ブログ人 話の広場

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ちょっといい話 1 若者の未来考

2015-06-20 14:41:08 | 日記・エッセイ・コラム

 昨今のニュースを見ていると、日本はいったい先進国か、疑いたくなるようなことが多いことに気づく。たとえば貧困に苦しむ子どもが増加し、対策が十分に行き届いていない現実をしる。悲しいことだ。この国の政治はどうなっているのか、とつい怒りの矢を向けてしまいたくなる。

 そんな中で、ほっとするようなニュースが目に入った。かつて幼いころ、児童養護施設で生活をして若者が、大学や専門学校に進み、未来を夢見て励んでいる姿の紹介なのだ。あるNPO法人が5年前から「カナエール夢スピーチコンテスト」を始めていて、学生たちが自分の夢を会衆にに語り掛ける。聴く人々は入場料を払い、その益金が若者の奨学金になるという仕組みにしている。

 いわばスピーチコンテストなのだ。多くの児童福祉施設でくらした若者は、なかなか進学もできず、夢もかなえられないと思いがちだ。進学しても学費、生活費など並大抵の努力ではできないハードルがある。奨学金を受けようにも、卒業後返済しなければならないシステムが圧倒的で息苦しい話だ。これが先進国日本の現実だ。

 若者たちはそれでも懸命に歩み、未来を考える。ある若者は、育った児童施設の職員になって心で返したいという。別の若者は難民支援の仕事に、看護師に保育士に、と夢を語る。たった5分の中に、ギュッと凝縮して夢を追うのだ。2011年から始まったこのコンテストの特徴は素晴らしい。

 出場者は全員、30万円の一時金と、卒業するまで毎月3万円の奨学金を受け取る。返済は不要だそうだ。もちろんそれだけで生活を賄うのは難しいのでアルバイトをしながらではある。 これを支える人々がいて、寄付を募りながら運営をしているようだ。

 現在、児童養護施設は全国に約600あり、3万人が暮らしている。札幌にもある。だが、施設を出たからと言って独立してはやっていけない。大きな不安を抱えながら日々を送り、時には未来に希望を持てないと悩んでいる若者は多いに違いない。札幌には、こうしたコンテストの機会があるのかどうかは知らないが、どこか冷え冷えした空気の中で、一輪の花のように思え、自分も何かお役にたてる機会はないものか、と考える。

 たった2割程度の進学率だと報じていたが、上記のような経費の必要性から、せっかくの夢をかなえぬまま進学をあきらめる若者が目の前にいることを知らずにいることは大人の恥じかもしれない。そう思ったのである。

やさしいタイガー


「北の誉」の栗山ツアー

2015-06-06 14:06:07 | 日記・エッセイ・コラム

 初夏の一日、水彩の仲間と久しぶりの遠出をした。北海道では有名な日本酒「北の誉」を創業した小林米三郎の蔵元「北の誉記念館」のある栗山町を訪ねた。創業者が1897年(明治30年)、個人宅として建てた家が2013年まで身内の方が住んでいたといういわれのある建築物だが、なかなか頑健な住宅だ。このような建物は日本にはことさら珍しいものではない。だが豪雪の北国の中でさぞ厳しい生活感が漂っていた。

 圧巻は入口に入るや否やいきなり様々な古着れをつなぎ合わせたような大きなパッチワークのようなカーテンだぶら下がっていることだ。この作品はパッチワークのために作られたものではなく、普段着なれていても、もう破れたり、擦り切れた着物を工夫して、とことん使い切るという二代目の夫人が明治の終わりごろ、制作したものだらしい。「もったいない」という精神がずっと受け継がれてきたもののようだ。

 面白いのは、家の中庭に何かにすがる思いで手を合わせてきた「龍神様」の祠があることだ。昔、白蛇が出て大切にまつったことからご利益があったとのことで今も手を合わせているとの話だった。信仰心も豊かだった小林米三郎は一方では商魂たくましく、酒造蔵に必要な煉瓦は購入せず、自らレンガ工場を作り、燃料がいるといえば、ガソリンスタンドを作るなどして商売を広げていったそうだ。

 それにしても札幌から見るとずいぶん不便なところにあり、訪問するだけでも一苦労する。それでも歴史の流れを感じ、往時の人々の生活と精神を感じることができ、さまざまな日本酒の棚を眺めてきた。空気や水がきれいなのが、うまい酒を造れるのだろうと勝手に想像しつつ、次の訪問地に行った。

 同じ栗山にある「きびだんご」の谷田製菓もよってみた。きびだんごといえば岡山を思いだすが、ここは大正12年関東大震災の復興を願い、北海道開拓の精神を込めた「起備団合」から命名したことも知った。20名足らずの社員たちが心を込めて製作していた。弾力があり、美味な菓子だ。

 最後は日ハムの監督栗山さんが寄贈したという「栗山記念球場」に立ち寄ってみた。全面芝生で豪華な球場だが、少年たちが歓声を上げてゲームに興じている姿を想像するだけで明るい思いをさせてくれた。楽しい一日だった。

やさしいタイガー