神戸の詩人、江口節さんから届いた詩集です。
きれいな本です。敢えて腰巻を外してスキャンしました。『篝火の森へ』(江口節著・編集工房ノア刊)。
~生田薪能詩篇~とサブタイトルがあります。それにピッタリの森本良成さんの装丁。
品が良くて、幽玄。
能についてはわたし門外漢です。3度くらいは実際の舞台を見たことがあるという程度。
そして、西宮の詩人、K山さんの能の詩を思い浮かべて、怖気づいていました。
しかし、K山さんの能の詩とは趣が違っていて、読みやすいものでした。
巻頭の一篇を紹介します。
「しらじら明けの山の端に」
あの時は違った
気が付くと絵が完成していた
色と線を選んだのは 誰か
この指に添えられた手
彫刻家もうなづく
自分が彫り出したのではない
遥か昔より 木の中に俟つ像が
おのずから現れてきたと
詩人は知る
意を尽くしたスタンザは美しい
廻りくる「時」の針にもろもろと突き崩される
永い時を漕ぐ手が 詩を立たせるのだと
すべからく
創る手を与えられた者は待つ
ひたすら待つ
遠くから降りて来るもの 降りて来る手
しらじら明けの山の端に祈り
中天に耀う月に仰向き 瞼を閉じる
一日 一年 もっとだろうか
ついに 大いなるものの気が満ちる時
一心不乱に制作する人間の手に
もう一つの手が重なる
絵は絵に 剣は剣に
見たか? 狐を
―――「小鍛冶」
意外にもわたしの頭にスルスルと入って来ました。だからといって平板というのではなく、十分に深みと拡がりを備えています。「見たか?狐を」が印象的です。
このあと、わたしは感想を書くつもりで読み進めたのですが、感想というよりも、読んだ詩から連想が浮かんできて、それが興に乗って面白く、江口さんにはそのまま送ることにしました。
見当はずれのトンチンカンかもしれませんが、まっ、いいか、と。
きれいな本です。敢えて腰巻を外してスキャンしました。『篝火の森へ』(江口節著・編集工房ノア刊)。
~生田薪能詩篇~とサブタイトルがあります。それにピッタリの森本良成さんの装丁。
品が良くて、幽玄。
能についてはわたし門外漢です。3度くらいは実際の舞台を見たことがあるという程度。
そして、西宮の詩人、K山さんの能の詩を思い浮かべて、怖気づいていました。
しかし、K山さんの能の詩とは趣が違っていて、読みやすいものでした。
巻頭の一篇を紹介します。
「しらじら明けの山の端に」
あの時は違った
気が付くと絵が完成していた
色と線を選んだのは 誰か
この指に添えられた手
彫刻家もうなづく
自分が彫り出したのではない
遥か昔より 木の中に俟つ像が
おのずから現れてきたと
詩人は知る
意を尽くしたスタンザは美しい
廻りくる「時」の針にもろもろと突き崩される
永い時を漕ぐ手が 詩を立たせるのだと
すべからく
創る手を与えられた者は待つ
ひたすら待つ
遠くから降りて来るもの 降りて来る手
しらじら明けの山の端に祈り
中天に耀う月に仰向き 瞼を閉じる
一日 一年 もっとだろうか
ついに 大いなるものの気が満ちる時
一心不乱に制作する人間の手に
もう一つの手が重なる
絵は絵に 剣は剣に
見たか? 狐を
―――「小鍛冶」
意外にもわたしの頭にスルスルと入って来ました。だからといって平板というのではなく、十分に深みと拡がりを備えています。「見たか?狐を」が印象的です。
このあと、わたしは感想を書くつもりで読み進めたのですが、感想というよりも、読んだ詩から連想が浮かんできて、それが興に乗って面白く、江口さんにはそのまま送ることにしました。
見当はずれのトンチンカンかもしれませんが、まっ、いいか、と。