今、大学のぼくの授業はグループワークの手法の勉強をしているのだが、それぞれのグループにあらかじめ提示した課題の中から一つ選んで作品を作るという作業を課している。 学生の力作を期待しているのだが、中間地点に差し掛かって一つのグループが「アウトラインができましたので一度見てください」と鉛筆書きの原稿を提出してきた。
若者の会話風の場面でのやり取りがあった。 彼らが普段使っている言葉そのままを表現していておもしろい。ぼくにはやや注釈をつけてもらわないとわからない言葉もあるが、ある場面で「あけ、おめ」と書いてあった。 ぼくにはこの言葉の意味がわからなかったが、読み進むうちに、そうか!とやっと気がついた。どうやら正月の挨拶を交わしている場面だ。「あけましておめでとう」のはずが、親しい友人たちの間では、そんな七めんどくさい言い回しはしないらしい。「あけ、おめ」とある。この作品は。ぼくは吹きだした。
戦後社会の若者が作り出した若者文化、いわゆるサブカルチャーとでもいえるだろうか。それが今では本流をなしていて、片手で携帯を操作できないような年のものにとっては、もはやアウトサイダーに見られているのだろうか。
前に座っている女子学生がぼくのピンクのワイシャツをじっと見て、「先生のそのピンクとてもお似合いですね」といってくれた。授業中である。年より若く見えますよ、とでもいってくれているのだろうか。その学生、水野真紀と似ていたように思う。
やさしいタイガー