自分でも何かにひっかったという意識はまったくなかったのに、ある地下鉄の長い階段を降りていて、途中の踊り場3段ほど手間で前のめりに倒れ、かばんの中身を全部階段や踊り場にばら撒いてしまった。周囲に降りてきた人たちもこの老人を助けようと懸命に書類などを拾ってくださり、ひたすら「ありがとうございます」「どうもすみません」とお詫びするのが精一杯。別にどこを打ったという痛さもない。
恥ずかしいことは申すまでもないが、年のせいにしたくないが、やはり年なんだろう、と思う。改札口でカードを探し、やっと構内に入ったときに、「おや」と思った。どうやらひざを打ったようだ。人気のないところでズボンをたくし上げてみると、両膝が青くなっていた。しかし、軽くてすんだが、もしかなりの上段から転倒していたらと思うと、ぞっとする。
それにしても助けてくださった方々、本当に親切だった。「携帯も落ちてますよ」とポケットから飛び出した携帯を戻してくださった。地下鉄では初めてだが、いざとなったとき人は誰でもこのように親切で優しくいたわってくださる。恥ずかしかったが、何か美しいものを見たような気がした。手伝ってくださった方、本当にありがとうございました。今は大丈夫ですよ。
やさしいタイガー