ブログ人 話の広場

日頃の生活のなかで見つけたことなどを写真もそえて

別れの涙

2009-08-29 08:17:27 | 日記・エッセイ・コラム

 先日ある方の葬儀委員長を務めることになり、そぼ降る雨の中、通夜の式場にいきました。入り口に入った途端、ロビーは所狭しと供花が二重三重に置かれていて、まだ準備中かと思い、広い式場に入りましたら、そこも二重になるほどの供花が取り囲んでありました。席はおよそ300を用意されたと聞きましたが、それにしても大変なスケールの大きさです。

 小さな店を創業して40年以上も支えてこられた73歳の経営者の個人葬です。後で知ったのですが、2回にも会場を設け、テレビで放映されていたそうですから、優に500名余の方々が別れを惜しまれたのでしょう。

 これだけの幅の広い方々が一市井人である故人を取り巻き、今生の別れのために参列する葬儀もまた珍しいのではないかとさえ思いました。告別式ではお経を唱えながら大勢の焼香をする人々に急がせる合図をするお坊さんの仕草もまたわかる気がするほどでした。

 大勢の親戚縁者、そして一般の参列者も納棺された故人への思いをこめて献花をしていましたが、多くの方が号泣したり、すすり泣きの声が式場に響き、一層悲しみを深くしました。生前の隠れた部分が多くの人々の心に伝わったからでしょうか。ここでも人の生き方の誠実さを垣間見た思いがしました。人は惜しむ別れの中から何を汲み取っていくのでしょうか。

やさしいタイガー


切のいい所で

2009-08-27 09:06:33 | 日記・エッセイ・コラム

 今朝もどんよりとしてなんだか気持ちも晴れません。いよいよその日が来ました。数年もお世話になった美術館での作品解説の活動も今日が最後となりました。あまりにも気にしすぎていたのか、夢まで見てしまいました。アドリブが多いとよく先輩に注意を受けたりしていましたが、今日は思いっきり私感を加えようかと朝から事前勉強しています。

 心に引くと決めてからずいぶん時間が過ぎていき、そのうちに担当日以外に行く機会も少なくなると、時には新鮮に見えたり、もう少し深く勉強すべきだった、と回顧したりします。でも悔いはありません。ちょうど西の空にゆっくりと太陽が沈んでいくように、自分もゆっくりとソフト・ランディングの体制に入るのだと思っています。

 切をつける、という表現はあまり上品ではありませんが、切のいい所でと言うと、「お後がよろしいようで」と落語の〆に使われます。そんな心境で今日はフレッシュな思いでお見えくださる方に丁寧に解説をして心からの感謝を刻んで終えたいと思います。

やさしいタイガー


とんだ預かり物

2009-08-26 16:09:48 | 日記・エッセイ・コラム

 よりによって野外彫刻を守るために懸命に努めているリーダーがとんだ預かりものを見つけてしまいました。聞いてびっくり、無責任な役所の対応に怒りを覚えるやらのお話。

 昨日この方が、北海道銀行本店の東側の歩道を歩いているとき、街路樹に大きな円形の金属製の野外彫刻が陽の光に輝いている作品を眺めていました。ふと近くによって見ると、本来作品に貼付してある重たい碑を記した銅製の掲示板が剥がれて下に落ちていたのを見つけたのです。どうしたものか悩んだ末、拾得物としてまず警察に行きました。要領の得ない返事で受け取り拒否。

 ついで市の関係部所と思われるところに持ち込んだら、「作品は市の管轄ではないので、道の開発部にでも行かれたらどうですか」とここも拒否。では、と道の開発部に行って見ると、これも政令都市の札幌市の所有でしょう、と再度市に行く羽目に。いったいこの名作の掲示板はどこのものなの、と官庁をいったりきたり。

 「結局どこのセクションも受け取ってくれないので、今ぼくが宝物を保管しているのですよ」と笑いながら話していました。「へー」と驚きながら、いったい作品はどこの許可を得て建てたのか、作家も作品も嘆かわしく思っていることでしょう。美しい詩が彫りこんでありました。裏を見ると乱暴につけた接着剤の跡がもう効能を失った姿を見せていました。

 文化果つる都市は発展しないと言われますが、このような貴重なものへの愛着なくして誇りうる街になって行くのでしょうか。小さなことへの目を養わず、新幹線のような先行きの不透明なものへの執着で北海道は心の美しい都市になるのか、 住んでいて恥ずかしくなりました。

やさしいタイガー


セプテンバー・ソング

2009-08-25 08:28:03 | 日記・エッセイ・コラム

 秋の心地よい風に当たっていると、なんとなくセプテンバー・ソングを口ずさみたくなります。どこか哀愁を漂わせ、けだるそうなスローバラードは、いかにも秋の風情を感じさせます。短い夏も終わり、長い寒期の助走とも言うべき秋が始まったようです。

 どこに出かけるにしても何をするにしても秋は人の動きを回復させ、しばらくの間すべてが美しく見える季節でもあります。近くの小さな藻岩山はまだ緑で彩っていますが、間もなく黄みがかった色合いに衣替えをしていきます。その変化を見つめながら、何度も描いた藻岩山は格好のスケッチのモデルです。夕闇もまた美しい。

 「はっぱのフレディ」は季節の変化を見事に捉え、生命の輪廻を優しくといています。美しい大人の童話です。めぐりくる一年の移ろいがみごとに表現されています。それはいのちが誕生し、やがて命脈を閉じ、次へのバトンを静かに譲り渡すドラマです。

 あくせくする日々、ふと自然のなせる業を思い起こして見ると、それは人間業ではなく、人間の思いを超えた神の素晴らしい芸術作品のように思えてならないのです。

 秋はそんなことを感じさせる不思議な季節です。今日も秋の空です。

やさしいタイガー


ビジネスはトライから

2009-08-24 17:51:18 | 日記・エッセイ・コラム

 月曜日の放送のゲストは局のすぐ隣のスープカレー店の店長でした。興味深い話を伺った後、最後に「これからのお店の夢は」と尋ねたところ、びっくりするような答えが返ってきました。

 7月末に全国の日本食店舗を海外に進出するコンテストがあったそうです。それには、数カ国の関係経営者が応募した店舗の作る料理を味わい、最優秀店を自国に資金を提供して開店してもらうというビッグチャンスを提供したのです。なんとカレーの部でそのゲストの方の店がロシア、タイ、中国から最優秀店として進出を希望する店に選ばれたそうです。

 早速関係者は目下、中国への進出準備のために訪中しているそうですが、まるで玉手箱をもらったような思いで、大童になっているという話を伺いました。何しろ8千万円の資金を用意してくれるそうです。とにかくあっと驚くような話をもっと詳しくと思っているうちに時間が来てしまいました。

 別にぼくがするわけではありませんが、まるで自分のことのように強い関心を寄せ、スパイスや道産食材にこだわる誠意ある経営が認められたのだとのことでした。小さな店が海外に進出する、とてもエキサイトな話です。成功してほしいと応援したくなるような話でした。ビジネスチャンスはこうしてトライすることによって確かな道が開かれて行くのでしょうね。とても熱っぽい放送になりました。

やさしいタイガー