5月の下旬、札幌は一年の中でもっとも快適に過ごせる初夏のある日、 久しぶりに近代美術館に出かけた。今開催中の「フランク・シャーマン・ コレクション展」を観るためだ。
ぼくもそうだが、よほどの美術通の方を除けば、フランク・シャーマンと いう人物は何者か予備知識はないのではないか。ところが彼の残した 5000点にも及ぶ多数の美術作品は日本人の知人である河村永静氏に 託され、それらが河村氏が住む伊達市に寄託されたのである。
シャーマンは戦後GHQのスタッフとして来日するが、12年の滞在の間、 日本美術に深い感心をよせ、藤田嗣治、猪熊弦一郎、伊原宇三郎など 日本のトップアーティストらとの交流を持ち、帰国後も親交を深めてきた 各種美術コレクターである。
中でもおかっぱ頭と丸いめがねの藤田嗣治に関心を深め、多数の藤田 作品を集めて注目を集めた。藤田はフランスにわたって以来、海外におい ては名の知らぬ人はいないほど高い評価を受け、ことに女性の肌の色の 白さの表現は西洋画家の技量を越えたことでも有名である。
しかし、戦時中に「アッツ島玉砕」という戦争賛歌のような作品を描き、 日本国内では戦争に加担した作家として評価はいまひとつだった。 そのためか失望してフランスに行き、帰化して、レナード・フジタとして 生涯を送った画家だ。
その彼の日常的なスケッチ、友人に当てた自作のはがき、自画像など 今までにみることがなかった作品や個人的な資料、写真などがをみられ、 大変興味を持った。
今、北海道近代美術館で開催されているが、第2弾もあるようで7月7日 から隣の三岸好太郎美術館で開催される。今回の作品展には藤田の他、 林竹治郎、菊川多賀、猪熊弦一郎、向井潤吉、小磯良平など見ごたえの ある作品がみられ、いい時間が過ごせた。
やさしいタイガー