先日ある方の葬儀委員長を務めることになり、そぼ降る雨の中、通夜の式場にいきました。入り口に入った途端、ロビーは所狭しと供花が二重三重に置かれていて、まだ準備中かと思い、広い式場に入りましたら、そこも二重になるほどの供花が取り囲んでありました。席はおよそ300を用意されたと聞きましたが、それにしても大変なスケールの大きさです。
小さな店を創業して40年以上も支えてこられた73歳の経営者の個人葬です。後で知ったのですが、2回にも会場を設け、テレビで放映されていたそうですから、優に500名余の方々が別れを惜しまれたのでしょう。
これだけの幅の広い方々が一市井人である故人を取り巻き、今生の別れのために参列する葬儀もまた珍しいのではないかとさえ思いました。告別式ではお経を唱えながら大勢の焼香をする人々に急がせる合図をするお坊さんの仕草もまたわかる気がするほどでした。
大勢の親戚縁者、そして一般の参列者も納棺された故人への思いをこめて献花をしていましたが、多くの方が号泣したり、すすり泣きの声が式場に響き、一層悲しみを深くしました。生前の隠れた部分が多くの人々の心に伝わったからでしょうか。ここでも人の生き方の誠実さを垣間見た思いがしました。人は惜しむ別れの中から何を汲み取っていくのでしょうか。
やさしいタイガー