神戸の友人から、フランスワインが届きました。帰ったばかりで時差ぼけしていますといいながら、すぐにワインを贈ってくれた友情の熱さに感謝しつつ、もう早速いただいてしまいました。
本当はニュージーランドに行く予定ですべて払い込んでしまった後に大震災が起こり、キャンセルもやむをえないと思っていたら、同額でヨーロッパ旅行があるがどうかとの旅行社の誘いでそっちのほうに変更してスイス、ドイツ、フランスなどを巡ってきたというのです。
素晴らしい旅をしてきたそうで、感想文は跳ぶような勢いで書かれていました。スイスの自然の豊かさと美しさに惚れ惚れし、ドイツの伝統を護り育みに感心し、プライドの高さを感じたことでしょう。スイスからフランス・パリまで列車で楽しみ、待望のパリに着いたときには、現実の世界を旅しているのか、それとも夢かと思ったと感動ぶりを伝えてきました。ルーブル美術館ではモナリザの前で写真を撮ってきたらしいのです。さすがに自由の国ですね。どこかの国のようにお堅いことばかりいう差はなんでしょうね。
すぐに電話をくれた声はまだ興奮覚めやらず、といった弾んだ声でしたが、帰国して広がる大災害を思い、貧者の一灯だと早速募金のために送金したとも話してくれました。いささか気が引けるとまでいう誠実な友人ですが、そうして自分の精神状態を充たしながら、溜まった鬱積を吐き出している姿は、まだ不安定さを覗かせます。
違った世界を見て、改めて自分を見るということは大切なことでそこに成長のステップがあるのでしょうか。ちょっぴりうらやましく思いますが、苦悩を乗り越えようと懸命に自分のこころと闘ってきたいっときの時間を意義あるものに取り替えようとする今の彼の生き方に安堵の思いをしています。
彼とはもう40年以上も前からの友人です。ワインの味はまた格別でした。
やさしいタイガー