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若者の武者修行

2012-10-24 11:05:31 | 日記・エッセイ・コラム

 東北に住む18歳の一人の高校球児が、アメリカで自分の腕を確かめたいというのです。花巻東高校を来年3月卒業する大谷翔平君が、プロ野球大リーグに挑戦すべく、日本のプロ野球を断念したとのニュースは、少なからず日本のプロ球界には波紋を投げかけました。

 ピッチャーの彼は、身長193cm、投げるボールの速さは160kmを超えるそうです。160キロというのは今の日本のプロ選手でもいるかいないかのすごいピッチャーなのです。どこの球団も喉から手が出るほどほしい逸材です。

 昨年は東海大学を卒業した菅野というピッチャーが好きな球団に行けないという理由で、意図的に大学を卒業せず、留年の形で一年自主練習をすると宣言して話題になりました。

 どうもスッキリしません。野球界にはドラフトいう制度があり、たとえ好きな球団に行きたくても抽選というシステムのために、思い通りには行かないのです。

 彼は、もし行きたい球団に行けないなら、アメリカ大リーグに行くと宣言しているそうです。これも大リーグのティームが採用してくれての話です。また必ずしもアメリカで成功するとは限りません。ちょっと我がままのようにも見えます。

 一方大谷君の場合はどうでしょうか。彼のとる行動はわがままでしょうか。今までに経験したことのない世界に挑戦することは、とかく島国に育ち、世界を知らない若者にとっては、またとない機会です。彼は、基礎から学び、いつかメジャーリーグに行きたいと言っているようです。

 すぐには大リーグにいけるほど生易しいものではないことを自覚しているのです。このような若者には、どんどん自分を確かめるチャンスに向かわせるだけの大人の度量が問われます。

 野球人である前に、人間たれ、と前高野連会長の牧野氏が言っていることは、けだし名言です。一人の若者が、見知らぬ土地に行き、見知らぬ人と出会い、野球の技術だけでなく、生活、習慣、価値観、そしてコミュニケーションや競争原理を学び、多少鼻が高くなったとしても世界に通用する人間に成長できるならすばらしいことです。期待したいものです。

 このまま大リーグで生活して、日本に帰ってきても3年間は日本のプロ球界には復帰できないというルールがあるそうで、いわば退路をたたれるような進路選択です。この機会に日本の球界が大きな国際的視野をもって取り組んでいけばよいのにと思います。

 こんな優れた選手が日本で見られないのは少々寂しいことですが、決して損失ではないでしょう。この機会に、もっと日本のレベルアップに腐心してほしいし、指導者の識見と高度な技術、人間性によって、しっかりした若者を育ててほしい、と願っています。

 プロ野球の指導者は多くのファンだけでなく、疲弊した政治関係の恥ずかしき指導者をも乗り越えるだけのリーダーシップに期待したいものです。だから喜んで送り出す精神性こそ、これからの社会では必要かつ重要なことでは。一プロ野球ファンとして。

やさしいタイガー