/KAZI】

「Laser SB3」には、けっこうハマッテいる。
現在の自分が望んでいる「遊びとしてのセーリング」のテイストにもっとも近く、
しかも、価格的にも、いろんな策を講ずれば、もしかしたら自分の経済的守備範囲内に入ってくるかもしれないファン・ボートだから。

セーリングへの好奇心、未だ衰えず!という元・プレーニングディンギーセーラーや、
死ぬ前に一度でいいからハイスピードで現代型のセーリングを楽しんでみたい、と秘かに思っている中高年のセーラーたちには、
ちょっと見逃せないヨットだと思う。

まあ、「酒が積んであればヨットはそれでよし、他に何が必要と言うのか!」、
というヨットマンの方からは、
「こんなんは、まったく興味がない!」
とも言われそうなヨットでもあるわけだが…。

ここに掲載している写真はすべてプロカメラマンの矢部洋一氏撮影のもので、舵社から特別に提供していただいているものなので、他への転載はご容赦いただきたいのですが、
これらの写真の撮影日の風速は、残念なことに10,11ノット止まり。
悔しいことにジェネカーでのトップスピードは、パフに乗ったときにやっと9.9ノット、10ノットの壁を越えられなかった。
10ノットの壁を破りたくて、その後も何度もチャンスを待ったが、
すべて軽風のコンディション。


【写真撮影・矢部洋一 写真提供・舵社 copyright: Yo Yabe/KAZI】

でも、ついに来ました、爆走セーリングのチャンス。
気象庁が相模湾に強風波浪注意報を発令中。
「事故が起きたときの責任はすべて自分達で負い、マリーナを訴えることは一切しないと誓います。」
という宣誓文をマリーナに提出して、出艇。

本州の太平洋岸にある寒冷前線に向かって、北北東の重くて強い風が吹いてる。
でも、パフで27、28ノットくらい。ハーバーで感じたほど強い風じゃあない。
場合によってはジェネカーを諦めようと思っていたが、何とかいけそうだ。

まずはメインとジブだけでハーバーを離れ、定置網や刺し網などのある海域の沖まで行ってから、
みんなでなんとなく顔を見合わせて、気合を入れてから、ジェネカーを揚げる。
ハリヤードなどをキッチリさばいて整理し、態勢が整うまで、メインの陰にジェネカーを入れておく。

前2人の準備が整ったのを見て、声をかけてから、バウをゆっくり風上に振り、いよいよジェネカーに風を入れる。

ウホッホー!
すごい加速、すごいスピード!
パフに入る。
パフの先端が追いついてきた瞬間、ジェネカーと舵に、ドスンと風のパワーが叩き込まれて、この先起きることに一瞬不安を覚えるが、
次の瞬間、その荷重はすぐにスピードに替わって、危険な匂いがなくなる。

この1年以上、待ちに待ったSB3での10ノットオーバーのセーリングだ。
この日はスピードメーターの調子が悪く、正確な数字も出ず、またいつも乗っている艇よりもかなり海面に近いところに目線があるのでスピードを過剰に感じるため、
正確なところは分からないが、少なく見積もっても、トップスピードは16ノットを超えていたのではないかと思う。

2回目のダウンウインドを走り始めてすぐにジェネカーの艤装にトラブルが起きて、この日はちょっと未練を残してハーバーに戻ったが、
強風波浪注意報の中、充分に楽しい、しかし緊張した本気のセーリングを楽しむことができた。
(続く)


Sports Boats試乗感想文

2009年11月24日 | 風の旅人日乗
【Laser SB3 撮影・矢部洋一 提供・舵社 copyright:Yo Yabe/KAZI magazine】


深刻な病気と闘っている娘を持つ外国の友人にへまなタイミングで電話をしてしまった日本人に、その友人からメールが来た。
「こちらは大丈夫だから、心配するな。それよりも、未来の楽しい仕事の話をしようぜ」。
有難う。有難う。

塞いでいた気持ちも少し晴れて、昨日はセーリングで東京湾を横断し、
千葉県でカワハギの煮付けとシコイワシ汁の昼食をいただいて、
満腹のおなかを抱えて、またセーリングで神奈川県に戻った。

最近、Sports Boatというジャンルに分類される、巨大なジェネカーを展開してダウンウインドをカッ飛びのプレーニングで走る軽量ヨットが、とっても面白い。
この1年の間に、ステアリングを持ったスポーツボートは、小さい順にLaserSB3、Melges32、VolvoOpen70、だが、これらのヨットでのセーリングは、本当に楽しい。

一昔前までは、セーリングでこの手のプレーニングを楽しむには、49erや29erなどの、難易度のとても高いスーパーディンギーに乗るしかなかった。
予想されるチン起こしの回数とその大変さを考えて、
「諦めるしかない」、
と考えていた中年以上セーラーも多かったことだろう。

しかし、超軽量な艇体にバルブキールを組み合わせて、スタビリティーを高めたこれらのスポーツヨットは、
トラピーズに乗ってハイクアウトする必要もなく、もしヘマをしてブローチングしても、
艇は横倒しになるだけで、セールの風を抜けば自力で起き上がる。

…大きなジェネカーを揚げたままチン(転覆)をして、水面と水中にグチャグチャ状態になって広がっているジェネカーを、泳ぎながらバッグに取り込んで、それからチン起こしにかかって…、
と頭の中でイメージするだけで重い気持ちになってしまい、
「今日は盆栽いじりかゴルフの練習にしとこう」、
と思ってしまう中年以上の元・カッ飛びセーラーを、再び海に連れ出してくれるのが、
これらのスポーツボートだと思う。

ナイノア・トンプソンの話が、尻切れトンボのままになっているのが気がかりだけど、
そっちはまた気持ちが乗るまで心の中で熟成していくことにして、
明日以降しばらくは、スポーツボートの試乗感想文を書いてみようと思う。

祈る

2009年11月22日 | 風の旅人日乗

【ニュージーランド、オークランドのランギトト島。夜明け前】


この2ヶ月、このブログを休んでいる間に楽しんだいろんなセーリングの、そのどれから記録していこうかな、と思ってた矢先。

 昨日、外国の友人でもあり仕事仲間でもあるセーラーに、急な仕事の件で、彼の携帯に電話した。声が小さく、くぐもっている。
ちょっと気になったが、いま少し話せるかと定型文のような言葉で確認しただけで、構わず、こちらの用件を一方的に話した。

「これから娘(1歳1ヶ月)の肝移植手術なんで、今すぐには事務所に戻れないんだけど、その件はこれからすぐに確認して、先方から連絡させるから、心配するな」

そこでやっと彼の周囲の重い雰囲気を感じ取り、病院にまで電話してすまなかった、と慌てて電話を切った。

「移植」という英語は、電話のときには分からなかった。切迫した彼の口調と共に覚えていたその言葉の響きを、電話の後に頭の中で反芻しながら辞書で調べて、彼と彼の家族が直面している事の重大さを初めて知った。

自分が情けなくなった。

その電話の用件は、それなりに急ぎでもあったし、大切な事でもあった。
しかし、ある程度年齢が行っている彼と彼の奥さんにとって、待ちに待って生まれてきた最愛の長女の、生死をかけた大手術の日に、よりによって、彼の手を煩わせる、彼自身にとってはほとんど重要ではない用件の電話をかけるなんて・・・。

彼がすぐに手配してくれたらしく、こちらの用件に関しては担当会社の担当スタッフから連絡が来て、彼のお陰でスムースに解決しつつある。
しかし、そのことについての感謝に添えるようにして、奥さんと娘さんの手術の成功を信じている、と書いて出したメールに、まだ返事はない。

手術後のあれやこれやでまだ事務所に出てないんだろう、と思うが、
どうか、どうか、いい結果を聞けますように。

友達が最も辛くて不安を抱えているタイミングに合わせて電話をかけたドジで間抜けな自分が情けなく、
楽しいセーリングの話は、今日はちょいと書けそうにないです。


みなさま、あの、コンニチハ

2009年11月20日 | 風の旅人日乗
【モロカイ島に停泊中のホクレアのナヴィゲーター・シートから、ラナイ、そして向こうにカホオラベ】

いつもこのブログをチェックに来てくれている方たち、長いこと更新せずに、どうもごめんなさい。
セーリングの時間も充実しているし、書きたいことがないのではなく、書きたいこと、報告したいこと、はたくさんあるんです。というか、ありすぎるくらいあるんです。

でも、と言うか、だから、と言うか、いくら書きたいことが山のようにあっても、ブログばかり書いていちゃあ、仕事や生活の時間に支障もきたす。と、いうことでつい自分のブログを開くのにも及び腰になり、ま、明日でいいか、と後回しにしているうちに、すぐに2ヶ月が経ってしまう。
まあ、つまり、結局自分は、ブログというモノとの付き合い方や距離の取り方が、まだ分かっちゃあいない、ブログ初心者なんだな、と思います。

よそ様の、面白くて考えさせられるブログの文章を読んで、自分も、あんなふうに自分の考えていることをかっこよく書きたいなあ、なんて思うから、書く前から、もう妙に力が入ってしまい、結果として書くことが億劫になる、というのもあるかもしれない。

まあ、ここで書くことは義務ではないわけだから、文章を書くトレーニングのつもりで、気楽な気持ちで再開しようと思います。
今月初めに、使い慣れたノートPCをウイルスでやられ、再生のための時間もなく、古いデスクトップで当面の業務作業をしていましたが、昨日やっと仕事に一区切りが付き、今日これからノートPCの再生処置にかかります。
それがうまくいったら、使い慣れたキーボードに向かって、ゆるゆると書き始めようと思います。
今後とも、よろしくお付合いくださいませ。